「日本(日本人選手)はテニスが弱い」という評価を聞くことがあります。
日本の男子テニスは世界約200カ国の中でスペインのようなテニス大国よりは弱いですが、その他大勢の国よりは強いという特徴があります。
日本の女子テニスも同じような感じで国別の総合力は世界で10位台いう感じです。
日本のテニス選手は決して弱くないのですが(世界全体では強いほう)、とくに四大大会の男子シングルスで上位に入ることはめったにない状況です。
そこでこの記事では日本が世界で国別10位台に甘んじている原因を示します(国別ではそこそこ強いが、個人としてぶっ飛んでいる選手が欠ける)。
※将棋や野球は日本国内で強いっていうだけでも評価されますが、テニスは国際的に強くないと評価されないし稼げないのがツライところ。
※国枝さんや小田選手、上地選手のように車いすテニスの世界で日本人はかなり強いです。
日本がテニス大国より弱い理由
日本人のテニス選手がテニス大国の選手より弱い理由は以下のとおり。
- 体格や筋力が劣っている
- テニスを始める時期が遅い
- 有力な人材が野球やサッカーに流れている
- 諸外国の選手が集まって競う環境になっていない
- 日本は部活重視で、欧米は私的なスクール重視
- リスクを背負ってまで海外に行きたがらない(海外でテニス経験を積むのはかなりお金がかかるし、日本ではテニス系の奨学金は少ない)
- 砂入り人工芝のテニスコートはよくない
- ソフトテニスの存在
サーブで主導権をとるのが難しい体格
まず体格に関してテニスにおける理想の身長は185cm~195cmくらいだといわれております。あのフェデラーやナダルもこれくらいの身長です。
- 身長が高いほど速くて角度のあるサーブが打てるサービスエースが量産できる(サーブだけでポイント獲得)、あるいはラリーの主導権がとれる自分のサーブゲームについて自信をもって臨めるし早くポイントをとれるサーブゲームが早く終わるほど体力を温存できるから過密日程でも有利
- ラリー中は遠くのボールにも手が届く
ただし、背が高すぎると足元のボールが取りにくくなったり、俊敏性に欠けたり、足を故障しやすくなったります。
日本の成人男子の平均身長は170cmくらいですから身長面で日本人は不利です。
日本の錦織選手は身長178cmであるため「もう少し身長があれば」と思ったこともあるそう。
ちなみにサーブが強いのにリターンが弱いと、ゲームカウントは6-6タイブレークに入りやすくなります。カルロビッチという選手はこのパターンに入る有名なビッグサーバーでした。
トーナメントで優勝するには、サーブゲームもリターンゲームもできるだけ早く終えるなど1回戦~準々決勝あたりまでは体力を温存することが望ましいです。
テニスを始める時期が遅い:有力な人材が野球やサッカーに流れている
それから日本でテニスは幼い段階では始めにくいです。
幼稚園児~小学生の年齢で遊ぶ球技やスポーツ少年団として活動する競技といえばサッカーか野球かドッジボールが多く、テニスは親がやっていないと始めづらいからです。小学校の体育の授業でもテニスはやらないでしょう。
そのため運動神経のよい子どもは何かとキッカケの多いサッカーか野球かバスケの道にすすむ場合が多いはず。MLBの大谷選手やNBAの八村選手のような能力・体格はとてもうらやましいです。
したがって、日本人がテニスを始めるのは中学~大学あたりが多いわけですが、これでは一流のテニス選手をめざすには遅いと言わざるを得ません。
世界のトップクラスのテニス選手は6歳くらいにテニスを始めた人が多いため、日本も強くなるには幼い段階から多くの子どもたちが始められる環境が必要です。
諸外国の選手が集まって競う環境になっていない
さきほど日本のテニスレベルは世界10位台だとお伝えしましたが、それは国ごとの大まかなランキングにすぎません。
テニスは団体戦よりも個人戦が重視される個人競技ですから、個人として強くなりたいのなら強豪国に修行に行く必要があります。
現代ではアメリカとスペインが若手にとってテニスの二大修行国という感じで世界中から有力な人材が集まって競争しています。
アメリカのテニス競技はアメリカ人だけでなく世界中から有望な人材が集まるところに強みがあります。日本の錦織選手と西岡選手と大坂選手も厳しい環境で競争してきました。
日本にも世界中から若いテニス人材が集まればいいのですが、日本は欧米から遠いこともあってそういう環境には向いていません。
日本の女子選手は日本の男子選手と戦っているだけでもよい練習になりますが、四大大会制覇をめざすような男子選手にとって日本の競技環境はぬるいでしょう。
