右翼と左翼、ニュースでよく聞く言葉ですね。保守派(≒右翼)と革新派(≒左翼、リベラル)の対立もほとんど似たようなものです。
結論から言うと両者には下の表のような違いがあります。
左翼 | 右翼 | |
---|---|---|
大前提 | 普遍的なものを好む | 地域に固有のものを好む |
理性 | 信用する | あまり信用しない |
人間の本質 | 善と見なす | 悪と見なす |
人権・民主主義 | 尊重する | どこか疑う |
世襲的な王・伝統, 霊・神話・宗教 |
疑う | 尊重する |
国旗・国歌 | 疑う | 尊重する |
政府の規模 | 大きな政府を志向 | 小さな政府を志向 |
経済への態度 | 分配重視、金持ちに反発的 金持ちのお金をみんなに分ける |
成長重視、金持ちのご機嫌取り 金持ちに経済を先導してもらう |
子どもへの教育 | 放任的 | 管理的 |
犯罪者への態度 | 減刑をもとめる | 厳罰をもとめる |
外国人への態度 | 寛容 | 不寛容 |
外交・軍事 | ハト派・理想主義 | タカ派・現実主義 |
改革への態度 | 急進的 | 漸進的 |
性の多様性 (同性愛など) |
寛容 | 不寛容 |
多い居住地 | 都市部 | 田舎 |
主要政党 | 日本共産党 | 自由民主党 |
大手の新聞社 | 朝日、毎日 | 産経、読売、日経 |
多い層 | 弁護士、芸術家、芸能人、医者、理系、 労組活動に積極的な人、環境保護に積極的な人 |
王侯貴族、企業幹部、軍人、警察、 宗教熱心な人、地主、農民、漁民 |
ここから先は上の表を掘り下げる形でわかりやすく解説します。
右翼と左翼の違いを本格的に理解して選挙に活かしましょう。
右翼と左翼の違いをわかりやすく
右翼と左翼の違いを知るうえで重要なのは、まず理性について知ることです。
そもそも理性とは人間が物事を理屈っぽく冷静に考える力を意味します。
たとえば、現代人は外出すると様々な衝動に駆られます。電車の中、店の中、お金を手にしたとき、嫌いな人を前にしたときなどです。
そんなとき、ほとんどの人は様々な衝動に駆られるとしても、実際には犯罪行為をしでかさないと思います。なぜなら理性がいけないと判断しているからです。
犯罪を犯すと刑罰を科せられるとか社会的に不名誉な烙印を押されますから、ほとんどの人が犯罪を犯さないのは当たり前です。人間の理性はそれを認識しているのです。
理性は世界中で通じる人間として基本的な力だといえます。
左翼は理性を信用する
左翼はこの理性というものを強く信用しています。
そうなると、たとえば経済運営は自由競争に任せるよりも頭のよい人(=基本的には政府)が計画的に管理する方がよいと考えます。
自由競争だと格差が発生しますし、労働者はこき使われますが、政府が経済をすべて理屈っぽく管理すれば格差はなくなり、さらに労働環境も向上すると考えるからです。
もともと左翼は平等を重視するため、経済面でも分配を重視するのです。
そのため左翼は、すべての国民が幸せになるには政府と社会保障の規模を拡大することが必要だと考えています。これは「大きな政府」と呼ばれます。
また左翼は人権を重んじます。人権も理性と同じように普遍的に存在する産物、つまり世界中の人間の誰もが平等にもっている大切なものだと左翼は考えているからです。
それゆえ、左翼は王族や貴族のような生まれつきの血筋だけで崇められる存在は不平等だと見なして反発します。
国旗や国歌についても「近代国家が国民を戦争に動員するために人工的につくった産物だから尊重するに値しない」と考えます。
話し合えばわかりあえる
さらに左翼は外国人との間でも理性という人類共通の能力を使えば、高価な武力を使った脅しがなくても理性的な話し合いだけでわかり合えると考えます。
そのため左翼は、政府は国防にお金をまわすよりも人々の社会保障費や生活費にお金をまわす方がよいと考えます。
理性を駆使すれば素晴らしい社会がつくれると考えることから、左翼の姿勢は急進的です。
急進的とは目標を急いで実現させようとすること。
