一般に投資家は出資先に経済成長を求めるものです。
株式会社にお勤めの方としても「前年比・前期比で売上を伸ばせ」と上役から強くいわれているかと思います。
経済成長とは、経済の規模が大きくなること。一企業のレベルでは前期比で売上や利益が伸びることを意味します。
さらに一国レベルの経済成長では、GDP(国内総生産)が前年比で伸びることを重視します。国内総生産とは、一国内でのある期間における付加価値の総額。
なぜ投資家が経済成長を重視するかといえば、投資先の企業の売上と利益が増えるほど株主がもっている株式の価値も中長期的には上がりやすいからです。
これは個人投資だけでなく企業と企業の出資関係、政府と企業の出資関係にもいえることです。
資本主義で経済成長が必要な理由:現状維持では甘い
そもそも資本主義社会は基本的に退場と参入が自由です。
個人投資家が株式市場や外国為替市場に入ることはもちろん、企業が特定の業界に参入したり退場したりすることも自由です。
そのため株式会社の経営陣は、自社の従業員に成長という発破をかけないと新たな競合先にやられたり、環境の変化に対応できないという危機感があります。
にもかかわらず経営者が「現状維持」という甘い目標を掲げると、投資家や金融機関からそっぽを向かれたり、競合先にその甘さ・隙を突かれるでしょう。
これでは経営陣や提携先がもっている株式の価値も下がってしまいますし、業績も現状維持どころかマイナス成長に陥ってしまうかもしれません。
日本政府としても国全体の経済成長率を意識するのは当たり前ですし、政府は民間企業の成長を後押しします。
よく日本経済全体を「日本株式会社」と会社に例えて呼ぶのは、「政府は日本経済を全体的に成長させるべき」というところから派生しているようなもの。
危機感が大切
そして最悪の場合、倒産に至ります。
そのため、構造的に成長が難しい斜陽業種であっても成長が課されるのが普通です。
経済成長は国ごとにとらえるべきか
さて、新聞やテレビを見ている経済成長は国ごとに算出される場合が多いことがわかります。
しかし、現代でそれは複雑化しています。
たとえば、日本の領土内ではアップルのような外資系企業も事業を展開しています。そしてアップルのiPhoneには台湾や日本企業の部品もたくさん詰め込まれており、組み立て工場は中国にあります。
現代ではGAFAのようなグローバル企業が大きな力をもっている以上、経済成長は一国だけで単純に計れるものではないといえます。
有力な人間の声が経済成長を促す
なお富裕層や高給取りは株式をもっている率がかなり高く、また彼らの意見(株価や配当を上げよ)は権威がありますから政府や上場企業にも届きやすいです。
政府や上場企業のような有力な主体が経済成長を重視すれば、当然、社会全体としても経済成長が重視されます。これが資本主義国というものです。
数字は評価の尺度にしやすい
それから売上や利益といった株式会社の成長の核を占める数字は、従業員に対する評価の尺度としても便利です。
たとえば、あの人は「人望がある」という評価は抽象的なので納得しにくい場合も多くありますが、以前よりも多くの売上と利益をとってきたとなれば貢献度がだれの目にもわかりやすいからです。
従業員としても売上と利益を多くあげれば賃金が上がるのだとしたら、それに向けて頑張るでしょう。
これは成長への原動力になります。
まとめ:経済成長のメリット
- 分配次第だが1人あたりの所得が増えうる
- 消費や雇用が増えうる
- 税率次第だが税収が増えうるなど財政にとってプラス
- 魅力的な商品が生まれる※
- 構造改革が進む※
「昭和の文明水準で十分、経済成長は必要ない」と考える人がいるかもしれませんが、メーカーがそんな姿勢をとっていたらスマートフォンは生み出せなかったでしょう。
やはり時代や他国に合わせて日本社会が変わるべき部分というのは確実にあります(=構造改革)。経済成長を目標とした経済活動はその道標になります。