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社会・教育

振り込め詐欺はなぜなくならない?【なくなったら日本が変わった証拠】

2019年10月28日

振り込め詐欺が世に明るみになってから20年近く経っています。

その報道や防止キャンペーンも各所でたびたび行われているにもかかわらず、なぜ振り込め詐欺はなくならないのでしょうか。

その原因、とくに日本社会に特有の事情を探ってみます。

なぜ振り込め詐欺はなくならない?:1.肩書きへの弱さ

昨今の振り込め詐欺で詐欺師は、銀行員、弁護士、役所、警察官といった日本社会では権威がある職業や所属組織を名乗りやすいです。

彼らの権威は昔よりは下がっていますが、それでも高齢者を中心にそれなりの権威は保っているため、口頭でちょっと名乗られただけでも信用してしまう人がいるのでしょう。

日本人は肩書きに弱いとよくいわれるゆえんです。

2.身内がお金に困ると何度か温情をかけるのが当たり前

日本人は身内がお金に困ると数回は助ける傾向があります。

身近なところでいうと、子どもが結婚して家を買うときに親が頭金を援助する場合が挙げられます。

企業レベルで見ても、系列会社が不祥事や業績不振などによって窮地に立たされると、そのグループ会社が助ける展開がよく見られます。

それと同じように、孫や子どもを名乗る者から「事故を起こしてお金が必要になった」「会社に損失を与えてしまってお金が必要になった」などと声をかけられると、「身内である私が助けなくちゃ」と思ってしまうのでしょう。

この点、自己責任が強調される社会では、たとえば自分の子どもがやらかしたことでも、子どもがある程度の年齢に達すれば、子ども自身が責任をとります。

3.羞恥心の作用

振り込め詐欺は今も年間数百億円の被害額を出しています。

しかし、これは被害届に基づくものであって実際の総額はもっと多いといわれています。

なぜなら、詐欺に遭った経験というのは日本社会では「情けない」「」と見られるからです。

こういった社会規範のもとでは被害届はもちろん、身内にも相談しにくくなりますし、全体の危機感や対策も弱まってしまいます。

投資でも人間はうまくいったときは周りに吹聴する一方で、ヘマをやらかしたときには黙っている傾向があるよ。
勝ったときの印象は強いし他人にも話したいけど、負けたことは思い出したくないし、ましてや他人には話したくないってことだね。

また、たとえば「会社に損害を与え関係者に迷惑をかけたからお金をすぐに支払え。そうすればクビは勘弁してやる」と脅されたら、解雇や他者への迷惑行為は日本では痛苦なコトと見なされやすいだけに、お金の支払いはすぐに必要だと考えてしまいがちです。

4.手元や預金口座にある程度の現金がある

アメリカ人のように投資を積極的に行っていると手元に置いてある預金・現金は少なく、資産の大半がすぐに現金化できない株式にまわっていることも珍しくありません。これでは振り込むお金がありません。

一方、日本人は高齢者を中心に預金・タンス預金を好む傾向があり、すぐにお金を振り込むことができる体制が整っています。

5.日本社会は海外よりはまだ平和

日本は諸外国に比べると、まだ平和な国です。

これは女性が夜道を一人で歩けることや犯罪統計などを見ても明らかです。

このように「いい人」が圧倒的に多いと、他人を疑う作法が身につかなかったり、いざ悪い人に出会ったときに正常な判断を下せなくなるのかもしれません。

やり手の詐欺師であからさまに怪しい奴は少ない。詐欺師は第一印象をクリアーして他人とスムーズに会話するところまで行きつかないと詐欺におよべないからだ。

6.詐欺師はターゲットに正常な判断をさせない

振り込め詐欺の被害者の多くは「まさか自分が引っかかるとは思っていなかった」と話すそうです。

とくに振り込め詐欺の多くは「〇時までに入金してもらわないと困る」などといって対象者を慌てさせます。こういうときは正常な判断をしにくくなります。

こうした場合、できる限り頼れる第三者や警察に相談して冷静さを取り戻しましょう。

とくに最近では詐欺の手口も進歩しています。

その典型が多くの人間が出演する劇場型と呼ばれるパターンです。

ここでは訓練された複数の人間が役割を分担してお金の支払いを煽ります。

もし、たとえば警察を名乗る者から疑わしい電話があったら、リダイヤルや指定された電話番号にかけ直すのではなく、警察署の正式な固定電話の番号を調べてそこに直接かければ真偽がわかるでしょう。

詐欺師は「前の番号は変わった」「これから会議なので電話しないで」などと言って本人に確認されないようにしてきますので、本人や公的機関に正式な直接ルートで確認する必要があるのです。

詐欺師は声を録音されるのを嫌う。だから最近では着信時に発信者に対して「この通話は詐欺防止のために録音しています」と流して録音する機能もあるよ。

電話では声が似ていたり本人の事情に詳しくても、あまりあてになりません。

このとき、もし声が普段と違っていても犯人は「風邪をひいている」「気が動転して泣いているから」などといってウソをついている可能性があります。

それに犯人は事前調査で対象者についてある程度のことは知っている可能性があります。

また詐欺師は電話だけだと怪しく、すぐに現金を受け取ることができないので直接会おうとします。

実際には会う寸前に「急用ができた」などといって代理人が受け取りに来るわけですが、それまでに直接会う約束をしていると代理人を疑わない場合もあります。

最近では犯行グループは事前に公務員を装って個人情報を得たり、過去に訪問販売や悪徳商売にあった人を「騙しやすい人間」として名簿にして詐欺の成功率を上げるそうです。

これがいわゆるカモリストというやつです。

7.犯行グループは高齢者から資産を奪うことに抵抗がない

日本人の金融資産は高齢者に偏っていることが統計上わかっています。

だからといって犯罪が肯定されるわけでは決してありませんが、一部の若者や悪徳業者は金持ちの高齢者から資産を奪うことに罪悪感をもっていないため、犯行を繰り返すのでしょう。

最近では振り込め詐欺の電話拠点は海外にある場合も多いとのこと。海外から電話をかけると罪悪感が薄れるのかも。
まとめ.日本社会と振り込め詐欺
  1. 権威や肩書きに弱い
  2. 身内がお金に困ると何度か温情をかけるのが当たり前
  3. 羞恥心の作用
  4. 手元や預金口座にある程度の現金がある
  5. 日本社会は海外よりはまだ平和
  6. 手口の巧妙化
  7. 犯行グループは高齢者から資産を奪うことに抵抗がない

こうして見ると、振り込め詐欺は日本人の性質に沿った犯行であることがよくわかります。

そこにはよくも悪くも日本人らしさが表れています。

ですから、もし振り込め詐欺が大幅に少なくなったら、そのときには日本人・日本社会が大きく変わったといえるかもしれません。

現在では振り込め詐欺救済法という法律があって、状況次第では被害金額を取り戻すことができます。
何か怪しいことがあったら1人で迷わず、警察への相談窓口である「#9110」に電話をかけてみるべき。

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