東京~大阪の料金比較(新幹線は東京~新大阪、バスは新宿~梅田、飛行機は羽田~伊丹)
安いタイプの合計料金 | 高いタイプの合計料金 | 乗っている時間 | |
新幹線:のぞみ | 自由席:計13900円、早特=計11200円 | グリーン席だと計19600円 | 2時間30分 |
新幹線:こだま | ぷらっとこだま(普通車指定席): 計10800円 |
グリーン席だと計19300円 | 4時間 |
高速バス | 深夜帯の最安1500円 | 昼行で高めの便だと7000円、 個室バスで20000円 |
9時間 |
飛行機 | LCC(格安航空会社)の最安便7000円 | JALやANAの普通席では12000円~26000円が目安 | 1時間15分 |
新幹線のぞみの自由席は、運賃8900円+新幹線の自由席料金5000円=13900円という計算です(四捨五入)。
ちなみにLCCは大都市から遠い成田空港と関西国際空港を発着する便の方が安い傾向があります。
上の一覧を見たときに「あらためて新幹線料金って高い」「こだまでさえも料金のレンジが高止まりしているな」と思った人は多いでしょう。
ビジネスの出張において会社が交通費を出してくれると高さを感じませんが、私的な旅行で自分で負担すると「高い」と思う人は多いはず。
地方の学生にとっても就活時に何度も使う新幹線の料金は重く感じられるでしょう。
これだと普通の首都圏民にとっても新幹線に乗って「そうだ京都、いこう」と気軽にいえなくなりますよね。
諸外国と比較してみても、日本の高速鉄道の料金は明らかに高いです。そこで今回は新幹線の料金の高さの理由を解説します。
新幹線の料金はなぜ高い?
結論から言うと、新幹線の料金が高い理由は以下のとおり(運賃も高いですが)。
- 高くても混雑しているから高い料金をもとめる(上場企業として営利をもとめる)
- 会社間の競争原理が欠けるが、本数が多いと同じ線路上での競争は難しい
- 赤字路線を維持したり新規路線を建設するにはドル箱路線が必要(負債もまだ残っている)
- やや安いプランは条件だらけ
- 建設費、土地代、保守費、車両製造費の高さ(安全性も高い)
そこには高いなりの理由があります。
ここから先は以上の箇条書きについて掘り下げていきます。
高くても混雑しているから高い料金をもとめる(上場企業として営利をもとめる)
まず「高い高い」といわれている新幹線ですが、東海道新幹線はいつもそれなりに混雑しています。2020年だけは事情が激変しましたが…。
東海道新幹線の車両はすべて16両編成で、それが下りだけで3分~7分おきくらいに東京駅を発車しますから驚異的な混雑だといえます。
そして商品の価格は売れれば上げて、売れなければ下げるのが経済学の基本です。
つまり、JR東海とすれば料金は高いといわれても、それでも混雑しますから料金を下げたがらないわけです。
しかも新幹線を収益源とするJR東海、JR東日本、JR西日本、JR九州は上場企業ですから、株主のために利益を出さなければなりません。
競争原理が欠けるが解決も難しい
さきほど”商品の価格は売れれば上げて、売れなければ下げるのが基本”と書きましたが、公共交通機関の料金の上限変更は国交省の認可が必要なように硬直的です。そこでは上場企業とて極端に高い料金は実現できません。
商品の価格を下げても利益がとれなければ企業は事業から撤退するのが普通です。
しかし、鉄道は地域住民の足になっていますし、沿線の自治体から助成金を受け取っている場合もありますからそう簡単に撤退できません。
ここで「じゃあなんでLCC(格安航空会社)は安いの?」という声が聞こえてきそうです。
LCCの安さの理由は機体の統一や機内サービス・設備の簡略化もあるのですが、競争原理が作用していることの方が大きいです。
たとえば、羽田~福岡という日本屈指の過密航空路線ではANAとJALとLCC数社が競合しています。
消費者とすれば安い価格をもとめますし、航空会社とすれば消費者から選ばれるために他の航空会社と競わなければなりません。このように複数の会社が競争している構造だと価格は下がるのが普通です。
これに関してヨーロッパの高速鉄道は同じ区間について複数の鉄道会社が高速列車を運行している場合があります。
ここでは政府が線路や設備を所有し、複数の鉄道運行会社が競争するという形になっています。このような体系を上下分離といいます。
一方、日本の高速鉄道は上下分離になっていません。すなわち一つの鉄道会社が線路と設備の所有・保守も鉄道の運行も受け持つという形なのです。これでは競争が起きないため、価格が下がりません。
正確に言うと、日本でも地方の路線は上下分離になっているところもあります(一部の新幹線を含む)。
