将棋の藤井聡太先生の活躍はめざましいものがあります。
かつて羽生先生が七冠を独占したときと同じか、それ以上の人気があり、メディアにも頻繁に取り上げられています。
藤井聡太先生の肩書は、四段⇒五段⇒六段⇒七段⇒棋聖⇒五冠と短期間で変わるため(出世が速い)、メディアが取り上げる際は肩書の変更に気をつかうくらいです。
そんなわけで今回は藤井聡太五冠の人気の理由に迫ります。
簡単にいうと藤井五冠の人気は以下のような理由にもとづいています。
- 実力主義の世界でトップクラスの実力
- 将棋界は30歳前後がピークの年齢といわれているのにまだ若い
- 単なる勝利ではない数々の伝説をすでにつくった
- とっても謙虚
- 語彙も豊富
- お金に執着があまりない
- テレビから後押しされやすい性質がある
ここから先は上の箇条書きを掘り下げていきます。
藤井聡太五冠に人気がある理由
そもそも将棋というのは運がほとんど絡まない実力主義のゲーム・競技です。
運が絡むとしたら先手後手を決める振り駒のときだけ。
振り駒のあとは老若男女問わず公平な勝負になります。
そこでは第三者のアドバイスは禁止ですし、団体競技にありがちな監督好みの偏った起用や客寄せパンダもありません。
道具の良し悪しも関係ありませんし、審判の判定もありません。
過去にすごい実績を残した棋士でも負けが込むと強制引退に追い込まれます。
藤井聡太五冠はこんな実力主義の世界でトップクラスの実力者ですから年長者からも尊敬されるのです。
藤井五冠との対局は下位の棋士との対局であってもネット中継されるように世間の注目度が高いです。
そのため下位の棋士が藤井五冠とあたる際は事前に研究しまくるなど気合を入れてきます。
しかしというか当然というべきか、藤井五冠はそれでも高い勝率を維持しています。
まだ若い、若すぎる:素晴らしい可能性
次に若さについて。将棋界では20代にプロになった人が多いです。
そこでは、のちにタイトルをとった棋士でさえもプロ入りから10年くらいかかった事例はたくさんあります。
将棋のプロは170人近くおり、みんな強くなろうと日夜励んでいるため、タイトル挑戦者になること、そしてタイトルをとることは並み大抵ではないのです。
しかし、藤井五冠は14歳(当時中学生)にしてプロ入りし、17歳11か月で初タイトルをとり、18歳1か月で二冠になりました。
インターネットや将棋ソフトの発達によって将棋のレベルは昔よりも上がっているにもかかわらず、藤井五冠は10代後半にしてすでに横綱級の強さなんです。これは漫画級の強さ、いや漫画の設定を超えるようなとてつもない強さ。
将棋のプロの実力(棋力)のピークは30代とかいわれますが、それが本当だとすると藤井五冠はまだまだ成長する力を秘めていることになります。
「10代後半の時点ですでに強すぎるのに30歳になったらどうなるの?」と無限の可能性を感じるでしょう。これは将棋ファンにとってワクワクすることなのです。
羽生九段と藤井五冠の共通点は5歳~6歳という人生の早い時期に将棋を始めて中学生でプロ棋士になっていることです。
将棋はスポーツと同じように幼少期に始めた方が有利だといえます。
記憶に残る勝ち方が多い
将棋は基本的に相手の王様を詰ますか(追い詰めるか)、詰む前に相手に降参させるかで勝敗が決まります。
そこでは安全な勝ち方もあれば、僅差のきわどい勝ち方もあります。当たり前ですが、安全な勝ち方でも僅差のきわどい勝ち方でも同じ1勝であることに変わりありません。
しかし、藤井五冠は重要な棋戦でも安全な勝ち方をあまり狙わず、攻撃的に踏み込んでくる場合が多いのです。
攻撃的というのは、最強の駒である飛車を早めに切って攻め込んだり、王将(玉将)を固く囲わないで攻めに出るという形です。
守りを固めないうちに攻撃的に踏み込むのは諸刃の剣であり自陣の守りにも隙が生じますが、藤井五冠は鮮やかに勝ち切る場合が多いです。その棋譜はあまたのプロをも唸らせてきました。
