大手の銀行や商社といえば就活生から人気があり、また高給で世間体もよい就職先として知られています。
とくに大手の銀行は新卒を多めに採る傾向があります。
しかしというか当然というべきか、こういった企業は入社時の採用区分や20代の実績によって20代後半には出世コースに乗れるかどうかが決まっています。
そのため、社員の多くには出向や転籍が待ち受けています。今回はこちらについて解説します。
なぜ銀行員や商社マンは出向するのか:ピラミッド型組織
そもそも上の画像のように一般に会社はピラミッド型の形状をしています。つまり、組織の上に行くほど担当する人数が少ないのです。
そのため、人数を多めに抱える大手企業でそれなりの年齢になっても出世コースに乗れていない人は取引先やグループ会社への出向や転籍が迫られるのです。
出向とは業務命令によって自分の所属する企業以外の企業や役所で働くこと。
転籍とは現在所属する企業との雇用関係を終わらせて、新たに別の企業や役所に雇われること。
一般に出向や転籍においては年収が下がる傾向にあります。それは銀行にとっては人件費の削減を意味するので合理的ですが、出向させられる側にとっては左遷や島流しなどネガティブにとらえられがちです。
しかし、出向や転籍は社員を外部でスキルアップさせるために行われる場合もあります。
とくに出向先が大きな企業や官庁でしたら本体から期待されているといえます。
そこでは企業の融資や資金調達などを担当することで成長できるはず。また取引先との仲も深まります。
本体とグループ会社・取引先との関係
一般に大手企業の本体には優秀な人物が新卒採用されるものです。
大手企業は離職率が低いですし優れた人材が多いため、中途採用も少ない傾向があります(=新卒の人材だけで会社はまわる)。
しかし、大企業は新卒の人材すべてを本体で雇用し続けられず、また自社系列以外の会社に放り出すのももったいないので関連会社へ出向・転籍させるわけです。
また銀行の取引先企業が銀行の人材を受け入れると、資金繰りに関してその銀行からはそう簡単に見捨てられません。
人材の受け入れ先企業としては「銀行の人材を受け入れてやったんだからウチが経営危機に陥っても銀行はそう簡単に見捨てないはず」と考えるのです。
そのため、銀行から出向してきた人材に支払う給料は高めだとしても受け入れるだけの価値があります。
銀行や商社に限らず新卒時に本体の総合職に有能な人材をたくさん集めて、彼らが30代~40代に達したらグループ会社の管理職や幹部に異動させることは日本企業によく見られます。
つまり、新卒時において本体の会社は優秀な人材を集める装置として機能し、やがてそれを身内に振り分けるわけです。
2020年ではANA(全日空)の社員がいろんな方面に出向しています。
社員を整理解雇してしまうと航空需要が戻ったときに人材が少なくて大変ですが、出向させておけば航空需要が戻ったときにまた活躍してもらいやすいからです。
ANAの社員は優秀であるため人材不足の業界はありがたがっているのかも。
日本社会の制度や慣行は陰湿
出向においては「ウチより規模が大きな企業から出向してきたのなら優秀だよね」という周りからの期待やプレッシャーを必要以上に感じたりします。
人間はネガティブにつきまとわれながら仕事をすると、失敗を避けるばかりで大きな成果を出せなかったりします。
こういう陰湿なやり方は日本経済にプラスになっているのでしょうか。
銀行の今後
最近の銀行業務はオンライン化と自動化がすすんでおり、支店の数も減っています。これによって社員が余ってきているのです。
余剰社員や銀行の将来に明るさを見出せなくなった社員のなかには、出向や転籍という命令ではなく自主的に早い段階で銀行から転職する人も増えています。
そう考えると、銀行に残っている人よりも銀行を辞めていく人の方が有能なのかもしれません。
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