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社会・教育

進歩主義とは?【問題点や批判も交えて解説】

2020年11月22日

進歩主義とは、社会の矛盾や悪いところは時代を経るにつれて改善されてきた(改善すべき)と見なす思想、または社会の矛盾や悪いところを改善しようとする思想のこと。

進歩主義者は進歩をとても尊重します。

進歩主義と近い意味の言葉に進歩史観があります。進歩史観とは、進歩主義に沿った歴史の見方だとお考えください。

進歩主義と進歩史観は左翼の大好物です。

以上の説明だけだとよくわからないと思うので以下にわかりやすく解説していきます。

進歩主義とは?【問題点や批判

進歩主義者(左翼や古い知識人に多い)は進歩の対義語としてよく「逆行」という言葉を使います。

この「逆行」について歴史と合わせて理解すると「進歩」の意味もよくわかります。

それは次のとおり。

たとえば、江戸時代の日本では今よりも刑罰が厳しいものでした。そこでは斬首刑や火刑(火あぶり)といった刑罰がありました。

しかし、そこから時代を経るにつれて残虐な刑罰は少なくなりました。

現代の日本で残虐といえるかもしれない刑罰は死刑としての絞首刑くらい。

これに関してもし現代の日本で刑罰について大改革が行われて全体的に厳しくなるとしたら、進歩主義者は「そんなのは逆行だ!」と批判するはずです。

進歩主義者は、江戸時代では厳しかった刑罰が次第に和らいで人権重視の刑罰となったことを進歩と見なして尊重しているからです。

進歩主義者が好きな歴史観は、江戸時代は厳しい刑罰⇒現代はそれより和らいだ刑罰⇒そして将来はもっと和らいだ刑罰、という流れ。

進歩主義者が嫌がる歴史観は、江戸時代は厳しい刑罰⇒現代はそれより和らいだ刑罰⇒そして将来は逆に厳しい刑罰、という流れ。

進歩主義者は「江戸時代から現代にかけて刑罰は和らいだのに、将来的に厳罰化したら時代に逆行しているから不愉快」と考えるのです。

左翼が過去の遺物を保守したがるのはこういった進歩主義が原因。

進歩主義の問題点:歴史を単純化するのはよくない

進歩主義は合理的に見えるのですが結構な問題もあります。

そもそも江戸時代の刑罰が厳しかったのは、当時の科学水準が低かったからです。

江戸時代では指紋照合や監視カメラといった技術がなかったため、真犯人を見つけるのが大変でした。

間違えて犯人ではない人を斬首刑にしてしまったことも何回もあるでしょう(=冤罪)。そして斬首刑にした首は市中に晒していました。

このように刑罰が厳しいと庶民としては「犯罪をやらかすとこんな恐ろしい刑罰に処されから犯罪には手を出さないようにしなくちゃ」と思うようになります。

つまり、江戸時代の刑罰が厳しかったのは民衆に対する威嚇効果が大きいからなのです。冤罪の可能性が大きかったしても、それでも厳しく罰しないと犯罪を防げなかったのです。

しかし、江戸時代の歴史を語る人の中には、そういった当時の世情を考慮せず「江戸時代は野蛮だった」と決めつける人もいます。これは偏った見方だといえます。

進歩主義に沿った刑罰は軽くなりがち

一方、現代は科学も教育も法律も水準が上がりましたから、冤罪の可能性は大きく下がりました。

しかし、そうはいっても重い罪をしでかした人は現代にもいます。そういった人たちについて罰が軽いのでは被害者は納得がいかないでしょう。

つまり、進歩主義的な発想だと犯人への刑罰は軽くなってしまいがちなのです。これは問題だといえます。

また江戸時代~現代において大まかに見ると刑罰は軽くなったとはいっても、細かいところを見ると厳罰化された分野もあります。

日本で有名なのは交通事故に対する刑罰強化でしょう。

というのも昭和の時代は「交通戦争」と呼ばれるほどに交通事故が頻発しており、加害者への刑罰も甘いものでした。しかし、2001年からは厳罰化の方向に切り替わりました(今の刑罰水準でもヌルいといわれますが)。

つまり、進歩史観に沿うと歴史を単純化して見てしまうことにもなるのです。

解雇は厳しい方が幸せ?

また進歩主義者は雇用の進歩と逆行についても敏感です。

大まかに言うと、戦前の日本の解雇規制は全般的に緩かったのですが、戦後の解雇規制は厳しくなりました。

現代の日本では非正規雇用の解雇規制は緩い一方で、正社員の解雇規制は厳しいという形になっています。

これに関して進歩主義者は解雇規制が厳しくなったのは進歩であり、それは善だと考えるため、現代で解雇規制を緩めたら逆行と見なします。

そのため進歩主義者は解雇規制の緩和に猛反対します。

しかし、解雇規制が厳しいという状態はみんなにとって幸せであるとは限りません。

そもそも、採用はされやすく、解雇はされにくいのがみんなの理想です。

しかし現実には「採用はされやすいし解雇もされやすい」あるいは「採用されにくいし解雇もされにくい」のどちらかに至るのが普通であり、日本の正社員は後者の体系です。

つまり、日本企業は正社員を解雇しにくいため採用にも慎重になっているのです。

採用に慎重な日本企業は人員不足であっても「正社員は過剰に雇いたくないから、既存の正社員に長時間労働してもらおう」と考えています。

正社員の側としても「転職したいけど他社では採用されにくいから、この会社にとどまるしかない」と考えています。これでは有力な新産業に人材が流れにくいです。

あるいは新卒学生としても、前の世代の中に辞める人がいないと自分たちが入社できる定数が少なくなります。

果たして解雇規制が厳しいことはみんなを幸せにしているのでしょうか。これも進歩主義の問題点の一つです。

進歩史観においては資本主義⇒社会主義⇒共産主義に至ることが理想だが、社会主義および共産主義にもとづいた国家はほとんど崩壊した。

自衛隊は実質的には軍隊か

最後は軍事力について。

戦前の日本には軍隊がいましたが、現在の日本では一応いません。左翼はこれも進歩と見なしています。

そのため進歩主義者は憲法9条の改正とともに自衛隊を軍隊として改変することに猛反対しているのです。

しかし、自衛隊は法的には軍隊ではないとしても実質的には軍隊だという指摘はとても多いです。このような捻じれは現代の日本の安保法制の根本的な問題点になっています。

その意味では日本から軍隊がいなくなったとはいえません。

日本人が自衛隊のような組織も含めて完全に軍事力を廃止できる日は来るのでしょうか。

もし軍事力を完全に廃止できないのなら軍事力の存在を真っ向から認めるしかないでしょう。

まとめ

若い頃の筆者は進歩主義的な考え方をしていました。

しかし、冷静に考えると「進歩」には疑わしい面があるという点がおわかりいただけでしょう。

保守・右翼にも疑わしい面はあるように、進歩主義にも疑わしい面は結構あるのです。

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