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鉄道周辺

太平洋ベルトはなぜ工業が発達したのか

2020年11月29日

太平洋ベルト

日本の地理で重要なのは大都市および大工業地帯は太平洋側の海沿いにばかり位置しているということ。これを太平洋ベルトといいます。

具体的には、東京、川崎、横浜、千葉、浜松、名古屋、堺、大阪、神戸、倉敷、広島などがあてはまります。

一方、日本海側にある大きめの都市は札幌、新潟、金沢、福岡(福岡県福岡市)くらいです。

福岡県の中でも北九州工業地帯は太平洋ベルトに含む説が有力。

なぜ日本は太平洋ベルト付近ばかり工業や都市が発達しているのでしょうか。理由と応用が利く覚え方をわかりやすく解説いたします。

地理的な理由と歴史的な理由が複合していて面白いですよ。

太平洋ベルトで工業が発達した理由

そもそも日本の日本海側沿岸部(とくに北陸~東北)は降雪量がかなり多いため大都市に発展しづらいです。

そのうえ、19世紀に日本が開国したときには中国や朝鮮半島は停滞していました。

※中国は古代~中世では世界でもトップクラスに発達した国でした。

※1880年ごろの都道府県別の人口統計では石川県(今でいう石川県+富山県)や新潟県が1~2位でした。これは明治時代の地方は農村・稲作社会であり、人手が多く必要とされたから。加賀百万石は当時としては栄えていたのです。

19世紀の世界でトップクラスに発達していた国はイギリス(大英帝国)であり、そのあとをフランス、ドイツ、アメリカなどが追いかけているという状態でした。

19世紀の日本(明治政府)は当時の先進国に追いつくためにも、そして当時の欧米人から多大な影響を受けたために欧米重視の発展と東京中心の中央集権国家を選びました。

つまり、日本は日本海側の中国や朝鮮よりも太平洋側のアメリカを重視するようになったのです。

これは「脱亜入欧」というスローガン・思想や、首都が実質的には東京とされたことにも表れています。

※東京を首都と定めた直接的な法令は存在しません。

欧州は飛行機がない時代では遠すぎた。

古代~中世は中国や朝鮮半島を重視していた

日本の平安時代は今の京都府あたりが大きく発展しており、平安時代に欧米の存在は知られていませんでした。この頃は中国大陸や朝鮮半島との付き合いが重視されていました。

日本では古くから山岳信仰があります。古い寺や神社が山の近くに多いのはこのため。

平城京が奈良、平安京が京都につくられたのも盆地(山に囲まれた土地)という地形が一つの要因でしょう。

基本的に海から離れていて山が多い地域は大規模な工業に向いていません。

現代では中東から原油を輸入するにしても、オーストラリアから鉄鉱石(鉄の原料)を輸入して加工するにしても太平洋側の方が便利。

とくに関東平野や濃尾平野は日本の中では広い平野部であり、気候的にもすごしやすいです。すごしやすくて広い平野部は大規模な工場も立地しやすいです。

そして愛知県や神奈川県などでつくった自動車をアメリカ大陸や中東に船で輸出するにしても太平洋側の方が便利。

日本は開国から今まで加工貿易の国として発展してきました。

世界の大都市は海沿いばかり

日本に限らず世界の有名な大都市はほとんど海に面しています。その近くには大きな河川もあります。

その方が外国との交易に便利ですし、そういった便利な都市ほど発展しやすいからです。

中国は沿岸部に大都市がたくさんある一方で内陸は農村だらけで格差が大きい。
中国では農村から都市部へは居住移転の自由がないんだよね。

※参考

  • 海の恩恵他地域との交易に便利、海洋資源がとれる
  • 川や湖の恩恵農業(とくに稲作)には大量の淡水が必要、発電や工業にも淡水が必要、飲料水や魚がとれる

日本の工業はどうなるのか

オーストラリアやアメリカのような大平野がある国だと穀物を効率よく大量生産できるため、穀物は立派な輸出品になります。ヨーロッパの中ではフランスが結構な農業国です。

オーストラリアやアメリカの農機は巨大。農薬散布に飛行機まで使うし。
あんな巨大なのは日本では見たことがないよね。

しかし、日本は狭いうえに山地も多いですから穀物を効率よく大量に生産できません。

それなら単価の安い農作物をつくるよりも単価の高い工業製品(とくに自動車)を諸外国に売った方がお金になります。

日本の自動車は燃費や耐久性、コンパクト性においては世界的にトップクラスであり未だに売れていますし、自動車産業は裾野(すその)も広いです。

そういった工業製品を生産するには下請けの部品も含めて多くの人間が必要。

雇用やお金の流れが多いエリアに人は住みたがりますから、太平洋ベルト付近は人口も多いわけです。

次世代の自動車規格として有力な電気自動車は現行のガソリン車・ディーゼル車よりも部品数が少ないです。

さらに自動車はシェアリングによって台数そのものも減っていくかもしれません。

それに先進国の工場の中には賃金の安い途上国に移転してしまったところも結構あります。これは日本の加工貿易にとっても危機的な事態。

大きな港は入り組んだところにあるのが普通

関東地方と東海地方

次は原料の輸入や工業製品の輸出にとって大事な大きな港について。

上の画像は関東地方と中部地方だけを拡大したところです。遠く東に離れたところにはアメリカ合衆国があります。

ここで東京東部の海辺や神奈川東部の海辺(川崎、横浜)よりも茨城県や千葉県の東部の方がアメリカとの交易にとって便利じゃないかと考えた人はいませんか。

確かに千葉県や茨城県の方がアメリカに近いです。

しかし、千葉県や茨城県の東部にある海辺は港の立地として適していません。

大きな船が港に停泊するには茨城県のように外海に対してまっすぐな地形よりも、東京湾のように入り組んでいる方が波や風は弱いなど安全性は高いからです。

東海地方においても静岡県南西部のまっすぐな海辺よりも愛知県のような入り組んでいる方が港の立地に適しています。

大阪港や神戸港も外海から入り組んだところにあります。このように大きな湾(海から入り組んだところ)に大きな港と都市があるのはこれまた世界的に共通した傾向です。

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