人が住宅を選ぶ際の基準は、地価、職場や学校までの距離、治安、環境(公害の少なさ)、お店や娯楽の充実度などいくつもあります。
要するに住まい選びにおいては持ち家にしても賃貸にしても立地が重要なのです。
ということでこのページでは住む際の大まかな立地の選び方にとって役立つチェックポイントを示します。
住む場所を感覚的に選ぶも多いでしょうが、このページの内容は理屈っぽい選び方です。
どこに引っ越しするか迷っている方は参考にしてみてください。
一人暮らしや家族・子育てを問わず全般的に通用するものばかりです。
大まかな地域を選んだら個別的なところは家ごとの内見(内部見学)で決めましょう。
どこに住むか迷うときのチェックポイント:人によって違う
当たり前ですが、住みやすさに求める要素はみんなに共通するものもあれば、違うものもあります。
たとえば待機児童数は、該当の年代の子どもをお持ちの方は重視すべきですが、そうでない場合、とくに気にする必要はないでしょう。
他には電車や路線バスの充実度についても同じです。
ただし、長く定住する人は「若いときは路線バスは乗らなかったけど年をとって免許を手放したら必要になった」という場合もあります。
また日本の大都市圏の住宅価格は便利な最寄り駅からの距離が重視されます。
そのため普段は鉄道を使わないという人も、持ち家を売るときを考えると鉄道の充実度は知っておいて損はありません。
土地について
- 住宅地の平均地価
- 用途地域
まず地価は安い方が望ましいかもしれません。しかし、安すぎると不便だったり治安が悪い場合もあります。そのためバランスを見るべきです。
自治体の地区ごとの地価は国交省の公示地価を参考にしましょう。
次に用途地域とは地域ごとに土地の用途を定めた規制を意味します。
たとえば第一種低層住居専用地域はほぼ住宅だらけの地域であり、商店は小さな規模しか建ててはいけないということ。Wikiを見て大まかに把握しておくことをおすすめします。
実家との距離
実家との距離も重要です。実家が近いと何かと干渉されますが、子どもの面倒を見てくれることもあるからです。
ただ、実家が近いと逆に親の面倒を見るべき場合もあります。
さらに実家が近いと大型連休時に帰省するときにつまらなかったり、地元の知り合いが鬱陶しい場合もあります。
こういった事情は夫・妻どちらの実家かでも違うものです。
地域の住民について
- 住民の平均所得住民は金持ちなのかという指標。お金持ちが多い方が自治体の税収は安定しますが、お金持ちが多い自治体は地価や物価も高い傾向にあります。
- 転出入人口と人口増減率自治体ごとの人口の増減を見ると、自治体の人気度がわかります。
- 人口密度面積あたりの人口を示します。人が密集して住んでいる方がいいのか、広々と住んでいる方がいいのかということ。当然、高層の集合住宅に住んでいる人が多いと人口密度も高くなります。
- 平均年齢住民の平均年齢はそれなりに若い方が活力があります。平均年齢が低いと子育て世代にとって人気があると推察できます。
- 日本人と外国人の比率外国人の比率が高すぎると治安や雰囲気の面で懸念が大きくなります。
以上のデータはそれぞれの自治体の公式サイトに載っているはずです。
なおネット回線の速度は地域差があるため、ネット回線の速度を重視する人はあらかじめ調べておいた方がいいですよ(基本的には人口密度が高いところほど速度は遅い)。
人口密度が低い田舎だと、そもそも光回線が利用できませんが。
治安について
- 人口あたりの刑法犯認知件数その地域に犯罪者がどの程度いるかという指標。
- 人口あたりの交通事故件数その地域でどのくらい交通事故が起きるのかという指標。
どちらも低い方が望ましいです。以上はそれぞれの自治体や警察署の公式サイトに記されているはず。
