新興(マザーズやジャスダックに上場)のバイオ株やゲーム株の特徴といえば、まず株価の動きが激しいことがあげられます。
大きな材料が出ると、たった数営業日で株価が倍になったり半分になったりすることも珍しくありません。
テクニカルも関係ないように見えるほど材料や思惑に左右されます。
アベノミクス以降でいうと、テラやガンホーの大躍進、そしてアキュセラやサンバイオの暴落などが有名です。
このように新興のバイオ株やゲーム株には夢があると同時に悲惨な事態もあるので、他の銘柄とは異なるアプローチが必要です。
その傾向を大まかにおさえておきましょう。
バイオベンチャーや新興のゲーム企業は安定していない
まず新興のバイオ企業やゲーム企業は業績がよくも悪く安定していません。それらの企業の商品は独特のギャンブル性があるからです。
というのも、それらとは対照的に、たとえばトヨタやホンダが供給する自動車は需要が安定的な傾向にあります。
自動車は現代人にとって必需品に近いですし、日本メーカーの自動車の性能やデザインは同じセダンならどれも似たようなものだからです。
トヨタが革新的な電気自動車を大々的に発売するとなると、いろいろ予想が難しくなりますが、現行のガソリン車・ハイブリッド車の需要や売上はある程度予測できます。
ここでは為替や新興国の動向といった外部環境の不確実性が強いだけで、商品そのものにはギャンブル性があまりありません。
新薬のギャンブル性
しかし新興バイオの場合、治験が上手くいくか、新薬が承認されるか、大手製薬会社といくらで契約できるかというように「賭け」にも似た要素が常に立ちはだかります。
仮に新薬が承認されたところでどこまで株価が上がるかを予想するのは難しいです。一時的には適正株価を大きく超えたり、あるいは意外と上げ幅が期待外れに終わった例もあります。
さらに新興バイオは資金が不足している場合も少なくありません。創薬は基礎研究と数段階の治験に10年ほどの時間がかかり、そこから厚労省からの承認を待つ壮大なプロジェクトだからです。
基礎研究で見つかった新薬候補が発売に至る確率は3万分の1ともいわれています。もちろん、これらを担うのは学歴も賃金も高いエリートたち。
エリートがお金をかけながら創薬へ向けてまい進しても試行錯誤にならざるを得ないのです。
それゆえ新興バイオには増資の動きが目立ちます。
一般に株式会社が増資すると株式は希薄化すると見なされやすいので(=株式の発行数が増えると1株あたりの利益・価値が下がる)株価は急落しやすいです。
薬は人間の「長く生きたい」という欲求を支えるため、すでに安定的な薬を供給している大手製薬会社の業績は安定していますが、新興企業の新薬となるとそうはいかなくなるのです。
日本人はバイオギャンブルがお好き
次に見ていただきたいのが下の東証マザーズ限定の信用買い残ランキングです。何か重大なことに気づきませんか。
画像の引用:StockWeather信用買い残ランキング
(2019年12月時点)
アンジェス、オンコセラピー、そーせい、ソレイジア、ナノキャリア、メディネット、サンバイオ、ブライトパスなど見事に新興バイオが並んでいるのです。
マザーズの発行数ランキングや時価総額の上位でいうと、メルカリやサイバーダインが入ってもよさそうなのですが、バイオが上位を占めています。
日本人はボラティリティが大きいバイオを信用買いするのが好きということ、つまり日本人はギャンブルが好きだといえます。
このようにバイオベンチャーは信用買い残は日頃から多く、また新興株の多くは個人投資家にとっては空売りがしづらいです。
こういう状況だと、悪材料が出たときや地合いが悪いときは機関投資家としては大量の空売りで売り崩すターゲットになりやすいです。
ということで、バイオ株の信用買い残の多さと機関投資家の売り崩しには十分気をつけましょう。筆者も痛い目にあったことがあります。
ゲーム株のギャンブル性
次にゲーム株について見ていきましょう。
ゲームにしても生活必需品ではありませんし、また流行り廃りが激しい業界ですから株価の浮き沈みも激しいです。
ここでも「今度発売されるゲームは面白いか、そして売れるか」という賭けにも似た要素が立ちはだかります。
ゲームは個性的な商品ですから、同じ有名なアニメを題材にしたゲームであっても、いざ発売されてみるとA社のゲームは売れる一方でB社のゲームは意外と売れなかったという事例は少なくありません。
たとえば、ドラゴンボールは超人気アニメでありアカツキのドッカンバトルは人気を集めていますが、他社のドラゴンボールのゲームの中には冴えないモノも見受けられます。
逆に開発中は会社内でさえも期待されていなかった無名ゲームなのに、いざ発売されてみると大ヒットしたというパターンもあります。
