株の塩漬け、すなわち塩漬け株とは含み損状態の株式を長く持ち続けること。
食べ物の漬け物は食塩と長期保存によってできあがりますから、株式も含み損状態のまま長くもっていると「塩漬け」と呼ばれるのです。
塩漬け株の期間や損失額について確たる定義はありませんが、個人的には3ヶ月以上の期間をもって含み損株を保有していると塩漬け感が出てくると思います。
今回は株の塩漬けの中でもデメリット・メリットと確証バイアスとサンクコストについてわかりやすくお伝えします。
株の塩漬けのメリット
まずはメリットから。
塩漬け株のメリット
- そのまま保有していれば含み損は解消されるかも
- 現物保有の維持なら手数料や金利はかからない
- 配当や優待が出る銘柄であれば含み損だろうともらう権利がある
- 利確や配当が多い年に合わせて大きな塩漬け株を損切りすれば節税になる
ちょっとメリットとはいえない項目もありますが、気になるのは4番目の節税でしょう。
そもそも株式投資では売却益の確定や配当に税金が課せられますが、それは損失との合計ですから、大きな売却益には大きな損失をぶつけるべきなのです。
そのため大きな含み損は今すぐに損切りするよりは、利確と合わせて後回しにした方が節税効果が高くなる場合があります。
投資期間が短期~スイングトレードの人は損切りは早めに行うのが基本です。
短期~スイングはその時点において元気のいい銘柄ばかりをターゲットにするからです。
元気のいい銘柄とは、出来高とボラティリティが普段よりも大きく、また期待の好材料がある銘柄のこと。元気がなくなったら短期~スイングトレード勢は次の銘柄に移ります。
しかし、長期的にずっと元気のいい銘柄というのはほとんど存在しません。
そうなると長期の投資家は投資先の停滞にも付き合う必要がありますから、場合によっては長い含み損になってしまうのです。
デメリットの意欲の低下は悪循環の原因となる
次はデメリットについて。
塩漬け株のデメリット
- 含み損は横ばいのまま、あるいは一層増える可能性がある
- 資金の固定化
- 意欲の低下
- 悪循環を引き起こしうる
塩漬け株は将来的に上がる可能性もあるので、塩漬けが悪いとは限りません。
しかし、値下がりしたままだったり、さらに値下がりしてしまう可能性もあります。
株が塩漬けになってしまうということは、一般的にはその時点では調子の悪い株でしょう。
というか、株価が上がることを予想して買ったのに下がり続けてしまうようでは買った意味がありません。
それならば、調子の悪い株の復調を長々と待つよりは調子のよい銘柄にさっさと移ってその株で負けを取り戻す選択肢もあります。
塩漬け株の保有は「保有株の復調を待つ」という一点に絞った狭い戦略ですが、それを損切りすればその売却資金を使ってそれ以外の3000以上もの銘柄を保有する機会がもてます。
損切りはマイナス確定ではありますが、次なるプラスを切り開く前向きな行為でもあるわけです。
この差は資産の運用効率面ではもちろん、投資に対する意欲の持ち方の違いとしても大きいものです。
私もかつてある銘柄を塩漬けにしてしまった経験がありますが、このときは投資の勉強にあまり身が入りませんでした。
すなわち「含み損がショック」⇒「さっさと損切りしない」⇒「資金が拘束されて他にまわす資金が不足」⇒「やる気を失って投資の勉強もおろそかになる」⇒「投資の成績が全体的に低下」という悪循環です。
そう考えると、投資において意気込みを高く保つというのは結構大事だといえます。
確証バイアスにご用心
塩漬け株に関して気になるのが上のようなGoogleの検索サジェスト。
「株、塩漬け」とGoogleに入力すると「成功」「メリット」「悪くない」がサジェストの上の方に来るのです。
こんなサジェストが上位になるのは「今オレは塩漬け株をもっているけど塩漬けには成功例やメリットもあるからこのままで大丈夫!」という意見を補強したいがために検索している人が多いからでしょう。
こういうのは学術的には「確証バイアス」と呼ばれます。
政治的に言うとA党の支持者がA党への賛成意見とB党への反対意見ばかりを集めているようなものです。
確証バイアスは意見および行動が偏って大負けしてしまう原因になりますから、投資に関する意見は公平に集めることをおすすめします。
予想・期待したストーリーからハズレたとき
塩漬け株をもたないようにするためには、あなたが投資前に予想・期待したストーリーがハズレたときに売るのが有効です。
というのも中長期の投資家が株を買う際は「業績は〇〇という材料とともに上がり、それに沿って株価も上がる」というストーリーを見込んでいるはずです。
当然、そういったファンダにもとづくストーリーは当たることもあれば、ハズレることもあります。そしてハズレて戻る見込みがなければ売るのです。
あるいは中長期投資の場合、25日移動平均線を割り込んだときに売るというやり方も有効です。
こちらはテクニカル的に自分の予想とは違う動きをしたときに売るということ。これには25日移動平均線を目安にするやり方が有名です。
短期やスイングの場合は見切る地点をもっと早くしましょう。
斜陽産業の塩漬けには要注意
次は業種と塩漬けの関係について。
ゲーム株やバイオ株のように業績も株価も荒い株だと大きく沈んでからの昇龍拳(急騰)も普通にありえます。
そのため塩漬けからの一発逆転もあります。とくに新興市場のゲーム株やバイオ株は荒いため、よくも悪くも大きな波に揺さぶられます。
しかし、斜陽業種だとじわじわ右肩下がりし続けるなんてことがよくあります。
具体的には日本市場の場合、印刷・複写機、出版、百貨店、伝統的な金融機関、鉄鋼などです。
それから不祥事が起きた銘柄は短期参戦はいいとしても、長期的な保有は厳しいかもしれません。
これまでの有名な例でいうとオリンパスは復活しましたが、タカタは倒産しました。
大きな不祥事を起こした企業の株式を持ち続けるのは、よくも悪くもギャンブル度が高いです(ハイリスクハイリターン)。
損切りの難しさはサンクコストにあり
一般に損切りは「抵抗感がある」といわれています。なぜなら、そこにはサンクコストという心理的な労力・費用が作用しているからです。
サンクコストとは、経済学用語で回収できない費用を意味します。
たとえば、買った本が前半だけでつまらないとわかったら、その時点で読むのをやめる方が合理的です。
しかし、選ぶのに手間暇をかけたりお金を支払っていると「もったいない、回収したい」という思いにとらわれて読み続けてしまう場合があてはまります。
株式投資でも買う銘柄について時間をかけて厳選していると思い入れが強すぎて損切りできないことがあります。
しかし、もし回収できない見込みが高かったら、さっさと損切りする方が合理的だというわけです。