外国人が日本の好きなところで挙げるのは、3位:アニメや漫画が魅力的、2位:治安がいい、1位:料理が多様で価格の割にうまい、です。
日本人が街に出向いて食事するときも「和食、中華、朝鮮、東南アジア、イタリアン、フレンチ、アメリカ系ファストフードのどれにしようかな」と考えるはずです。
世界的には毎日同じようなメニューばかりを食べている民族が多い中で、日本人の食はかなり多様です(異常?)。
たとえばマクドナルドのメニューを日米で見比べてみると、意外にも多民族国家のアメリカよりも日本の方が多様なんですよ。
要するに日本人は食べ物に執念深い(うるさい、こだわる、執着する)わけですが、なぜ日本人は食べ物に執着するのでしょうか。
簡単にいうと以下のような理由が原因です。
日本人が食べ物にこだわる理由(結果でもある)
- 宗教的なこだわりが低いから何でも食べて舌が肥えた
- 流通網が高い水準で整っている
- 湿気が多くてカビや虫が繁殖しやすいため食材および料理も工夫してきた
- いろいろな料理店がそろっている
- 平和で経済力があったから食べ物にこだわる余裕があった
- 日本人は体格が小さいから量より質にこだわる
- 食器の質が高かったから料理の質も高くした
- 色彩感覚が優れている
- おもてなしの心と他人の評価を気にする精神
- 日本料理は仕込みが多い
- 北は雪国、南は南国という島国であるため食材が豊富、飲み水もキレイで豊富
- 「もったいない」の精神
- 細かく分けたがる
- 臭いに敏感
- 漫画やマスコミに影響されている
わかりやすく解説していきますのでご覧ください。
日本人が食べ物にうるさい理由
まず日本人の多くは特定の一神教を信じず、なんとなく多神教の人が多いです。
日本人は年末になるとクリスマスを楽しんだと思ったら大晦日に除夜の鐘を聞いて、元旦に神社に初詣に行くのはその典型。
ここではキリスト教と仏教と神道のイベントを立て続けに味わっているのです。
結婚式なんかも日本人はキリスト教徒でもないのにチャペルで行い、アルバイトの白人の前で永遠の愛を誓っているでしょう。
そのためか日本人の多くは食べ物に宗教的なこだわりを持ち込まず、うまければ何でも食べるという感じ。日本人は食べ物に関してはとても実利的なのです。
日本人は混ぜ合わせながら改良してきた
ロッテの雪見だいふくのように洋(バニラアイス)と和(おもち)を混ぜた和洋折衷お菓子も見られるなど食に関しては貪欲で発想が豊か。
日本のコロッケも元をたどれば明治時代にフランス料理のクロケットを改良したことから始まったといわれています。
明治時代は政治的にも「欧米を見習え、欧米を追い越せ」みたいなことが盛んにいわれていたように、もともと欧米に対する憧れが強いのかもしれません。
以上はイスラム教徒が「豚や酒は食べては(飲んでは)いけない」「欧米文化は抵抗がある」などと宗教的な観点から特定の食べ物を嫌っていることとは対照的。
欧米人は、日本人がクジラ・イルカや馬肉を食べることを批判しているのも論理的ではなく感覚的・宗教的です。
かつて日本人の生食は世界中から不気味がられていましたし。
一神教の人は食べ物について宗教的な観点から好き嫌いを持ち込みやすいと思います。
宗教にこだわらないからこそ食にこだわる
日本人は宗教にこだわらないからこそ世界中のさまざまな食べ物を食べます。
そのため飲食店の経営者としても多様な店舗展開をします。大都市に行けば、それこそ世界各地の料理店がそろっています。
権威ある飲食店評価として知られている『ミシュラン・ガイド』の中でも星の数が多い飲食店がある世界の都市トップ5のうち3つは東京、大阪、京都です(残りはニューヨークとパリ)。
一説には日本人の接待好き・接待文化が高級飲食店の質と数を引き上げたといわれています。
田舎は田舎で郷土料理や地酒が豊富です。まるで「オラの村の料理と酒こそ日本一」だと主張しているよう。
食材に関しても、たとえば大豆においては、もやし、納豆、枝豆、きな粉、醤油、味噌、豆乳、豆腐、油揚げ、湯葉など実に多様です。
平和で経済力があったから食べ物にこだわる余裕があった
食べ物にこだわる行為というのは、国が平和でそれなりの経済力がない成り立ちません。
たとえば戦争が起きている最中は食材の流通量は少なくなりますから料理にこだわる余裕もなくなります。
実際、太平洋戦争時は「欲しがりません勝つまでは」「贅沢は敵」というスローガンがよく言われていました。
現代の日本人が他国の食材を味わえるのも輸入・購買できるだけの経済力があるからです。
海外だと路上や公園での飲酒は犯罪として規定されているか、かなりヤバい人に見られる場合が結構あります。海外での飲酒は家や飲食店以外では気をつけましょう。
日本でも路上や公園での飲酒はいい印象には見えないでしょうが、暴れていなければ警察に捕まらないでしょう。日本の飲食事情は海外に比べるとそれなりに自由な国なんです。
日本人は少食だから美味にこだわる?
