社会・教育

将棋のタイトル戦の真の序列【それって建前では?】

2020年7月23日

マスタードラゴン

将棋の8大タイトルの序列は上から順に、竜王、名人、叡王、王位、王座、棋王、王将、棋聖となっています。

日本将棋連盟のタイトル戦序列

画像の出典:日本将棋連盟

それは日本将棋連盟の公式サイトを見ても明らか。

ぶっちゃけ「8大タイトルの序列=契約金・賞金額の多さ順」みたいなものです。

しかし、竜王と名人の序列には将棋界の建前と歴史と忖度が含まれています。

将棋のタイトル名って「王」だらけだな。もう少しタイトル名の「王」が重複しない方がいいのに。

将棋のタイトル戦の序列は竜王と名人が別格に高く、あとの6タイトルの序列はどんぐりの背比べみたいなもの。

6タイトルについては序列が変動したこともありました。

参考:将棋のタイトル戦一覧

タイトル戦名と
読み方
優勝賞金主催者本戦の方式と
挑戦者の条件
予選の方式タイトル戦の持ち時間番勝負数時期プロ以外の参加枠
竜王戦
りゅうおうせん
4400万円読売新聞社変則トーナメントの優勝者組別トーナメント2日制8時間710~12月あり
名人戦
めいじんせん
推定2200万円朝日新聞社
毎日新聞社
A級順位戦の1位順位戦(リーグ戦)2日制9時間74~6月なし
叡王戦
えいおうせん
推定1800万円dwangoトーナメントの優勝者段位別トーナメント1日制選択式73~5月あり
王位戦
おういせん
推定1200万円新聞三社連合リーグ戦の1位トーナメント2日制8時間77~9月あり
王座戦
おうざせん
推定900万円日本経済新聞社トーナメントの優勝者トーナメント1日制5時間59~10月あり
棋王戦
きおうせん
推定700万円共同通信社トーナメントの優勝者トーナメント1日制4時間52~3月あり
王将戦
おうしょうせん
推定600万円スポニチ
毎日新聞社
リーグ戦の1位トーナメント2日制8時間71~3月なし
棋聖戦
きせいせん
推定400万円産経新聞社トーナメントの優勝者トーナメント1日制4時間56~7月あり

※棋士への報酬は賞金のほかに対局料や景品もあります。賞金や対局料は非公開部分も多いです。

※棋士は解説、指導、出版、講演といった手段から副収入も得ています。

※プロ以外の参加枠とは女流棋士やアマチュアのトップクラスが参加できるかということです。

※上位の棋士はシード権をもっています。

※本戦がトーナメント方式だと決勝戦(=挑戦者決定戦)は番勝負になる棋戦もあります。

将棋のタイトル戦の序列【名前の順番へのこだわり】

そもそも人間、とくに日本人は名前の前後や上下関係にこだわります。

2002FIFAワールドカップ

上の画像はgoogleで「FIFA World Cup Korea/Japan」と検索したときの結果。FIFA公式サイトのタイトルです。

たとえば2002年の共催ワールドカップは日本では通称としては「日韓ワールドカップ」と呼ばれています。

しかし、韓国では「韓日ワールドカップ」、FIFA公式サイトでは「FIFA World Cup Korea/Japan」と呼ばれています。

たぶん、今でも日本人の多くは「FIFA World Cup Japan/Korea」と呼ばれたいと考えているでしょう。自分側の名前が前になるか後になるかは大きな問題なのです。

実際、2002年のときも激しい論争があって、最大の目玉である決勝戦を日本で行う代わりに「Korea/Japan」にすべきという意見もありました。

最終的に日本語では国名を入れず「2002 FIFAワールドカップ」が日本国内での正式名称となりました。

名前の前後ってお金の問題というよりプライドの問題だよね。

日韓ワールドカップの経緯は置いておくとして、日本人は上下関係をすごく気にします。

これと同じ発想が将棋界にもあって、竜王戦(読売新聞社主催)は棋戦の中で最もお金を出してもらっている以上、竜王戦の名前は棋戦の一番上にしなければならないという考え方があります。

