現在、世界には200近くの国があります。
その中で人口10万人あたりの殺人件数をランキング化すると、日本の順位は最下位クラスが定位置。
つまり、日本は殺人事件がかなり少ない国であり基本的には平和なのです。
この手のランキングで治安がいいのは小国ばかりですから、人口が1億人以上もいる日本が平和なのはかなりスゴイといえます。
そこで今回は日本がなぜ平和なのか(治安がいいのか)を示してまいります。
日本で最も治安が悪いエリアは東京都新宿区にある歌舞伎町一帯だと思います。
しかし、歌舞伎町を他国で治安が悪いエリアと比べると「大したことない」というのが通説でしょう。
ちなみに世界的に治安がとくに悪いのは、中米諸国、アフリカ中南部。
参考:日本で治安のよさがわかるとき
- 平日朝と15時前後、子どもたちは子どもたちだけで登下校する(見回りや旗振りの大人がいる場合あり)
- 夜、海外の地下鉄は危ないが日本はそんなに危なくない
- 電車の中で寝ても安心(スリが少ない)
- 夜、女性一人でコンビニに買い物に行けないこともない
- 海外の集合住宅は鉄格子がついている場合が多いが、日本の住宅には鉄格子がほとんどない
- 農産物の無人販売が成立している
- スタバやマクドナルドなどで座席にバッグやスマホを置いたまま無人で席取りしている(さすがに警戒心がなさすぎかな…?)
- 財布を紛失しても中身を抜かれずに届け出される率が世界的に高い方
- 自動販売機がそこらじゅうにある(海外だと壊されるから屋外にはあまりない)
- 刑法犯の認知件数の少なさ
- 「日本人は平和ボケ」という言葉を聞いたとき
- 日本の学校で荷物検査といったらスマホや漫画をもってきていないかのチェックだけど、欧米の学校ではお薬や武器をもっていないかのチェックになること
日本が平和である理由
日本の治安がいい理由は以下のとおり。
- 多神教は一神教よりも争いが少ない、政教分離
- 自然国家であり民族に多様性がない
- 大陸からほどよく離れた島国
- 銃や麻薬の規制がかなり強い
- 太平洋戦争の反動に伴う平和意識の高まり
- 米軍および日米安全保障条約の存在
- それなりの経済水準
- インフラがキレイに整っている
- 交番が各地にある
- 監視社会
- 同調圧力が強いおとなしい国民性
- 社会的スティグマと連鎖性が強い
- 娯楽が充実している
ここから先は以上の理由を掘り下げて解説します。
多神教の世界観は割と平和
日本人の多くは多神教の感覚をもっています。
洋式結婚式やクリスマスはキリスト教、葬式や除夜の鐘は仏教、七五三は神道、六曜は中国が由来、初詣は神社でも寺でもいい、というように日本人の多くはさまざまな宗教に触れています。
神仏習合(神道と仏教が融合した日本独自の宗教)もよく指摘されています。


「八百万の神」という言葉もあるように日本人の多くはさまざまな神様を共有しているといえます。祖先信仰も強いです。
「お月さま」「お天道様」「お星さま」なんていう自然への尊敬を込めた言い回しもあるように自然に対する感覚も独特です。
それとは対照的なのが一神教。一神教とは唯一の神を強く信じること。キリスト教やイスラム教は一神教の典型です。
一神教は争いが発生しやすい
しかしというか当然というべきか、一神教のもとでは人々の間で争いが発生しやすいという特徴があります。
「オレの信じる神・宗派こそ絶対的に正しいから、あんたらが信じている神・宗派はおかしいよ」みたいな感じで他の宗教・宗派にケチをつけやすいからです。
実際、中世の西欧ではキリスト教をめぐって戦争が頻発しましたし、現代の中東やアフリカでは未だに宗教をめぐって争い続けています。
人は唯一神という絶対的な存在を共有して信じることで同じ信者とつながることもできますが、逆に争いが多くなってしまう面もあるのです。
人類の理想は多文化共生でしょうが、一国の中にさまざまな一神教があると文化や宗教の衝突が増えやすいといえます。
宗教にこだわらない日本人の多くとしては「そんなに宗教にこだわらず多神教感覚で暮らした方が楽しいよ」と外国人にいいたくなってしまうのでは?
ちなみに日本人がさまざまな国の料理を食べるのも宗教的なこだわりが低いことが一つの原因です。
多神教感覚でさまざまな料理を食べた方が人生は楽しいと思いますが…。
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参考日本人の食べ物に対するこだわりの理由
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自然国家であり民族に多様性がない
日本は宗教は多様であるものの、民族に多様性がないという特徴もあります。移民も少ないです。
それはたがいの考え方や習慣がよく似ているということを意味するため、異質な人間が発生しづらいのです。
この点、アメリカは実にさまざまな人種・民族がいるなど多様な国家として知られています。
アメリカは、ネイティブアメリカンばかりがいた土地に、西欧人が乗り込み、黒人奴隷を酷使してつくった移民だらけの人工国家です。
それだけ多様な国だと当然、人間がぶつかってしまうことも多いわけです。