中には自分の王様が派手に動いて相手の銀将をとって、その銀を使って詰ましに行ったパターンもありました。
つまり、藤井聡太五冠は単に勝率が高いだけでなく、実に攻撃的で鮮やかな勝ち方をするためプロも含めて見る者を魅了するのです。
そこでは超頭がいいAI(=人工知能)を上回ったと評価された手さえもいくつかあります。
羽生先生といえば伝説の「▲5二銀」「▲8六歩」といった鬼手が有名ですが、藤井五冠は若くしてすでに「△3六銀」「△7七同飛成」みたいな伝説の妙手をいくつも放っています。
とっても謙虚
こんなに将棋が強くて若い藤井五冠ですが、本人はいたって謙虚です。
10代後半という年齢で最強クラスに将棋が強いと、つい調子に乗ってしまいそうですが、本人は謙虚を貫いています。
日本で謙虚は美徳となっているため、これも日本人から人気が出やすいところです。
若いのに大人びている:語彙が豊富で質問の返しもうまい
藤井五冠は語彙も豊富です。
「僥倖」「望外」という文豪が使いそうな言葉をよく話しますし「将棋の神様がいるならば、お手合わせをお願いしたい」という名言も残しています。
こういうのもメディアに取り上げられやすいところ。
対局直後で疲れている状態での記者会見でもマスコミからの陳腐な質問や意地悪な質問に対してうまく答えています。
将棋の歴代の強豪の中にはかなりの変人・奇人もいましたが、藤井五冠からは正統派としての知性と品格が感じられます。
お金に執着があまりない
さて、将棋のプロの舞台でトップレベルの活躍をすると年収にして数千万円~2億円くらいを稼ぐことができます。
将棋界の報酬は年功序列ではなく、成果主義に近いものがあります。
そのため収入に安定感は欠けますが、プロ棋士である限りは基本給のような報酬も出るため上位棋士は安泰でしょう。スポンサーである新聞社が崩れない限り。
しかし、藤井五冠は若くして大金を手に入れているのにお金への執着を見せません。賞金の使い道で具体的に明らかになっているのは自作パソコンくらい。これは将棋ソフトの稼働に使うようなので将棋一筋だといえます。
もともと将棋のプロをめざす人はお金への執着が高くない人が多いですが、それにしても藤井五冠からはお金への執着が感じられません。
日本人はお金への執着が強すぎる人を嫌うところがありますから、藤井五冠のお金に執着しない姿勢は好かれるのでしょう。
テレビから後押しされやすい性質をもっている
藤井五冠に人気がある最後の理由はテレビ局のマーケティング戦略に基づきます。
それはテレビから後押しされやすい性質を将棋と藤井五冠はもっていることにあります。
そもそも将棋の主要棋戦の主催者は大手の新聞社。で、日本の大手の新聞社は系列のキー局(大手のテレビ局)と太いパイプをもっていますから、キー局としては新聞社を後押ししたがります。
また昨今の若者はテレビ離れしておりYouTubeに流れているため、テレビの視聴者は中高年の比率が高いです。
そうなると中高年に受け入れられる性質をもったスターの方がテレビ視聴率をとりやすいといえます。
将棋は日本の伝統文化であり中高年からも知名度の高いゲームですし、藤井五冠は若いのに謙虚な人柄ですから中高年から人気があります。
このように藤井五冠はテレビ局が求めているヒーロー像にあてはまりますから、テレビに露出しやすいのは当然だといえます。
藤井五感はさわやかで知的なイメージが強いですしメディアからも好かれていますから、テレビCMでも目にする機会が多く出てきそうな感じです。
囲碁も若年層にスター棋士がいます。しかし、囲碁のルールは自由度が高すぎるために逆にわかりにくいという特徴があります。
この点、将棋は王を追い詰めるという明確な目的があるため、絵的にわかりやすいです。
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参考将棋に人気がある8つの理由
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