昨今の日本社会でかなり嫌われる行為として転売があります。
法制面でもチケット不正転売禁止法が施行されました。
しかし、日本で転売は全面的に禁じられているわけでもないように認める余地もあります。
嫌われる転売・禁止される転売と、許される転売とではどのような違いがあるのでしょうか。私自身の経験も交えながらわかりやすくお話いたします
転売はなぜ嫌われるのか
10年以上前、私はあるゲームソフトを買って何十時間か遊びました。
しかし、その数年後に私は飽きたうえに、そのソフトにはプレミアが少しついたこともあって買ったときの1.3倍ほどの価格で売りました。
これは中古品の買取であり、また一種の転売ですが、この転売を嫌がる人はかなり少ないと思います。
なぜなら、
- 10年前の時点では転売目的に買ったのではない
- 購入本数は1本だけ
- 自分で楽しんでいた期間も長かった
- 利益は暴利ではない
- ゲームソフトみたいな娯楽品の転売は迷惑がかかりにくい
- その商品について緊急事態が発生していない
という条件がそろっていたからです。
つまり、今回のパターンは不用品を買い取ってもらった際に、たまたま高めの値段がついたというだけなので嫌われにくいといえます。
実際、こういうパターンの禁止は日本では大して規制されていません。
嫌われるパターンとしての転売
それは裏を返せば、
- 最初から転売目的で買う
- 買い占める
- 自分は使わない
- 利益率が高すぎる(定価の数倍もの価格で転売)
- 生活必需品
- その商品について生命を左右するような緊急事態が発生している
という条件がそろうほど転売は嫌われ、禁止・規制の度合いも上がるのです。
生活必需品とは最近の例でいうと肺炎感染防止のためのマスクや消毒液があてはまります。
たとえば、肺炎の流行期間が3か月間あるとすると、1人あたり70枚くらいは使い捨てのマスクが欲しいところです。
しかし、1人で1万枚のマスクを買うなど一部の人間が量販店やネット通販の商品棚をすっからかんにしたとします。
そして、その購入者(転売ヤー)はマスクを使わず数倍の価格で転売したら、転売ヤー以外の大多数は「マスクみたいな生活必需品はみんなに均等に行きわたるようにすべきでしょ!」と怒るでしょう。
とくにマスクは医療関係者に行きわたってほしいところです。
そういう社会全体の空気が読めず、個人的な営利をもとめることにこそ転売が嫌われる理由があります。
ちなみに最近では医療従事者でさえも中にはマスクを多めに持ち帰る人がいるようです(転売目的?)。
私の病院でも起こった事を書きます。
マスクが2000枚行方不明です。
そのため医療従事者のマスクが残り3週間しか持たないので、マスクは一日に1人1枚と制限されています。
病院のマスクは患者と医療従事者を守るためにあります。
マスクが何処にも無いのは分かりますが持っていくのはやめてください。— 冬月ナオミ💉 (@naomi11220) February 9, 2020
マスクの買い占めは社会全体にも悪影響をおよぼす
マスクが偏在していると、マスクがみんなに均等に行きわたったときよりも肺炎感染者は増えるため、社会全体の経済も不活発になります。
つまり、マスクの買い占めと転売は一個人の利益を超えて社会全体の不利益につながるため、嫌われやすいのです。
ここにマスクが転売禁止になるだけの理由があります。
合法の転売は裁けない
ここで重要なのは、2020年3月14日まではマスクの転売は違法ではなかったということです。
そのため、その時期までの転売ヤー以外の市民としては「不道徳な転売ヤーを法律で裁けないなんて理不尽」と思い、余計に憎んでしまったわけです。
転売は自由だといってもマネしにくい
また転売ヤーの中には「転売は自由と自己責任にもとづく行為。転売ヤーは失敗のリスクも背負っているから、文句があるなら自分もやれば?」と主張する人もいます。
確かに転売は自由と自己責任で行うことができますし、リスクもあります。
しかし、転売ヤーは転売市場を日夜研究しており「この商品は転売すれば儲かる!」と思ったら爆速で買い占めて、さっさと売り抜けます。
おもちゃの転売ならそんなに売り急ぐ必要はありませんが、マスクの転売は感染症の流行期間が限られている以上それなりに急ぐ必要があります。
昨今ではマスクの転売が政府やオークションサイトの運営会社から禁じられる傾向もあるため余計急ぐ必要があります。
また平日、マスクを買うためにお店の情報を検索しまくったり開店前のお店に並ぶことは、平日に企業に勤めている人には無理があります。
こういう転売専門の小賢しい情報収集と行動力は普段、企業で忙しく働いている人にはマネしにくいため、ストレスをもつところでしょう。
転売はほとんど虚業
転売が嫌われやすい理由の最後は「転売は虚業であり、日本人はとくに虚業を嫌う」という理由です。
たとえば、食品メーカーが原料を輸入して自社工場で冷凍食品をつくり卸売に流通させ利益をあげても文句をいう日本人はほとんどいないでしょう。
原料を輸入して食品に仕立てるのは結構な手間がかかりますし、食品は人間が生きることに役立つからです。つまり、原料を食品に変えることには価値があるという総意があるわけです。
しかし、マスクの転売のように500円で売っていたものを5000円で売っても、転売ヤーの利益とマスクの市場価格がつり上がるだけで、大多数の人間にとっては害の方が大きいです。
とくに日本人は製造業や小売業を好みますが、金融業、マスコミ、商社、経営コンサルみたいな虚業を嫌う傾向にあります。
上場企業レベルの虚業だと社会に必要不可欠ですが、個人レベルの妙な虚業だと不要感の方が高いでしょう。
そのため、転売を嫌う度合いも強いのだと思います。
ちなみにサルも不公平や利己性を嫌うことが実験でわかっています。
動物園のサルの餌に格差をつけたとき、少ない側のサルは周りを見て不満の態度を示すからです。
まとめ
- 最初から転売目的で買う
- 自分は使わない
- 生活必需品を買い占める
- 買い占めが社会全体にも悪影響をおよぼす
- 悪質な転売なのに法律で裁けない
- 転売ヤーが小賢しい情報力と行動力をもっている
- 虚業感がある
これまで見てきたように転売は以上の条件が重なったときほど嫌われる度合いが大きいです。
逆にいうと以上の条件がそろわないほど転売は嫌われません。交通費や手間賃を考えると定価より少し高いくらいなら問題なかったりもします。
転売はすべてがいけないわけではないので、小売店やチケット取扱者には売り方を工夫してほしいところです。