銃や麻薬の規制がかなり強い
それから日本と諸外国でかなり違うのが銃や麻薬の規制の強さです。
銃は自分の命を守るために役立つこともある一方で、アメリカの銃乱射事件のような悲劇も生んでしまう強力な武器です。
現代では強力な武器を保持するのは政府(とくに軍隊と警察)であって、民間人にはそれよりも弱い武器までしかもたせないのが大原則です。
もし民間人に政府よりも強い武器をもたせると、その民間人が政府を転覆させてしまうからです。
日本は豊臣秀吉による刀狩りと徳川綱吉の諸国鉄砲改めによって銃器の所有は大きく減っていったとされます。第二次大戦の敗戦後は旧日本軍の銃が出回りましたが、抑えることに成功しました。
現代の日本では銃規制が厳しすぎるため猟師の新規参入が困難になっているくらいです。
アメリカもその大原則にあてはまっている国家とはいえ銃(ハンドガン~ライフル)があまりにも多く普及しすぎたために、それが治安の悪さにつながっています。
アメリカの銃産業は強大な利権と化してしまったため、いまさら銃規制を強めるのは相当難しいでしょう。

麻薬は、諸外国では一部の種類について解禁されているものの、日本は基本的に厳しさを貫いています。
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参考軍隊や警察の存在意義を知ってください
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家電や食料品、ITアプリなどについても日本人は高い安全性をもとめます。それに合わせて各業界の規制も厳しめ。
それは新しい企業や産業の芽を摘むこともあるでしょう。
大陸からほどよく離れた島国
日本は民族の多様性が欠けていることの主因に島国という地理的条件があります。
日本は隣国との間に海があるため外国人が入ってきにくいのです。日本に移民を大量に入れる政策は反対論が根強いですし。
この点、イギリスは島国ではあるもののヨーロッパの大陸諸国と近いため移民も多いです。移民が多い地域は治安が悪い傾向があります。
かつてイギリスをはじめとした西欧列強は世界中に植民地をもっており悪さをたくさんしでかしました。その影響は現代まで尾を引いています。
西欧ではそういった過去の国際的な罪をあがなうために現代でも「移民を受け入れるべき」みたいな声は強いです。


- 日本はハワイ諸島のように大陸から離れすぎていたら文明が発達しなかった可能性が高い(マダガスカルやニュージーランドみたいな欧米や中国から離れたエリアも早期の文明発展には厳しい)
- 日本列島はもっと中国に近かったら中国の属国になっていたかも
- 日本列島はもっと欧米に近かったら欧米の植民地にされていたかも
- 日本列島が中東近海にあったら中東の宗教的な戦乱に巻き込まれていた

外務省の安全マップ2023(やはり危ないのはアフリカ、中東、中米、ロシア)