ついでにいうと日本将棋連盟の棋士データベースにおいては「棋士の掲載順=棋士の席次」を表しています。つまり、左上に掲載されている棋士ほど序列が上だということ。
将棋界ではタイトル戦のときの昼食でさえも挑戦者や記録係はタイトルホルダーよりも安いものを頼まないといけないというような上下関係(慣例)もあるよ。
年収の高いタイトルホルダーだって安くて質素な料理を食べたいときもあるだろうに。
タイトル戦は目立つしスポンサーがついているから、とくにタイトルホルダーは王者らしく高い料理を堂々と注文すべきという論調も強い。
食事まで興行を意識しなければならないのは興味深い。

将棋は日本の伝統だけあってタイトル戦は上座と下座にもこだわります。

しかし、どちらが上座に相応しいか迷うパターンもあって、こういう場合ちょっとした事件になったり譲り合いになることもあります。

名人戦は順位戦と一体的で重みがある

さて、名目的には竜王戦が最上位の棋戦だとしても棋士の心情としては名人戦こそが最上位といえなくもありません。

というのも、名人戦はフリークラス以外の全棋士を5段階のクラスに分けた1年間にわたるリーグ戦(=順位戦)のうち、最上位リーグであるA級の1位が挑戦者となります。

名人戦と順位戦はワンセットなのです。

順位戦ではクラスごとに棋士にとって基本給といえるような対局料も出るよ。
名人戦の予選ともいえる順位戦は「順位戦」と呼ばれるだけあって、その所属クラスはプロ棋士の格付けに近いものがある。

竜王戦は組ごとに、順位戦はA級~C級2組までのカテゴリごとに対局します。

竜王戦の所属組は他棋戦に影響しませんが、順位戦の所属級が高いと他棋戦ではシードされます。この違いは結構大きいです。

名人戦は一発屋的なチャンスがない

A級以外の順位戦においては毎年上位2~3名が昇級し、下位2~3名が降級となります(C級2組からの降級だけは特殊)。

当然、上の組へ行くほど人数は少ないです。

C級2組から規定の降級点をとってしまうと、あるいはフリークラスを宣言すると、フリークラスに入ります。フリークラス棋士は、棋士の最も基本的な棋戦といえる順位戦に参加することができません。

フリークラス棋士は規定にあてはまると強制引退となります。

藤井聡太四段(プロ入り当初の段位)のような天才棋士でもプロに入りたてはC級2組からスタートになります。

すなわち、プロ入りから名人戦の挑戦者になるまでは最短でも5年はかかるということ。挑戦者になるのでさえもここまで時間がかかるプロ競技は珍しいです。

しかし、竜王戦は変則トーナメントであるため、プロ1年目の棋士でも挑戦者になることができます。

竜王戦は女流棋士やアマチュアプレイヤーでも勝ち抜けば挑戦者になることできるという夢があります。

ただ、竜王戦は全棋士参加のトーナメント戦ですから一発屋的なチャンスがある一方で、名人戦は一発屋的なチャンスがまるでありません。

また竜王戦は前身の棋戦を踏まえて考えると1948年から始まりましたが、名人戦は1600年代からの長~い伝統がございます。

名人に挑戦すること、そして名人位をとることはそれだけ重みがあるのです。

一般に将棋界では持ち時間の長い棋戦の方が権威があります。持ち時間はそれなりに長い方が棋士の真の強さを計れるからです。
竜王戦と名人戦・順位戦は持ち時間も6時間と長いよ。
名人戦の予選ともいえる順位戦は持ち時間が6時間。1日制のタイトル戦よりも長い。
順位戦は毎年6月~翌年3月に行われるなど期間も長い。

名人戦の別格感は強い

8大タイトルの中で竜王と名人は別格。アマチュアへの免状の文末だって会長と名人と竜王の直筆署名が入る。
昔の名人は世襲制で、近代になってから名人は実力制となったよ。