- 路上にゴミが散らかっていないか路上に多少のゴミがあることは仕方ありません。しかし、それがあまりに野放しにされているようだと地域の風紀に問題があります。これはグーグルストリートビューを使ったり、実際に歩いて確認します。
景観や観光について
日本各地には景観条例があります。景観条例とは、良好な景観をつくっていこうとする地域ごとのルールを意味します。
この景観条例は観光地やお金持ちが多い街ほど厳しい傾向があります。
景観が美しく保たれれば住宅街にもブランド価値がでるというもの。
観光地についてはとくに土休日に混雑する傾向があり、写真を撮りまくる外国人や、騒がしい人・車であふれます。
観光客が多いことは税収や雇用面では悪くありませんが、住みやすさの点ではマイナスに感じる人もかなりいます。
民間企業やお店について
- スーパーマーケットや飲食店など生活に密着したお店の充実度(物価も含む)
- あなたが好きな娯楽に関するお店
- テレワーク対応の施設(カフェ、コワーキングスペース)
お店の充実度は買う場合はもちろん、配偶者が地元でパート・アルバイトとして働くときも影響します。もちろん、工場や倉庫で働いてもいいでしょう。
ただ、住む場所を選ぶ際は自治体全体としてお店が充実しているかよりも、最寄り駅や幹線道路の近く、あるいは自宅の近くに充実しているかを見るべきです。
こういった地域のお店の充実度はグーグルマップを見ればすぐにわかります。まあグーグルマップだとわかりにくいお店もありますが。
一昔前は銀行・ATMや役所までの距離も重視されましたが、ネットバンクやコンビニの行政サービスがある現代ではそんなに重視する必要はないでしょう。
なおテレワーク対応の施設については高速のWi-Fiがあることが望ましいです。
-
参考ショッピングモールの近くに住むとよいことだらけなの?
続きを見る
自治体の財政力
- 財政力指数
- 医療費助成
財政力指数とは、自治体の財政力を表す指数のこと。簡単にいうと、財政力指数が1.0を上回ると自治体の財政はゆとりがあって行政サービスも充実するのです。
あまり気にする必要はありませんが、0.4を下回ると自治体の財政は厳しいと見ましょう。
これに関して、すべての都道府県と市区町村は子どもに対する医療費の助成制度を設けています。
医療費の助成制度は自治体によって異なりますからチェックしておきましょう。当然、財政力が高い自治体ほど助成もめぐまれている傾向があります。
福祉施設の充実度
- 人口あたりの病床数
- 老年人口あたりの介護老人福祉・保健施設定員数
- 幼稚園や保育園
- 待機児童数
日本は世界でもトップクラスで人口あたりの病床数が多い国。まあその割に医師の数はやや少ないといわれますが。
老年人口あたりの介護老人福祉・保健施設定員数と待機児童数については該当の世代はチェックしておきましょう。
文教施設の充実度と学生の多さ
- 学生の数
- 公立学校の位置と面積
- 図書館の数と蔵書数
- 私学や私塾の数
まず一般論として学生が多い街はうるさいと指摘されがち。
しかし、学生が少ないとそれはそれで地域に活気がないでしょう。
学生=地域の住民とは限りませんが、学生は適度にいた方がよい気がします。
大学図書館は地域の住民向けに施設を開放している場合がありますから、本好きの方は大学の近くに住むのもよいと思います。
インフラ関連
- 水道料金
- ゴミ出しの方式
- 下水道の普及率
- ガスや電力の料金と方式
- インターネットへの接続手段(光回線が望ましい)
水道料金は自治体によって最大で8倍もの格差があります。そのためチェックするのに値します。
水道事業は自治体が運営するため、料金は財政力指数に左右されるのです。さらに水道料金は水源からの距離(水を運ぶコスト)や水量、水質(浄化するコスト)、自治体の地形にも左右されます。
次にゴミ出しについても自治体によって異なるところです。具体的には戸別収集とステーション方式(集積所に出されたゴミを収集する方式)などがあります。
