私は中学時代の部活動でソフトテニス(軟式テニス)を、高校の部活動では軟式から転向して硬式テニスを経験しています。
ソフトテニスも硬式テニスも最高実績は強豪ひしめく神奈川県大会本戦2~3回戦くらいです。テニスの実績は大したことありませんが、どちらも結構な熱の入れ方でした。
今回は両方の経験者としてとくに若者には硬式テニスとソフトテニスの現実を知っていただき、どちらを選ぶべきかヒントになる記事を提供いたします。
なるべく公平に解説いたしますが、それは中学(あるいは高校)時代の2年ちょっとの間の部活動だけで考えるのではなく、もっと長期の視点で考えるべきです。
まずはテニスの簡単な概要や現実など筆者の意見とはかけ離れた客観的な部分からご覧ください。
硬式テニスとソフトテニスはどっちがいい?
そもそもテニスは西欧でネット越しに1つの球を打ち合う貴族的な遊びから競技として発展しました。
テニス(硬式)の四大大会のなかでも一番の権威があるウィンブルドン選手権(全英オープン)は天然芝のコートで行われます。
テニスといえば世界標準の視点だと「硬式」という言葉を頭につけなくても「硬式テニス」を指すのです。
逆にソフトテニスや軟式テニスは「テニス」の前にソフトか軟式をつけないとわかりません。
ソフトテニスの歴史
このテニスは明治時代に欧米から伝えられたのですが、明治時代ではゴムボールをフェルトで覆った硬式テニスボールを手に入れるのは金銭的にも物質的にも困難でした。
そこで表面にフェルトを貼らない単なる白いゴムボールを通じて日本人はテニスを普及させようとしました。
これがソフトテニス(軟式テニス)です。つまり、ソフトテニスは硬式テニスの代用や模擬として始まったといえます。
ソフトテニスで強くなった日本人選手は、その後、硬式テニスに転向して世界レベルで好成績をあげる人が続出しました。
しかし、それは戦前の話で、現代の日本人でテニスが強い選手は幼少期から硬式を始めて、途中でソフトテニスは経由せず、そのまま硬式の分野でプロになる人がほとんどです。
現代の日本は物質的には戦前よりもだいぶ豊かになりましたので、普通に硬式の道具が手に入ります。そこでは道具の価格差はあまり大きくありません。
ですから、硬式の代用としての軟式テニスは終わったという声もあります。
ソフトテニスと硬式テニスのどっちを選ぶべきか
ここからは筆者の意見が強く出ます。
最終的に硬式テニスを選ぶかソフトテニスを選ぶかはあなたの自由ですが、もしあなたが最終的に硬式テニスでの成功を目標とするのならば最初から硬式をやるべきです。
なぜなら軟式の技術で直接的に通用するのはフォアハンドストロークくらいで、他の技術は通用しにくいからです。
- フォアハンドストローク軟式の技術は硬式でかなり通用する
- バックハンドストローク軟式の技術は硬式であまり通用しない
- サーブ軟式の技術は硬式でほとんど通用しない
- ボレー(フォアもバックも)軟式の技術は硬式であまり通用しない
ソフトテニスのボールはかなり柔らかいだけにフラットで打ってもアウトになりにくいのですが、硬式ボールは硬いため女性や高齢者でも簡単にアウトのボールを打ててしまいます。
そのため、硬式の技術はストロークもサーブも回転を強めにかけてコートに入れることが基本線にあります。
ここで軟式の技術がしみついていると、硬式に転向したときに逆に上達の障害になってしまう場合さえもあります。
プロ野球選手においては「軟式野球硬式野球」という経歴はありふれていますが、現代のプロテニスプレイヤーで軟式経験者がほとんどいないのはそれだけテニスの軟式と硬式は違うからなのです。
軟式ボールは柔らかいので体に当たっても大して痛くありません。
まあ硬式にしても体に当たる頻度はそんなにありませんが。
中学から社会人のテニス状況
軟式にしても硬式にしてもテニスは長い間にわたってプレイできるスポーツです。
こういうスポーツは生涯スポーツと呼ばれます。
そこで若者や初心者に考えていただきたいのは日本の各年代や各所でのテニスの風景です。
それは以下のとおり。
- 中学の部活軟式が優勢だが、硬式が少しずつ追い上げつつある
- 高校の部活硬式が優勢
- 大学のサークル(遊びや交流の一環としてのテニス)硬式が圧倒的に優勢
- 大学の体育会(ガチ勢・競技として真剣にやる人たち)硬式が優勢
- 公園でのテニスの風景(アマチュア社会人のテニス)都市部では圧倒的に硬式プレイヤーが多いが、郊外や田舎に行くと軟式プレイヤーもぼちぼちいる
- 社会人向けのテニス大会硬式は市民戦はもちろん、草トーナメント(私的なトーナメント)も豊富だし、シングルスは1人で参加できるし賞品も出る。軟式の社会人向け大会は一部の市町村での市民戦くらい。
- 壁打ちテニス硬式ボールは大きく跳ね返るが、軟式ボールは大きく跳ね返らないため壁打ちには不向き。そのため壁打ちコートに軟式プレイヤーはほとんどいない(というか軟式ボールを強打して壁に当てるとボールが壊れる)。
- テニスのオフ会硬式が圧倒的に優勢
- テニススクールほとんどが硬式にのみ対応(まれに軟式にも対応するスクールあり)
- 学生時代の未経験者が大人になってからテニスを始める割合硬式の方が圧倒的に多い
- プロレベルのテニスソフトテニスのプロプレイヤーは日本にたった1人だけ
