よいか悪いかは別にして日本は東京一極集中の国です。
言い換えると東京はそれだけ人気があるともいえます。
この原因は、地理的な事情、人々の慣行、歴史的な経緯、経済効率などから導くことができます。
わかりやすく解説しますので見ていきましょう。
なぜ人々は東京に一極集中するのか
まずは地理的な理由について。
そもそも多くの人間にとっては山間部よりも平野部の方が住みよいため、平野部には人口が集中しやすいです。
実際、日本で人口が多いところは大きな平野になっています。
それは、首都圏がある関東平野、愛知県と岐阜県がある濃尾平野、大阪府と兵庫県がある大阪平野、福岡市がある福岡平野が代表的です。
とくに関東平野は日本最大の平野面積を誇るため、山地が多い日本列島において関東平野は発展の中心地として適しています。
都市は海に面している方が発展しやすい
さらに地理的には海に面している都市の方が他の都市や国と交易がしやすいため、発展しやすいです。
東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡といった日本の大都市はすべて海に面しています。江戸時代末期にペリー提督が来た後、いち早く港町として発展したのもこういった都市です。
世界的にも大都市は、ニューヨーク、上海、ロンドン、リオデジャネイロなど海に面している(近い)パターンが多いです。
歴史と地理にもとづく理由:東京駅は日本の鉄道の中心
歴史と地理が複合した理由もあります。
たとえば、日本の新幹線は東京駅が中心になっています。
実際、新幹線に限らず電車の上りは「東京あるいは東京に近づくこと」、下りは「東京から遠ざかる目的地」を意味します。
鉄道が東京中心になったことは戦前の政府による中央集権化政策に端を発します。
というのも明治政府は欧米列強に追いついて日本を近代化させるためには地方分権国家よりも、天皇中心の中央集権国家の方が効率的だと考えていました。
そのため明治政府は皇居のある東京を中心として日本を発展させたのです。
鉄道事業はその一つであり、中でも今の東京駅は中央停車場と呼ばれていました。中央停車場という名称には明らかに「東京こそが日本の鉄道の中心地」という発想が込められています。
政府は官庁も皇居のまわりに集中させましたし、官庁の幹部人材の採用は東京大学と太いパイプをもっていました。
皇居のまわりには有力な省庁と駅があったため、名門財閥企業(三菱と三井)としても本社を大手町に置きました。
こういった動きは他の業種や企業グループにも波及していったのです。とくに終戦後の発展は目覚ましいものがありました。
73年前の今日。1945年9月28日,終戦から一ヶ月半後の東京駅周辺。ニューラルネットワークによる自動色付け+手動補正。 pic.twitter.com/ovwvC0lJmv
— 渡邉英徳 (@hwtnv) September 27, 2018
高速道路の中心は日本橋
また日本の道路網についても五街道の起点は日本橋(東京駅の近く)であり、首都高が各高速道路のハブ(中心軸)になっています。
まあ五街道が定められたのは明治時代ではなく江戸時代の話ですが。
新幹線は都内をのぞくと数十kmおきに駅をつくるのが普通です。とくに、のぞみやひかりのような速達タイプの新幹線は数十kmごとに設置されている駅でさえも何個も通過します。
そうなると、のぞみやひかりが停まるような大都市以外はさびれてしまうのです。これがいわゆるストロー効果というもの。
このストロー効果は高速道路にも通用します。
経済上の理由
次に経済上の理由について見ていきましょう。
まず企業(とくに日本を代表する大企業)としては東京に本社を置いている方が「箔がつく」といえます。
また企業は単独では生きていけず、関連企業と取引したり、異業種に売り込みをかけていくものです。
そこでは企業がある程度密集している方がたがいの取引は便利。
企業の展示会やセミナー、そして企業を横断するワーキンググループなども企業が集まっている大都市が便利です。
とくに日本企業は取引先と実際に会ってビジネスを進めたがります。さらに日本のハンコ文化もリモートワークの壁となっています。
人口密度が高いところの方が経営効率はよい
さらに小売業や娯楽産業としても人口密度が高いところに出店する方が経営効率はよいです。
そして多くの人間は小売業や娯楽が充実している街に住みたがります。つまり、人口集中がさらなる集中を招くのです。
学生・就活生としても就活や大学間交流に便利な東京の大学に行きたがりますから、大学までも都心に集中します。
企業としても優秀な新卒人材を集めるためには、有名な大学が多い東京に拠点を置いた方が効率的です。
マスコミからの影響
企業人や国家公務員にとっては、地方勤務は「都落ち感」があることも東京へしがみつくことの一員になっています。
国会、官庁、鉄道、大手マスコミ、旧帝国大学、財閥など日本を代表する大法人は東京の皇居周辺を中心に成り立っていますから日本のエリートは東京に対する執着が強いのです。
テレビのトレンディドラマなども東京での都会生活を美化したものが多く、今でも引きずっている面は結構あります。
銀行員のトラブルや出世を描いたドラマである『半沢直樹』も「東京本社で勤務することこそが出世の証」という感じでした。
地方の進学校でも「地元ナンバーワンの公立高校⇒東大⇒官僚あるいは財閥入社」というパターンこそが成功モデルだと信じられています。
お笑い芸人も大阪が本場に見えますが、最終的には東京をめざす感じです。最近だと千鳥や博多華丸・大吉があてはまります。
彼らは東京へ進出した当初「東京はこわい」とかいっていましたが、今では東京の人気芸人として板についています(彼らは地方の仕事ももっています)。
ただし、東京であれだけ成功したダウンタウンでさえも関西系の仕事を未だに残しています。芸人は郷土愛が強いのでしょうか。
東京一極集中のメリットとデメリット
ここで東京一極集中のメリットと問題点を確認しましょう。
メリット
- 企業の経営効率が高まる
- インフラの効率が高まる(人が少ない山間部のインフラにお金をかけるよりも、大都市のインフラにお金をかける方が効率的)
- 大都市では自家用車をもたず電車やバスだけで移動できるとすれば、地球へのトータルの負荷は低くなる
- 店や娯楽がたくさん集まって楽しい
デメリット
- 人々の需要が大きいため大都市は地価が高い
- 地価が安い郊外から都市へ通勤するのは時間がかかる
- 電車は混雑、自動車は渋滞する
- 公害が発生し、一人あたりの緑地面積は少なくなる
- 東京に天災が直撃すると首都機能はマヒする
- 地方は衰退する
今後は大都市の対抗戦になりそう
なお世界レベルで都市の動きを見ると今後は、日本の首都圏、大阪圏、ソウル圏、上海圏、ニューヨーク圏、パリ圏、ムンバイ圏など大都市(メガシティ)の存在感が増すと予測されています。
つまり、大都市VS大都市という形です。
冷戦期の政治経済は東(ソ連中心の社会主義圏)VS西(アメリカ中心の資本主義圏)という感じでしたが、今後はメガシティが覇権を争うことになりそうなのです。
日本の大都市もこの流れに沿って大都市圏の効率を高めないと他のメガシティに負けてしまいます。
こういった危機や都市対決はネガティブに受け取られがちですが、社会を見直すにはよい機会となるでしょう。
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