分別の細かさ、ゴミ袋の価格(高い場合はゴミ処理代が含まれた価格)なども自治体によって異なります。
それから人口がそれなりに多い地域でも未だに下水道がない地域もあります。
下水道がないと浄化槽か汲み取り式に頼ることになります。
インターネット回線については光回線があることが望ましいです(マンションなら光回線の光配線方式がいい)。
田舎は光回線の提供エリアになっていない場合もありますが、田舎の市街地だけは光回線に対応している場合もあります。
光回線の提供エリアは光回線の事業者のウェブサイトにアクセスすれば番地単位でわかります。
都会は都市ガス、田舎はプロパンガスが基本です。しかし、たとえばそれなりに東京に近い神奈川県の海沿いの地域では未だにプロパンガスの地域もあります。
なおガスや電気は自由化されましたので、一戸建ての方なら安い会社を選びやすくなりました。集合住宅だと建物のオーナーが統一的に契約するため自由度に欠けます。
交通や通勤について
- 路線バス
- 駐車場や駐輪場
- 鉄道の本数と速さと混雑率
路線バスは最寄り駅や重要施設(市役所や大病院など)までの本数、所要時間、深夜バスの有無がチェックポイントです。
公営の駐輪場の定期利用は、自治体によっては満員状態が続いていて順番待ちになっているところもあります。
駐車場は東京の高い地域だと1か月あたり5万円くらいはかかりますから注意が必要です。
鉄道の通勤事情と好みごとのおすすめ路線については↓の記事を参考にしてください。
-
参考住みやすくておすすめの始発駅【帰りの負担も考えよう】
続きを見る
-
参考通勤の乗り換えは回数よりも1回あたりの負担を考えよう
続きを見る
-
参考東京に住むのにおすすめの路線を好みごとに示します
続きを見る
上空の飛行機の飛行ルートおよび騒音
飛行機(とくに軍用機)が自宅近くの上空を飛んでいるとうるさいです。
上空の飛行機の飛行ルートおよび騒音は、自治体や国交省の公式サイトを見て上空近くを通るのかチェックしましょう。
空港は海に近いところにあり、飛行機は海側のルートから離着陸するのが基本ですが、内陸の上空を飛ぶ場合もあります。
ただ、この類の飛行ルートや時間帯はたまに変わる事情でもあります。
実際、神奈川県の厚木基地は以前に比べると飛行機の離発着は大きく減りました。
道路事情
- 踏切事情
- とくに渋滞する箇所
- 道路や歩道の幅
- 路面電車の有無(あなたが自家用車を運転する際に路面電車が邪魔だと思うのであれば、路面電車のある都市は避けるべき)
- 遠出の際に便利な有料道路までの距離
- 最寄り駅やバス停から自宅までの街灯
- 面倒な私道がないか(トラブルになった例がある)
たとえば、踏切が単に存在するのは問題ありません。しかし、開かずの踏切と呼ばれるほど朝の通勤時間帯に長く閉まっていると生活に影響がおよびます。
また大きな幹線道路は大型トラックと速度超過の車が多いため、その道路沿いに住むことは騒音と振動と大気汚染の面で問題があります。
さらに一人暮らしの女性は、街灯の有無をチェックすべきです。このあたりのことはグーグルストリートビューを使えばわかります。
嫌悪施設の有無
- お墓や火葬場
- ●●●の事務所
- 妙な宗教施設
- 刑務所
- 飲み屋
- 夜型のお店
- ギャンブル場
- 発電所
- ガスタンク
- 大量のガス排出や排水を行う工場
- 廃棄物処理場
- 下水処理場
- 家畜関連の施設
- 軍事基地・演習場
- 高圧鉄塔
嫌悪施設とは自宅の近くにあってほしくない施設のこと。お墓の近くは気分的な問題があるため、家賃はやや安かったりもします。
あなたにとって大した害ではないのに家賃が安かったらおトク感があるでしょう。
不動産会社は物件契約において相手に重要事項を説明する義務がありますが、人によって嫌悪施設の対象は異なります。