例を挙げると「日本社会には性的な差別があるけど、これは理不尽だからさっさと撤廃しようぜ」という感じ。
このように普遍的な考え方である理性、人権、平等を重んじるのが左翼です。
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左翼が多い層
一般に芸術家(小説家、音楽家、画家、芸能人)の類は左翼が多いです。左翼も芸術も基本的には理想主義・普遍主義という点で共通しているからです。
たとえば売れる流行歌の歌詞は、愛、自由、平和など普遍的に通じる要素を理想的に仕上げたものが多いでしょう。これは邦楽でも洋楽でも変わりありません。
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左翼は、貧しくて社会保障の改善を願う労働者、弁護士・医師・教授といったインテリ金持ち(=理性を信じて勉強に明け暮れた人)などに多いです。
居住地でいうと、各国の選挙では左翼は都市部で健闘する傾向があります。実際、左翼の拠点は基本的には都会に多いのであって、田舎にあるというのはあまり聞いたことがありません。
一般に都市部は存在する人間(住民・勤労者・観光客)が田舎よりも多様です。
そのため彼らの多様性や人権を重んじる風紀が現れたり、都市部に多いインテリが有権者を導いたりするからです。
右翼は理性を疑う
こうした左翼の考え方に右翼は異論を唱えます。
というのも、もう一度冷静になって左翼の考え方を見直すと現実の人間はそんなに理性的な存在だとは思えないからです。
たとえば、もし人間が本当に理性的な存在であるなら、犯罪を防ぐための刑罰や警察は存在しなくてもよいはずです。
しかし、現実には刑罰や警察がないと人間は法を守れないでしょう。
右翼が外国人参政権を拒んで軍拡や安全保障にこだわるのも、人間、とくに外国政府との間ではわかりあえないと考えているからです。
左翼は人間の本質を善と見なす一方で、右翼は人間の本質を悪と見なす傾向があるのです。
右翼の教育方針が道徳的だったりやたら管理的だったりするのも「子どもは人として未熟なので大人が管理してあげないと危うい」と右翼は考えるからです。
逆に左翼は子どもにも一応の人権や理性を見出して、放任的な教育方針を掲げる場合が多いです。
計画経済など不可能
また、政府が経済を計画的に管理できるかといえば現実にはほとんど不可能です。
実際、ソ連や北朝鮮といった国は経済を計画的に管理して誰もが平等になる理想社会をつくりあげようとしましたが、どちらも派手に失敗しました。
そんな運営をすると経済はかえって非効率になったり、政府の幹部ばかりが肥えて権力が腐敗し国ごと貧しくなるからです。
大体、人々の賃金が平等になることは、有能でやる気がある人にとってはむしろ不平等になることと同じです。そのため有能な人は国を捨てて出ていってしまいます。
このように右翼は理性や人権をどこか疑っていますから、政府や社会保障の肥大化に懐疑的な傾向があります。
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右翼は国粋主義を好む
右翼は理性や普遍性を疑っていますから、理屈では説明しきれない存在である地域に固有の王・神・霊・宗教・神話や伝統の価値を尊重しがちです。
それはたとえば「日本の皇室制度って昔から存続してきてスゴイ!」「伝統的な宗教や寺社が歴史の風雪に耐えて残存しているのは尊敬に値する」という形。
左翼は天皇制について「そんなのは神話も入り混じったフィクション」と批判します。左翼は宗教や神話のようなフィクションを嫌うのです。
まあ左翼が好む共産主義もフィクションみたいなものですが。
右翼が神社の参拝にこだわるのも、根底には理性や普遍性への不信感と、神や伝統を尊重しようとする精神があります。
右翼は、左翼が大切にする普遍性が広まりすぎると自国の固有性がなくなると考えるため、普遍性に反発します。
とくに右翼は人権や平等といった普遍的な産物を疑っており社会を急進的に変えようとしません。