日本の選手は個性に欠ける
日本人も含めて有名なテニス選手は何らかの強みをもっています。
- フェデラー抜群のタッチセンス(ちょっとしたタッチがスーパーショットになる)
- ナダル強烈なトップスピンとフットワーク
- ジョコビッチ母国の内戦も乗り越えた強靭なメンタルと安定したバックハンド
- 錦織圭強烈なストローク
- 大坂なおみ女性なのに10代のころから200km/hを超えるサーブが打てた
- 松岡修造高身長と強烈なサーブ
- 鈴木貴男現代では珍しいサーブアンドボレーとスライス攻撃
- ロディック典型的なビッグサーバー
- サントーロサーブ以外すべて両手打ち
- サンプラスセカンドサーブがファーストサーブ並みに強い
しかし、最近の日本選手は錦織選手と大坂選手をのぞくとそういった個性的な強みが欠けています。
日本のテニス選手はサーブ、ストローク、ボレー、フットワーク、どれもプロ標準レベルでこなすという感じです。フォームも没個性的な傾向があります。
日本のテニス指導は、どれも平均的にこなせる選手を育てるばかりで強烈な個性を育てようとしないのです。
リスクを背負ってまで海外に行きたがらない
日本にはそれなりに上手いテニス選手はたくさんいます。ここで言うそれなりに上手い選手とは全日本選手権の予選~本戦レベルくらい。
でも、錦織選手や大坂選手のように四大大会で活躍するには肉体面でも精神面でもぶっ飛んだ強さが必要です。
これを身につけるにはアメリカやスペインなどで修行を積まないとほぼ不可能だと思います。
セルビアのジョコビッチが強いのは、内戦を経験して「テニスができるだけでも幸せ」みたいなメンタルをもっているうえにドイツにテニス留学したことが一因としてあります。
日本でそれなりに上手い選手は、全中出場⇒インターハイ常連高校⇒有名私立大学のテニス部にスポーツ推薦⇒実業団チームへ就職、というような安全牌ルートをとりがちです。
これとは対照的に錦織選手は中学生の時点で渡米するというリスクを背負いました。四大大会で活躍するにはそれくらいのリスクや度胸がないと難しいのでしょう。
日本は部活重視で、欧米は私的なスクール重視
日本の中高大の部活はテニスに限らず部としての規律と先輩後輩関係を重視しすぎています。これは伝統的な強豪校にありがち。
確かに、あいさつ、掃除、遅刻しない、髪型、派手に遊ばないなどは重要ですが、神経質なほどにこだわるあまり、肝心の競技そのものを楽しめていないんじゃないかと思います。
欧米選手はテニスの練習や試合では厳しくなっても、そういった規律や人間関係の部分はもっと緩いはずです。
そもそも欧米は学校単位の部活があまりなくて、技能分野は放課後に私的なスクールに通って鍛える体系ですし。
日本の有力な学生選手はテニススクールに通うことを優先して学校の部活に参加しない人もいます。
基本的にテニススクールは規律よりも、合理的に強くなることを重視します。
砂入り人工芝のテニスコートは競技向けではない
また、日本の公営コートに多い砂入り人工芝のテニスコートは競技レベルのプレイヤーの育成に向いていません。
ATPやWTAの大会では砂入り人工芝コートを使うことが認められていないからです。
日本に砂入り人工芝コートが多いのは、水はけがよくて雨上がり後は少しの待ち時間で使える、メンテナンスが楽、さらに足腰への負担がハードコートよりはマシだといった理由です。
しかし、砂入り人工芝のテニスコートがあるのは日本とオーストラリアの一部くらい。さらに砂入り人工芝コートは滑りやすくバウンドがかなり低くなるため、プロレベルのプレイヤーにとっては避けるべきコートだといえます。
プロの主戦場はハードコートやクレーコートであり、ここではバウンドが高くなるため、砂入り人工芝の低い打球にばかり慣れると海外で通用しなくなってしまうのです。
ソフトテニスの存在をどう考えるべきか
最後はソフトテニスの存在について。
日本のテニス界の人材は硬式と軟式に分け隔てられているため、それが硬式として一本化できれば強くなるという説があります。
テニスにおける軟式と硬式の違いは、野球における軟式と硬式の違いよりも大きいです。軟式出身のプロ野球選手はたくさんいますが、軟式出身の硬式プロテニスプレイヤーはほとんどいませんからね。
とくに中学の部活は硬式テニス部よりもソフトテニス部が優勢だったのですが、最近では硬式テニス部が盛り返しつつあります。
まとめ
現代の日本のテニス界は強いとも弱いともいえます。
これまで述べてきた点を改善すればもっと上に行くこともできるでしょう。そうすれば「日本はテニスが強い」という評価に定まります。
日本のテニス界の飛躍を大いに期待します。