そのため、世間ではあまり嫌われていない施設をあなたが嫌っている場合はあらかじめ注意しておくべき。とくに所帯持ちの場合は配偶者や子どもの好みも気遣うべきです。
街の空き家率は高すぎないか
どこの街でも空き家が少しあるのは自然なこと。
しかし、街全体の空き家率が明らかに高いと以下のようなデメリットがあります。
- 雪国では雪の重みで空き家が倒壊して近隣に迷惑をかけたケースがある
- 放火がこわい
- 災害時に空き家が倒壊すると道路(避難経路や緊急車両の道)をふさいだり、延焼の原因にもなる
- ベランダに物干し竿や植木鉢が放置されたままだと台風時に飛んでくる可能性がある
- 雑草が伸びたり、ガラスが割れていたり、ゴミが不法投棄されていたりと地域の景観を損ねる
- 空き家を犯罪に使う人がる
- 空き家が多い地域は治安や景観の悪化によって近隣の地価を下げる
そのため、空き家率が高すぎるエリアは避けた方がいいと思います。
小さなチェックポイント
その他のチェックポイントとして地域の行事や集まりがあります。
ただし、地域の行事は年に数回なのでそんなに重視する項目ではありません。
自然条件も考えよう
- 鳥獣の数
- 公園のような緑地帯
- 野焼き
- 森林
- 海、山、川、湖沼
- 気候(最高気温、最低気温、日照時間、湿度、降水量)
公園の近くは一見住みやすそうな感じがします。しかし、日中の公園は子どもたちの声や球技の打球音が飛び交うため、苦手な人は避けるべき。まあ昼間、外出している人はあまり関係ありませんが。
また緑が多いということは、それだけ虫や鳥類も多く寄ってきます。
次に海、山、川、湖沼といった水辺の近くに住むことは要注意です。そういうところは湿気が多いため、虫が多かったり、水害の可能性が高かったりします。海の場合は潮風の悪影響も懸念されます。
とくに川や湖沼の近く、そして埋め立て地は地盤の弱さが指摘されます。地盤が弱いと家が傾く要因になります。家が傾くと不安になって夜も安眠できなくなったりします。
昔は水辺だったところを含めて水辺に住むことが怖いのなら、自治体が公表しているハザードマップをまずチェックしましょう。
気候については気温および降水量(降雪量)をチェック。たとえば雪国は光熱費や雪かきの手間が大きいですよ。
沖縄は最高気温と最低気温の差が小さく、夏は本州ほど気温が高くなかったりします。
地盤や土について
- 標高と坂
- 崖の近く
- 切土か盛土か
坂はない方が好ましいかに見えますが、水は低地に流れやすい以上、水害対策として坂の上や標高が高いエリアに住むのも悪くありません。
これは人が水を避けやすいということはもちろん、家が乾燥しやすいということでもあります。湿度が低ければ、カビやシロアリにあう率も下がるため家の寿命も上がります。
逆に標高が低い土地だと湿気が抜にくいため家が長持ちしにくいのです。
それから分譲住宅を買う場合は切土と盛土についても重要です。切土とは、斜面を切って(削って)低くし、平らにした土地のこと。
盛土は低い地盤について土砂を盛り上げて平坦らにした土地のこと。一般に盛土よりも切土の方が地盤は強いです。
切土と盛土は素人でも見抜ける場合もありますが、難しい場合も多くあります。そのため気になる人は不動産や地盤の専門家に聞いた方がいいと思います。
火災や地震対策
- 古い木造住宅の密集度
- 地盤の強さ
- 海からの距離
日本全国どこでも大地震は起きる可能性があります。
その中でもとくに不安視されているのが、木造住宅が密集している地域。木造住宅は燃えやすいため、それが密集していると延焼しやすいのです。
首都圏でいうと下町・城東に木造住宅の密集地域は多いです。
まとめ
この世に完璧な街は存在しません。
しかし、同じような家賃であっても、より住みやすい街は存在します。
あなたにとって妥協できる点と妥協できない点を見極め、いろんなところを比較して住みやすいところに住みましょう。