将棋のタイトルは連続在位や通算5~10期のタイトル獲得によって「永世」を名乗ることができます。

しかし、実力制名人位を初めて獲得したときは「実力制第●代名人」という称号を得ることができます。名人位は1期だけでも別格なのです。

画像の出典:日本将棋連盟

昇段条件についても九段は、竜王位2期獲得か、名人位1期獲得か、その他タイトル3期獲得か、八段昇後公式戦250勝となっています。

名人位は1期獲得だけで九段へ昇段することからわかるように別格だということがわかるはずです。

将棋に本気で取り組んでいる子どもは「将来は名人になりたい」と意思表示しやすい。検索エンジンの結果でも「竜王になりたい」より圧倒的に多いよ。
名人戦への挑戦経験がなくてもA級順位戦に在籍した経験があったら「元A級棋士」と呼ばれるなど尊敬されるからね。
A級棋士はサッカーでいうJ1のベストイレブン、名人位や名人挑戦者は最優秀選手賞くらいの称号感がある。
各国のプロサッカーでは天皇杯みたいなトーナメント戦よりも1部リーグを制覇した方が権威がある。将棋でいう竜王戦と名人戦の関係も似たようもの。

つまり、竜王戦の方が賞金額としての序列は上だとしても、名人戦はリーグ式の順位戦を勝ち抜くための長い時間と伝統の重みと称号の別格感がある以上、棋士の本音としての序列は名人戦が上だということです。

弱小アマチュアの私でさえこんな意識をもっていますから、当のプロ棋士だって内心では名人戦の方が上だと思っているはずです。

まあ棋士は最も多い賞金を出してもらっている建前としては竜王戦こそが最上位の棋戦だといわないといけないわけですが。

将棋の駒にたとえると竜王戦は成金のよう。つまり、竜王戦は大金で序列1位を獲得した感じなのだ。でも、名人戦はお金では買えない伝統があるから別格感が強い。
やや保守派の読売新聞主催の竜王戦には伝統がちょっと欠けていて、革新派である朝日新聞・毎日新聞主催の名人戦は伝統があるなんて面白い。
世襲時代の名人位と今の名人位とでは選ばれ方がまるで違うから、制度が切り替わったところで断絶があるともいえるけどね。主催者・スポンサーだって変わっている。

名人戦も賞金・対局料は2番手なので高い方です。

また優勝者の賞金・対局料は竜王戦の方が高いとしても、下位のプレイヤーにとっては順位戦の方が高いかもしれません。

ある有名棋士の建前

前にテレビのドキュメンタリー番組である有名棋士が「新聞は全部で7紙をとっている」といっていました。これは将棋会館として契約している数字ではなく私邸で私的にとっている数字です。

全国紙には将棋の棋譜や将棋講座が載っていますから、将棋の勉強のために7紙もとるのはありえなくもありません。

しかし、そのドキュメンタリー番組が放映されたときはすでにインターネットが普及していた時代です。

周知のようにインターネットを適当に検索すれば棋譜は大量に見つかります。

こういう時代では新聞を参考にするよりも画面で棋譜を動かして見た方が手っ取り早いに決まっています。新聞の将棋欄は小さいし、新聞の将棋講座はアマチュア向けですし。

それでも個人として新聞を7紙もとるのは、棋戦の大スポンサー様である新聞社の顔を立てているからでしょう。

将棋は日本の伝統文化、そしてお世話になっている人の前では建前を示すことも日本の伝統なのです…。

新聞をとる・とらないは私的な選択だけど、仕事上の忖度が私生活にも及んでいるな…。新聞なんて押し紙まみれで斜陽産業の筆頭なのに。
八大タイトルの中にはスポンサーの経営危機によって存続が怪しい棋戦もあるよ。
プロ棋士としても廃止になっちゃう棋戦より、ずっと存続する棋戦にこそ自分の名前を残したいだろう。
インテリの女性
参考将棋の女流棋士は差別ではなく逆差別だ

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