平均的にいうと、日本人は欧米人に比べると体格が小さいですし食べる量も少なめです。
それゆえ日本人は「少食でも満足するには食べ物がおいしくなければならない」と考えている節があります。
高級な寿司や懐石料理なんかはもはや芸術品としての地位を占めているくらい見た目も素晴らしいです。
食べ物への満足としては質より量を重視する人もいますが、日本人は質を重視する人のほうが多いでしょう。
日本人は彩りにこだわる
日本の美しい陶磁器は、赤、白、黄色、オレンジ、緑を使っているように色鮮やか。
日本の自然環境も、山地、川、湖、海など色彩に恵まれています。『枕草子』に代表されるように夕日や夜・月の色に美しさを見出す伝統もあります。
で、日本の代表的な料理である寿司も基本的には色鮮やか。
- まぐろ、いくら赤〜ピンク
- たまご黄色
- のり、よくある寿司桶黒
- サーモンオレンジ
- イカ、シャリ白(赤酢を使った薄い赤色のシャリもあり)
- アナゴ茶色
- わさび、飾りの笹、カッパ巻きのきゅうり緑
日本人は豊かな色彩感覚をもっているため、それは多様な芸術や料理にも反映されているのかもしれません。
これは色鮮やかなアニメにも通じるところがあります。
さらに日本食だけより、中華、フランス、ドイツ、ロシア、トルコ、メキシコなど料理も国際色を豊かにした方が彩りはより豊かになります。
食器の水準に合わせた説
日本、フランス、中国といった料理に定評のある国家は、食器やツボのデザイン・質も優れていることで有名です。
たとえば日本の有田焼(とくに古伊万里)や輪島塗は食器というより芸術品の領域に達しているでしょう。
これに関して日本人は「食器が美しいなら、そこに盛り付ける料理も美しくておいしいほうが合う」と考えて料理もこだわったのかもしれません。
太ることへの怖さが違う
たとえば、ある洋菓子の宣伝について「国産の濃厚バターと特製の砂糖を使用」と書いてあったら、あなたはどう思いますか。
日本人の多くは「何か美味しそう」と思うでしょうが、欧米人だと「太りそう、不健康」と思う人が多いです。
まあバターが濃厚か否かに関係なく、そもそも洋菓子自体が太りやすい食べ物ですけどね。
しかし日本人の場合、よほど多く食べない限りは見た目はブクブクに太りませんが(外見は太らなくても体内ではまずいかも)、欧米人は体質的に日本人より太りやすいです。
そのため欧米では菓子について「国産の濃厚バターと特製の砂糖を使用」みたいな表現は使いたがりません。
日本料理は仕込みが多い
日本の本格的な料理店で働くとわかるのが仕込みの多さ。
1番出汁(ダシ)・2番出汁・3番出汁、焼き肉のもみだれ、焼き鳥やウナギの串打ち、さまざまな漬物、こんにゃくや大根の下茹で(あく抜き)などなど。
肉を手っ取り早く食べるなら、仕込まず肉を適当に切って焼いて塩コショウを振りかけるだけでいいのですが、日本の焼き肉や焼き鳥は仕込みにも手間暇をかけています。
これも日本人は味にこだわるから料理法もこだわるのでしょう。
日本は道具も食材も多様
道具および技法についても、たとえば包丁の種類や切り方はたくさんあります。切り方が多様だと食感も多様になります。
一説には日本人は小柄であるため小さな力でも切れるように古代から細身の刃物(=日本刀や包丁)が発達したといわれています。
日本人が手のひらの上で包丁で豆腐を切って手が切れていないのは、日本人にとっては簡単でも外国人から見ると驚きの技術なんですよ。
食感についても、山芋のネバネバ感、軟骨のコリコリ感、お餅のモチモチ感、ハイチュウの溶ける食感などは外国人から見るとかなり独特だといいます。
そうやっていろんな食べ物を食べると必然的に舌が肥えますが、日本人の多くはそれらの食感を独特とは思っていないでしょう。
おもてなしの心と他人の評価を気にする精神
日本人の料理技法は日本人の精神と大きく関連があります。