太平洋戦争の反動に伴う平和意識の高まり
さて、1931年から1945年にかけて日本は「15年戦争」の渦中にいました。
この戦争の原因や過程はかなり複雑なため置いておくとして、結果として日本は甚大な数の犠牲者を出してしまいました。
広島と長崎の市街地には原爆を落とされたように、犠牲者の中には戦闘員ではない一般市民も多数いました。
日本はこの甚大な犠牲と敗戦にとても大きなショックを受けました。
江戸時代の日本も平和意識はそこそこ高かったと思いますが、この15年戦争は潔癖ともいえるレベルで日本人の平和意識を高めました。
ただし、高まったのは「悲惨な戦争はしない」という戦争レベルの平和意識であって、身近な防犯対策は手薄だったりします。
日本は平和で防犯意識が低くても生きていけるため、日本人は平和ボケになりやすいのです。
日本人が海外に行くと狙われやすいのは、まさにそこを突かれるからでしょう。

米軍および日米安全保障条約の存在
日本は第二次世界大戦の敗戦国となりました。
しかし、その後、戦勝国アメリカと日本は同盟(協定)をむすび、それを根拠に米軍は日本に駐留しています。
そのおかげで日本は諸外国から狙われにくい条件を保ってきたといえます。日本に攻撃を仕掛けるのは軍事大国アメリカに攻撃を仕掛けるのとほぼ同義なのです。
一部の米兵が日本の一般市民に危害を加えた事件もありましたが、それでも全体的には日本の平和にとってプラスになってきたでしょう。


それなりの経済水準
それから経済水準も治安と関連があります。
極端な話、もし日本国民の多くがアフリカの最貧国のように毎日の食事をとるだけでも経済的に苦しかったらどうなるでしょうか。
「犯罪におよんでまでも食料やお金を確保するしかない」と考える人が増えるでしょう。
貧しい国の治安が悪いのはこのためです。
日本は以前よりも豊かさが下がっていますが、それでもアフリカの最貧国に比べたら遥かにマシです。
インフラがキレイに整っている
一般に犯罪は昼よりも夕方・夜の方が起きやすいです。暗闇に紛れて犯行におよぶことができるからです。
日本は都市部なら街灯が整っていますし、停電は天災のときくらいしか発声しません。
この点、途上国は街灯が少ないうえに停電も頻繁に起きるため、夜は日本よりも暗いです。
そのため途上国に飛行機で行く際は「夜に到着する便を避けろ」といわれるくらいです。
なぜなら夜に日本人が空港に到着すると空港からあとをつけられて、人通りの少ないところに出た途端に襲われるから。

とくに性犯罪は夜に起きやすいです。ただし、空き巣が起きやすいのは不在が多い時間帯である昼となっています。
コンビニ強盗は従業員や客が少ない深夜~早朝が多い模様。
犯罪の種類によって起きやすい時間帯は変わるのです。
また海外のスラム街の路上はほぼ例外なく汚いですが、日本の公道でそこまで汚いところはほとんどありません。地下鉄の駅も同じ傾向があります。
路上がキレイだと犯罪もしにくくなるのかもしれません。
いわゆる割れ窓理論のように。

交番が各地にある
日本は警察署の他にも交番がいたるところにある国です。このような交番は諸外国でもマネされています。
とくに繁華街には交番がある率は高いです。
交番がいたるところにあると、住民や通りかかる人としても安心でしょう。

娯楽が充実している
現代の日本では「みんな政治にもっと参加しようぜ」みたいな運動が一部で展開されています。
しかし、積極的に参加する日本人は少ないでしょう。
この原因の一つは、YouTube、漫画・アニメ、ゲーム、ギャンブル、スポーツ、アイドル、買い物、風○店などさまざまな娯楽が日本にはあふれていて、休みの時間は小難しい政治より娯楽に興じるほうが楽しいからです。
娯楽に関して「表現の自由」の範囲も世界的にゆるいほうです。
娯楽に興じる人が多ければ、それだけ平和になりやすいでしょう。
逆に紛争が多い海外地域に行くと、娯楽どころではなく、ひたすら憎しみが連鎖しています。
とくに中東は娯楽の類を宗教的に抑え込んでいますから、金持ちでさえも娯楽は限られています。
日本は平和な監視社会
以前、日本の子育て世代の男性が「平日昼に娘と2人で公園にいただけで警察に通報された」とTwitterで嘆いていたことがありました。
シフト制勤務や労働の合間の休憩のために平日昼に男性が公園にいてもおかしくありませんが、どうも日本社会には少しでも怪しい人を見つけては監視・通報するムードが漂っています。これは治安のよさにつながっているでしょう。
現代のSNSや掲示板、マスコミなどでもたがいに監視する風紀は強いです。
近所の人は近隣の人の職業や出身学校、素行なんかも知っていたりします。
それに欧米では有名人の不倫はあまり叩かれませんが、日本では不倫みたいな民事でさえも結構叩かれます。