- 世界最高峰の大会硬式は賞金総額55億円のウィンブルドン選手権、軟式は優勝賞金が数十万円程度の大会がほんの少しあるだけ
- 普及地域硬式はアフリカ以外の世界各地に広く普及、軟式はほとんど東アジアだけ
- 日本のスポーツ用品店での売り場面積の比率硬式を5とすると、軟式は1くらい
- テレビ中継やニュース硬式はWOWOWやNHK、テレ東などでたびたび中継されるし全国ニュースでも取り上げられるが、軟式は地方ローカル局で少し中継されるだけ
- 漫画の世界テニス漫画といえば『エースをねらえ!』『テニスの王子様』『ベイビーステップ』。有名作品はいずれも硬式だが、軟式マンガも少しは存在する。
ちなみに私の出身大学では硬式テニスのサークル数は20近くあり、どれも盛り上がっていましたが、ソフトテニスサークルは1つだけでした。こういう総合大学はかなり多いです。中学では軟式が優勢なのに。
次にテニスのオフ会とは、インターネットを通じて「テニスをしませんか」という募集をかけて参加する形態です。
これは東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪など大都市圏で盛んな参加形態でありテニスオフというサイトが有名です。これも99.9%が硬式テニスの参加募集です。
また学生時代はテニスの類を経験していないという人が大人になってからテニスの類を始める場合、硬式を選ぶ人が多いでしょう。
さらにプロレベルでは世界ランクのトップクラスに入れば、硬式テニスは年収数十億円がのぞめるスポーツですが軟式にはそういう夢がありません。
要するに、高校~社会人のテニスでも目立って活躍したいだとか、花形のテニサー(テニスサークル)に入ってみんなの注目を浴びたいという人は硬式を選ぶべきなのです。
中学の段階ではソフトテニス部が結構な勢力をもっており、また大会も盛り上がっているため気づきにくいのですが、高校~社会人では硬式に比べると明らかに劣勢です。
ソフトテニスと硬式テニスの実体験
中学時代の筆者はソフトテニスがとにかく大好きでした。当時の夢はナショナルチームの一員になることだったくらいです。
そのため「ソフトテニスはアジアの一部だけで盛んだから硬式をやった方がいい」という意見には反発していました。今思うと視野がかなり狭かったです。
しかし、高校に進学すると、とくに都市部の高校ではソフトテニス部はなくなり代わりに硬式テニス部が優勢になります。
私が入学した高校、というか私が所属していた公立の学区にはソフトテニス部を設けている公立校はありませんでした。
そのため「この際、硬式テニス部に転向してもいいや。軟式の技術は硬式でも活きるはず」と思うようになっていました。
そして意気揚々と入部した硬式テニス部では、その目論見を見事に崩されました。
フォアハンドストロークは軟式の技術がかなり通用するのですが、他はかなり違うのです。
そのうえ高校の硬式の大会に出ると、小中のころから硬式をやっていた人たちには到底かないませんでした。その中にはのちにプロになった人もいます。
大学でも硬式テニスが上手い人はよい意味で目立ちます。テニスサークルは大学サークルの花形だからです。
それに軟式の主戦場はダブルスなので中学時代の私の相方のようにやる気がないと、一人だけでは活躍できません。
この点、硬式の主戦場はシングルスなので相方は関係なく独力でのし上がることができます。
そこで思ったのです、「こんなことなら最初から硬式テニスをやっていればよかった」と。
ソフトテニスにもシングルスが、硬式テニスにもダブルスはあります。
ただし、そもそもテニスは個人競技。そのためプロの硬式テニス界ではシングルスの方が賞金も注目度も圧倒的に大きいです。
しかし、学生レベルのソフトテニスの大会はダブルスが主体です。
以上は私個人の意見ですが、残念ながら社会のトレンドも硬式に傾いています。
ただ、それでも軟式が好きな人はソフトテニス部に入ればいいと思います。
ちなみに社会人となった筆者は硬式ばかりをプレイしていますが、たまに軟式をやるときもあります。ですから、軟式を嫌っているわけでもありません。
硬式テニスの方がカッコイイ
なお硬式テニスとソフトテニスの両方の経験者に「フォームや道具はどちらがカッコイイ?」と尋ねたら、9割以上の人は「硬式テニスの方がフォームも道具もカッコイイ」というと思います。私も同じ意見です。
なんでこんな差がつくかといえば、硬式テニスの模範的なサーブはコンチネンタルグリップで腕や腰をひねらせて全身で打ちますが、ソフトテニスのグリップはウェスタン~イースタンであり全身で打つ感じではないからです。
これはYouTubeでソフトテニスの全国大会とフェデラーのサーブフォームを見比べればすぐにわかります。
用具やウェアについて硬式は、ウィルソンやバボラ、ヘッド、ナイキといった欧米の一流メーカーが多数参入しています。
全米オープンの大観衆の前でナイキ(後年はユニクロ)の黒いテニスウェアに身を包んだフェデラーはかっこよかったです。
一方、軟式はミズノやヨネックス、ゴーセンなど日本企業ばかり。正直言ってデザインについては欧米メーカーに負けています。
フォームだけでなくデザインに優れた欧米メーカーが参入しているかもかっこよさに影響しているのです。
ソフトテニスをディスっているわけではありませんし、スポーツは格好でやるものではありませんが、そういう意見があることも知っておいた方がいいですよ。