新興バイオやゲーム株への対策
そうなるとバイオ株やゲーム株にどう対処すればよいのかという疑問が生じます。筆者は以下の4点を意識しながら対処しています。
- 静かな時(安値圏)を狙った買い集め
- 急上昇時の順張りは時価総額を意識して高値圏なら短期にする
- 思惑期間を利用する
- 無理に追わない場合もあり
まず一つ目は買うなら安値圏だけを狙うということです。たとえば、時価総額で300億~500億くらいを行き来しているのであれば、300億円台のときに買います。
あるいは中期的によい材料が出そうな銘柄は、時価総額が100億円台~300億円台で買いこんで寝かせておきます。
新興株は値動きが激しいといっても、いつも激しいわけではなく静かに安値圏をさまよっている時期もあるので、それを狙うというわけです。
新興のバイオやゲームは高値からの急落がある以上、とくに中長期の投資家は安値圏を狙う方がよいというわけです。
新興株の高値圏からの急落はそれほど悲惨です。新興バイオに対する信用取引は自信がある場合以外は短期だけにした方がよいと思います。
それに新興バイオでは安値圏からある程度上がったときもストレートには伸びづらく振るい落としがあるので、それに動揺しないようにするためにも安値圏のポジションが必要です。
もちろん、安値圏のときに買ってもさらに下がる可能性があるわけですが、それくらいは目をつぶる覚悟が必要です。新興バイオとはそういうものです。
このとき損切ラインも自分なりにあらかじめ決めておくべきです。
サンバイオの暴落
たとえば、サンバイオは2019年1月の急落前、株価は約11000円、時価総額は約6000億円もありましたが、売上はたった数億なので今後の新薬期待により暴騰していたといえます。
当たり前ですが、サンバイオの暴落前(暴落のきっかけになったIRが出る前)においてはそこからさらに上がる可能性もありました。
でも冷静に比べてみてください。時価総額が6000億円で売上数億円の新興企業の株価がそこからさらに上に行ったときに得られる利益と、治験や申請がうまくいかなかったときに急落する場合の損失を。
期待される利益と損失を比べると、この状態からは期待値はマイナスの方が大きいでしょう。
急上昇時の順張りも時価総額を意識する
このように「安値圏」を集めるというのは有力なやり方ですが、都合よく安値圏だけを集められなかった投資家も多いでしょう。
そこで次に考えられるのが急上昇を見せている銘柄に順張りで乗っかっていくというやり方です。
このとき時価総額が明らかに高いと、株価がそこからもっと上がる可能性が残されているとしても、あまり旨味はありません。サンバイオやアキュセラみたいなパターンはこわいです。
したがって、時価総額が明らかに高いときの順張りは投資期間を短めにした方がよいでしょう。
もちろん順張りしたのが急上昇の初動局面、つまり時価総額がまだ低い段階ならスイング期間から中期くらいは様子を見てもよいでしょう。
思惑期間だけを利用する
さて、バイオ株やゲーム株には節目となる日が存在します。
たとえば「新薬申請や治験の結果は★★日までにわかる」「4月〇週は新薬の学会があり大きな発表がありそう」「新作ゲームの概要や売上ランキングは★★日に判明する」という具合です。
その他の思惑しては、ちょっと小さいのもありますが
- 上市
- 有力企業との提携やライセンス契約
- 四季報発売
- 創業〇周年(会社の節目の時期に大きな情報が発表されるかも)
- 株主総会
- 権威ある賞の受賞
- 赤字状態からの黒字化
- 株式分割
- 1部昇格
などがあります。
ここで★★日をまたぐ形で保有すると収支の幅はよくも悪くも大きくなります。★★日の引け後によいニュースが出れば、翌日は大きなギャップアップがのぞめるからです。
むろん、悪いニュースがでると翌営業日は急落かストップ安でしょう。これらはいわゆる決算またぎと同じ発想です。
後者のような急落を避けるには節目となる日をまたがないということにつきます。
こういう節目の日があると、その前までは「★★日の引け後はよいニュースが出そう」という思惑が作用することで安定して株価が上がったりします。
そこで手堅くいくなら★★日前の思惑上げの期間だけを利用した方がよいというわけです。
こういう思惑上げは、たとえば1月15日(金)が節目の日だとすると15日の15時まで続くのではなく、週末15日の引け後を不安視する勢力が現れて15日の前場や14日がピークになることもしばしばあります。
無理に参加しないというのも有力
バイオ株やゲーム株の攻略は難しいです。この場合の難しさは前に述べた商品のギャンブル性にあります。
そこで賭けに自信がなかったら無理に参加しないというのも一つの有力な選択肢です。