たとえばアメリカ人が肉や野菜を煮る場合、適当に切ってそのまま鍋に入れるというパターンが多いでしょう。
しかし、日本人は隠し包丁といって食材に切り込みを入れて味を染み込みやすくしたり火の通りをよくします。他にも面倒な技法はたくさんありますし、プロの料理人でなくても好む人は多いです。
なぜ日本人はこんな面倒なことをするのかといえば「自慢の地元の幸で人々をもてなしたい」「他人に少しでも美味しく食べてもらいたい」「まずいとその人に悪い」という心をもっているからだと思います。
Google検索のサジェストには「海外の反応」が現れやすいように、日本人は他人の評価を強く気にしているのです。
たとえば1920年ごろ、まだ貧しかった日本人は、シベリアでひどい目にあっていたポーランドの孤児を助け食べ物を手厚く振舞ったことは有名です。今もポーランドが親日なのはこのためでもあります。
料理サンプルが発達したのは「ガッカリ」を避けるため?
ちなみに2021年の東京五輪では「観客は入れないとしても、せめて食事だけは手厚くもてなしたい」という思いがあったようで選手村では約700種類もの料理メニューがありました。
これは選手からもかなり好評だった模様。
これだけ幅広いメニューを選手村で美味しく提供できる国は他にないでしょう。
日本列島は水と食材に恵まれている
それから日本列島は北海道や東北・北陸は雪国である一方、沖縄あたりは南国と、一国の領土だけで北国から南国まで揃っています。
そのうえ日本は島国ですから漁業資源にも恵まれています。淡水も豊富ですし、水道水が飲めるように水質も高いです。
和牛や黒豚の肉質は世界中から評価されているように畜産業のレベルも高いです。
またフグやコンニャク芋は強い毒素がある食べ物ですが、日本人は安全に食べられるように工夫をこらしてきました。
湿気の多さや夏の暑さは食べ物の鮮度にとって大敵であるため工夫が必要です。
このように自然環境と食材と調理法が豊富だと食べる側としてもこれまた舌が肥えるところです。
日本は梅干し、醤油、味噌など発酵食品大国でもあります。
古来から日本は温暖湿潤な気候であるため、冷蔵庫がなくても日持ちする食品をつくる必要がありました。
そこで温暖湿潤によって発生しやすいカビや菌を利用して発酵食品をつくり出す知恵が進歩したのです。
※現代の梅干しは味付けや塩分濃度によっては冷蔵庫での保存が必要です。
日本人は魚や卵をよく生で食べます。刺し身、卵かけご飯、牛丼やすき焼きにかける生卵などはその典型。
魚や卵を生で安心して食べるには衛生や流通網を高いレベルで整える必要があります。
「もったいない」の精神
さらに日本人は料理に対して「もったいない」の精神をもっています。
たとえば大根の皮をもとにつくった切り干し大根、芋がら(芋の茎を干したもの)、おから、酒粕といった食材は日本人だからこそ食材と認識しているのであって、外国人からするとどれも食材に見えないでしょう。
戦時中・戦後では日本人が欧米の捕虜にゴボウを食べ物として差し出したところ、欧米人は木の根を与えられるなど虐待されたと誤解してその日本人は裁判で懲役刑をくらったという事件まであります。
現代の東アジア以外の沿岸部ではワカメが「迷惑」で侵略的外来種にまで指定されていますが、ワカメは栄養満点の食材なのだから「食べろ」と思っている日本人は私だけではないでしょう。
日本人は外国人から見たら捨てるような食材を使って料理に仕上げているのです。
日本人は豚について内臓や足もほとんど食べますし、骨をダシ取りにも使います。そのあり様は「鳴き声以外は全部食べる」といわれるくらいです。
日本人は「もったいない」の精神をもっているからこそ、さまざまな食材を使った多様な料理ができあがったといえます。
「もったいない」の延長:日本人は食材を細かく分けたがる