しかし、そこでは複数の運行会社が同じ線路上を競争して運行するようにはなっていません。
新幹線の競合環境は特殊
しかも、日本の新幹線は複数の会社に競争させるのが難しい構造になっています。
というのも新幹線は繁忙期のピーク時には3分30秒おきに運行して旅客需要をさばいています。下りだけで3分30秒おきに16両編成の高速鉄道を出発させるなんていう芸当は、単一の会社が全面的に管理しないとほぼ不可能です。
もし東京~新大阪について同じ線路上で複数の鉄道運行会社に運行を競争させたら、3分おきに出発できず大混乱に陥るでしょう。
つまり、同じ線路上における高頻度運行と単一会社の運行は切り離せないため、複数会社による価格競争が起きず、価格は高止まりしてしまうのです。
JRには赤字路線も維持する使命がある(負債もまだ残っている)
さて、LCCは料金が安いという特徴以外にもう一つ特徴があります。それは不採算路線は運航しないということです。
LCCは低価格だけあって搭乗率が高くないと黒字になりません。そのためLCCは低価格でも採算がとれる路線しか運航しないのです。
一方、JRやJALは高い公共性も帯びているため(半官半民に近い)地方の赤字・過疎路線もそれなりに運行(運航)しなければなりません。
こういう赤字路線を維持するには、都市部でドル箱路線を築いて穴埋めしないと難しいものがあります。
とくにJR東海はリニアという大事業について東海道新幹線での大儲けをつぎ込む形で建設しています。
また、かつてJR東海は旧国鉄系の組織から新幹線事業を5兆円以上で買い取り、その返済が今も続いています。
これでは新幹線の料金を劇的に安くするのが難しいでしょう。
安いプランもあるが、いろいろ条件がついている
新幹線には一部に少し安いプランもあります。
しかし、安いプランの利用にはいろいろ条件がついているため、それに適合した人以外は安さを実感できません。
パッケージプランをのぞくとどれも条件は厳しかったり、あるいは割引いたとしても割引率は小さめだったりします。
とくに東海道区間(東京~新大阪)ののぞみに対する値引きは弱いです。
- ぷらっとこだまこだま号の指定席のみ(各停で遅い)
- EX早特21乗車日の21日前までの予約、繁忙期はダメ、特定ののぞみの指定席のみ
- 大人の休日倶楽部パス満50歳以上でないと入会できない、年会費も必要、東日本のみ乗り放題、JRが指定した4日間~5日間だけ、指定席は6回まで
- パッケージプラン(新幹線とホテルのセット)閑散期に主要駅近くの指定のホテルに泊まるのであれば安い、繁忙期はお得感が低い
- みんなの九州きっぷJR九州のみ乗り放題、土日祝日の2日間だけ、指定席は6回まで
- ジャパンレールパス短期滞在の観光ビザで日本に入国した人と一定条件を満たした海外在住の日本国籍者が使える、のぞみやみずほは使えない
- 学割(運賃が2割引)学校法人所属の学生のみ、片道の営業キロが101キロ以上、新幹線特急料金は割引されない
※以上のきっぷには他にも細かい条件がついている場合があります。
※新幹線の正規(値引き前)の運賃・料金はヨーロッパの高速鉄道と似たようなものですが、割引後の価格はヨーロッパの方が全般的に安いです。
日本の自然条件は料金が高くなる要素がそろっている
日本という国土は地形が急峻であり、地震や台風もとても多いです。大きな地震や台風が直撃すると鉄道会社は大きな損失を被ります。
高速鉄道の運行はトンネルと勾配がなくて直線だらけのほうが望ましいですが、現実の日本にはカーブと勾配とトンネルと高架橋が多いです。
建設費や保守費用は地上の線路よりも高架の方が高くつきます。
ちなみに東海道新幹線だけで1日あたり1000人もの作業員が保守に携わっています。さらに毎朝、始発電車が走り出す前までに小さな確認車が線路付近の異常を確認しています。
また日本は狭いうえに平野部では人口密度は高く、線路のすぐ近くに住宅やオフィスビルがあることは珍しくありません。
夏の気温は40度近くで湿気が多く、冬の気温は0度前後にもなります。
こんな条件下で新幹線は最高速度300km/h前後で走行しつつ、高い安全性と運行頻度と正確性と騒音対策も実現しています。
そうなると設備も保守も運行管理システムも諸外国のものよりもお金がかかります。地震を検知して早急に止まれるシステムまであります。
さらに新幹線は長い時間にわたって高速で走るため車両価格が高いですし、車両の耐用年数も約15年と在来線に比べるとかなり短い(半分くらい)です。
自動車だって速く走れるスポーツカーの方が価格は高いでしょう。あれと同じことです。
高速鉄道の開発に終わりはない
そして現在でもより快適で速い新幹線をめざして研究開発がすすんでいます。
こういった費用の高さが料金の高さにも反映されてしまうのです。