誰もが平等なままで社会はうまくいくのか、みんなから崇められる地域にとって特別な存在がいる方が社会はまとまる、昔から残っている伝統には残すだけの価値があると考えます。
右翼は国粋主義の傾向があるのです。
国粋主義とは、地域に固有の文化や伝統を誇ること。日本でいうと天皇や神道、古事記、寿司などがあてはまります。
まあ寿司の伝統が昔からあったのは本州・四国・九州の海沿いの地域だけでしょうし、昔の日本と今の日本では国土の領域は異なりますが。
右翼が多い層
一般に中レベルから上位レベルの収入のサラリーマンや起業家、第一次産業の従事者、宗教関係の人などに右翼が多いです。
競争に勝ち抜いたサラリーマンや起業家は自由競争を肯定するとともに、絶えず現実と向き合わなければならないと考えているのでしょう。
居住地でいうと各国の選挙では右翼は田舎で健闘する傾向があります。
というのも一般に田舎は存在する人間(住民・勤労者・観光客)が都会ほど多様ではありません。
さらに都市部の労働は多様な人間を相手にする以上、労働者にも多様性が必要ですが、田舎の労働(おもに第一次産業)には多様性が必須ではありません。
そのため、外国人やよそ者を避けるような国粋主義を身につけやすいです。
新聞社について日経は株価上昇につながる記事を好むように成長重視の姿勢です。
しかし、日経は経済以外の記事についてはそんなに右翼的ではないと思います。
右翼・左翼の語源
右翼・左翼の語源は18世紀後半のフランス、すなわちフランス革命期の議会の座席に由来します。
このころ議長席から見て左側は急進派、右側は保守派が座っていたからです。
その後、フランス革命は諸国に多大な影響をあたえました。
極端だと見分けがつかなくなる
ただし、左翼も右翼も極端な水準に達すると見分けがつかなくなったりします。
一般的な理解では左翼が理想主義で右翼が現実主義ですが、極右というのは強力な理想主義者でもあるからです。
実際、イスラム圏の極右は7世紀ムハンマドの時代、日本の極右は大日本帝国時代という具合で、国土・軍事力・文化力が強かった時代を過剰に崇拝する傾向があります。
また左翼は平和主義といわれますが、極左は暴力を使うこともためらいません。
右翼は一枚岩ではない
さらに現代では同じ右翼の中でも事情が複雑化しています。
たとえば以前、TPPという協定が問題視されたことがありました。
自由競争を重視する右翼から見ればTPPには賛成するのが筋です。
しかし、経済を自由化させると外国の安い農産物がますます入ってくるために日本の農業は弱くなって伝統的な田園風景がなくなったり、食料自給率が下がるという事態も懸念されます。
そのため右翼同士が対立するなんてこともあります。
左翼の対立
こういう対立は同じ左翼の中でもあります。
たとえば、共産党と民主党は同じ左派でありながらも、共産党は「共産主義を実現させたい」と強く考えています。
一方、民主党(マイルドな左翼)は「共産主義は行きすぎだけど労働者にもっとお金が行きわたるようにしたい」と考えています。
要するに共産党の方が左翼の度合いが強いなど政党のカラーは異なるため、共産党と民主党は合併できないのです。
たとえば、左翼が好む組織として労働組合があります。
この労働組合は世界レベルの労働組合もありますが、日本の労組の主張とアメリカの労組の主張は対立する面もあるでしょう。
労組の国際的な協調は難しいのです。
左翼から右翼への転向
さて、さまざまな国民に共通する現象として若い頃は左翼だったものの、年を取ると右翼に転向するというパターンをよく見かけます。
人間は若い時代は理性を過信したり、親や教員から理性を教え込まれたりしますが、社会で揉まれていると綺麗ごとや理性が通用しにくいことを実感するからではないでしょうか。
若い頃は学生運動に燃えていた人でも、やがて現実的な考え方に傾いたり、それまで自分が築いたものを保守したりします。
おそらく、それは右翼から左翼に転向するパターンよりも多いはずです。
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