同調圧力が強いおとなしい国民性
日本人ならわかるように日本は「謙虚」が美徳となっている国です。
それと並んで義務教育の課程では「他人に迷惑をかけない」「他人と同じ」という規範が教え込まれます。
たとえば日本の通勤電車で迷惑行為をやらかすと後続電車や沿線民にも悪影響が連鎖するため、迷惑をかけないことは重要です。電車での移動を繰り返すと「他人に迷惑をかけない」が身につくともいえます。
前に日本は島国であることが平和の一要因だと述べましたが、電車の混雑とマナーを考えると「人口密度が高い」も一要因になりそうです。
政治的なデモ活動が小規模なのも「他人への迷惑」や「世間体(恥ずかしい)」が頭に引っかかるため参加したがらないのでしょう。
デモ活動に参加していると写真を撮られたり、就職・転職にも悪影響がありうるとかいわれていますからね。

制服、年度ごとの入卒式典、大学は18歳~20代前半までの人ばかり、新卒採用という習慣は「他人と同じ」の規範が表れています。
そのため日本人はおとなしく同調圧力が強い国民性だといわれます。それは、おとなしくない国民性の国よりも平和です。
ちなみに日本は性犯罪の件数が人口の割にはそんなに多くないものの、下着泥棒が多いという特徴があります。
というか海外では下着を外にあまり干さないこともあって下着泥棒はかなり珍しいです。下着はキレイなものじゃありませんからね。
強引な手口としての性犯罪が多くない一方で、下着泥棒みたいな陰湿な犯罪が多いというのは日本人の悪い意味でのおとなしさの表れか。
YouTubeでの日本の治安に対する外国人の感想として「The Japanese are polite perverts(日本人は礼儀正しい変態)」というものもありました。これについて日本人のあなたはどんな感想・反論をもちますか。
社会的スティグマと連鎖性が強い
スティグマとは悪いレッテルみたいなもの。
すなわち社会的スティグマとは、人々が犯罪やマナー違反者を強く差別すること。
日本の刑法犯の認知件数が少ないのは日本国民が連鎖的なスティグマを避けたがるからでしょう。
たとえば、ある人物が犯罪をしでかすと日本では本人だけでなくその親類や友人の評判まで悪くなりがちです。これが連鎖的が意味するところ。
実際、テロを起こしたことで有名な某宗教団体の幹部の娘は何も罪を犯していないのに大学の入学を断られて訴訟になったくらいですから。
日本でよくいわれる「親の顔が見てみたい」なんていう言葉は子どもの行動がひどいとすれば、そんな子どもを育てた親の顔が見たい(ひどい)ってことですからね。
親の七光りはその逆で「親がスゴイ人だと子どもまでもスゴイ」みたいに考える傾向です。世襲議員が多いのもこの七光りを利用しているから。
日本は親と子の関係が濃密ですから「この親にしてこの子あり」みたいな感じで親と子の性質を結びつけやすいのです。
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参考世襲議員はなぜ多い?【日本の問題点を知っておこう】
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まとめ:壮大なジレンマ
日本は世界的に見ると平和な部類にある国です。
しかし、これまで紹介してきた日本が平和である理由は「閉鎖的」「息苦しい」「生きづらい」という感じでも受け取れます。そのためか自殺率も世界的に高い方です。
日本は平和で経済水準もそこそこなのに自殺が多いという点はかなり大きなジレンマだと思いませんか。
外国人がインドを訪れるとカルチャーショックを受けて人生観が変わると聞くように、日本人は海外旅行や留学などを通じて見識を広げる必要があるのかもしれません。
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参考日本人はなぜ陰湿なのか
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