以前、私は東ヨーロッパの旅行動画を見ていたとき、現地の人はマグロを豪快に焼いて食べていることに違和感をもちました。
日本人なら「生で食べられる鮮度なら生で食べるほうが美味しい、焼いて食べるのはもったいない」と思うでしょうが、それよりも気になったのは市場での切り分けられ方です。
というのも東ヨーロッパでマグロは適当なサイズごとに切り分けて売られているだけなのです。
日本の販売店や寿司屋なら、頭、赤身、大トロ、中トロ、カマトロ、中落ち、ほほ肉など細かく分けられていてるのに。
日本ではマグロは部位によって市場価値が違いますし、部位によって脂肪分や硬さも違いますから最適な料理法も異なります。
たとえば普通の切り身の寿司にしにくい部位は、スプーンで削ってすり身にして軍艦巻きにします。
日本では牛肉や焼き鳥も部位ごとに価格や調理法が細分化されています。
このように部位を細かく分けたがる精神は日本の料理文化を大きく発達させた気がしてなりません。
産地表示までも細かい
欧米のスーパーマーケットで野菜や果物を見ると、どこの国でとれた野菜や果物かは書いてありますが、その国のどこでとれたかは書いていない場合も多いです。
欧米人も細かい産地まで気にしない人が多いといわれています。
しかし日本の場合、新潟県魚沼のコシヒカリ、鳥取県のラッキョウ、福岡県のあまおう(いちご)、滋賀県の近江牛、青森県大間のマグロなど都道府県レベルで野菜・果物や魚介・肉類のブランド化にこだわっており、スーパーマーケットでも産地が細かく表示されています。
このように都道府県同士が競えば、それだけ味のレベルも上がるでしょう。
日本人は臭いに敏感か
日本人は臭いに敏感な人の割合が相対的に高いといわれています。
あらゆる料理は何らかの臭いを発しますから、臭いに敏感な日本人はよりよい臭いを追求すべく料理も改善していったのかもしれません。
ただし、日本には納豆、くさや、鮒寿司といった強い臭いを放つ食品・料理もあり、それらは日本人でさえも好き嫌いが分かれるように「美味しい食べ物=だれにとっても心地よい臭い」とは限りません。
和食は小鉢料理が多い
欧米のレストランに行くと、さまざまな料理が1つの大きめの平皿に盛り付けられた料理がよくでてきます。
しかし、日本の和食レストランだと料理は小鉢ごとに分けられていることが多いです。小鉢のほうが料理人とって面倒ですが、料理と料理が混ざり合わない以上、味の水準は高いといえます。
こういう小鉢料理も日本人の分類したがる精神が反映されていると感じます。
メディアの影響
日本は食材と調理法と飲食店について多様性があります。
そのためか、テレビでも食べ物が出てくる頻度は世界一だと思います。
「COOL JAPAN〜発掘!かっこいいニッポン」というNHKのテレビ番組で外国人も日本のテレビ番組で食べ物が出てくる頻度に驚いていました。
将棋の中継でも食事は注目されますし、スタジオジブリのアニメ作品でも食べ物がおいしそうに見えます。
『美味しんぼ』や『クッキングパパ』みたいなウンチクまみれの本格的な料理漫画は諸外国では見られません。
こういったメディアから影響を受けた日本人は食に対する感性が発達しています。
ただ、たとえば日本のクリスマスは「ケーキを食べる」みたいな欧米では見られない妙な習慣が刷り込まれているのはマスコミからの負の影響といえるかもしれません。
欧米のクリスマスでもケーキは食べることがあります。
しかし、ケーキはクッキーやパイなどとともに数ある選択肢のうちの一つという感じで、日本人ほどデコレーションケーキにこだわりません。
まとめ
日本人は食にこだわります。
日本人からすれば「外国人は逆に食べ物にこだわらなさすぎ!」と言いたくなるくらいです。
ただし、日本人は食にこだわる割に小売店・外食店は残飯が多いのが残念なところ。食品の偽装事件も何度も起きました。
食にこだわるのなら残飯や偽装を少なくすることにもこだわってほしいものです。