横須賀線の武蔵小杉駅、山手線・京浜東北線の田町駅、埼京線の武蔵浦和駅などで混雑したホームに立っていると、すぐそばを新幹線が通過していきます。
このときあなたは「新幹線通勤なんていいなぁ」と思ったことはありませんか。
私はあります。そのため、新幹線通勤を私費で試したことがあるくらいです。
今回はそこでわかった新幹線通勤のメリットとデメリットを示します。
新幹線通勤は意外なデメリットもあるんです。
新幹線通勤の所要時間
まずは平日朝における各停タイプの新幹線の所要時間を確認しましょう。
新幹線の各停格である、こだま、なすの、たにがわは通勤時間帯ではグリーン車以外は全車自由席になって座りやすいですよ。
また平日の通勤時間帯(朝9時までに発車)の東海道新幹線の新横浜品川・東京では、のぞみやひかりも含めて自由席券の人も空いている指定席に座ってよいという特例があります。
なお各停タイプの新幹線の所要時間は通過待ちがあるかないかで変わります。
平日朝の各停タイプの新幹線の通過待ちは昼間よりも少なく、都心への通勤圏ではおよそ1本です。
夕方の下りにおける通過待ちは1本増えるパターンが多いですが、22時台などはのぞみのような速達タイプが運転されなくなるため、通過待ちは少なくなります。
いずれにしても所要時間はどの時間帯のどの列車に乗るかで数分は異なるということをご理解ください。
各停タイプの新幹線の所要時間
それでは平日朝8時過ぎに東京駅に到着する場合の所要時間を確認しましょう。
東海道新幹線こだま号の所要時間(東京駅まで):
こだま号の所要時間 | 在来線の所要時間 | |
静岡 | 78分 | |
新富士 | 67分 | |
三島 | 56分 | 141分 |
熱海 | 48分 | 118分 |
小田原 | 36分 | 96分 |
新横浜 | 18分 | |
品川 | 6分 | 9分 |
東京 |
※平日朝の上りは三島か小田原で通過待ちがあり、上の所要時間は小田原で通過待ちをした場合(ない場合もあり)。
※7時台の上りひかり号に乗ると静岡の次は新横浜に停まります。この場合、静岡から東京までは58分かかります。
東北新幹線なすの号の所要時間(東京駅まで):
なすの号の所要時間 | 在来線の所要時間 | |
那須塩原 | 69分 | |
宇都宮 | 54分 | 135分 |
小山 | 43分 | 93分 |
大宮 | 25分 | 36分 |
上野 | 5分 | 5分 |
東京 |
※平日朝の上りは那須塩原がなすの号の始発駅になっており、始発だけで6本くらいあります。
上越新幹線たにがわ号の所要時間(東京駅まで):
たにがわ号の所要時間 | 在来線の所要時間 | |
越後湯沢 | 92分 | |
上毛高原 | 79分 | |
高崎 | 62分 | 124分 |
本庄早稲田 | 49分 | |
熊谷 | 39分 | 79分 |
大宮 | 25分 | 36分 |
上野 | 5分 | 5分 |
東京 |
※上越新幹線は高崎からの始発が多め。そのため越後湯沢や上毛高原から都心へ通勤する人は高崎以降に比べると少ないです。
北陸新幹線あさま号の所要時間(東京駅まで):
あさま号の所要時間 | 在来線の所要時間 | |
上田 | 90分 | |
佐久平 | 80分 | |
軽井沢 | 70分 | |
安中榛名 | 60分 | |
高崎 | 50分 | 124分 |
本庄早稲田 | 通過 | |
熊谷 | 通過 | 79分 |
大宮 | 25分 | 36分 |
上野 | 5分 | 5分 |
東京 |
※あさま号は北陸新幹線の区間では各停タイプなのですが、上越新幹線と重複する高崎~大宮では通過が設定されている列車もあります。
※本庄早稲田と熊谷を通過すると、各停タイプよりも10分くらいは早く東京に着きます。
通勤定期代を比較
次におもな駅と東京駅を往復する場合の新幹線の通勤定期代とJR在来線の通勤定期代を比べてみます(定期代はいずれも1か月)。
新幹線の通勤定期代 | 在来線の通勤定期代 | |
静岡 | 136330円 | 86170円 |
三島 | 93930円 | 60050円 |
熱海 | 86990円 | 53110円 |
小田原 | 73930円 | 40050円 |
新横浜 | 48480円 | 19440円 |
那須塩原 | 132120円 | 75520円 |
宇都宮 | 103940円 | 53450円 |
小山 | 78740円 | 38660円 |
大宮 | 55510円 | 16110円 |
越後湯沢 | 151620円 | 95020円 |
高崎 | 103600円 | 53110円 |
熊谷 | 71260円 | 31180円 |
上田 | 146980円 | |
軽井沢 | 127370円 |
※上田や軽井沢にJR在来線はありません。
※東京~小田原の新幹線の通勤定期代は1か月で73930円。そして定期でも回数券でもなく、普通に東京から小田原まで自由席で向かった場合の価格は「運賃1520円+新幹線の自由席料金1760円=3280円」。
「73930÷3280≒約22.5」この22.5は、その定期券は片道22.5回分の価格であることを意味します。つまり、定期代は11往復分くらいの価格ですから、1か月につき12日以上を往復する人は定期券を買った方がお得です。
最近では週7日のうち、2日が休み、3日が出社、2日がリモートワークやサテライトオフィスへの出社みたいな働き方も増えています。
そのため、1か月あたりの出社日数によっては定期券を買わず、金券・回数券でやりくりした方が安上がりな場合もあるでしょう。
コスパがよい地域はどこか
さきほどの通勤定期代を見比べると個人的には小田原、小山、熊谷あたりが総合的なコスパがよいと感じます(いずれも都心から約90kmの距離)。
新横浜や大宮あたりは定期代は高くなくても、駅近くの地価は安くありません。
逆に上田や那須塩原あたりだと地価は安くても定期代は13万円を超えているため、会社が負担してくれないとかなり厳しいでしょう。
そのため、その中間エリアのコスパがよいというわけです。
夏場は東海道新幹線の沿線よりも熊谷や小山のような内陸部の方が暑い傾向があります。暑がりの人は要注意。高崎や宇都宮以北の地域は熊谷や小山よりも涼しいですが。
冬は冬で大宮よりも北にある内陸地域は東京よりも寒い感じです。
会社や自治体が補助してくれないと厳しい
在来線の通勤定期代は会社が負担してくれるとしても、新幹線との差額の負担は会社によってわかれます。
会社が負担してくれないと自己負担となりますが、自治体によっては新幹線通勤に伴う少々の定住補助があります。
最近の自治体は定期券補助のほかに、住宅補助(とくに空き家の利用を優遇)や子育て補助などが見られます。
こういった定住補助は年齢や所得、期間などについて制限が設けられていますので、自治体ごとにチェックすべきです。
都内で新幹線が停まる駅は上野、東京、品川。
新幹線で都心に通勤する人はこの3駅から近いところ、そこからアクセスしやすいところに勤務する人でないと割に合わないかもしれません。
新幹線に座って都内の駅に到着したのに、そこからさらに在来線の満員電車に長々と乗るのでは気分がのらないからです。
新幹線通勤のメリットとデメリット
次に新幹線通勤のメリットについて見ていきましょう。
まず新幹線通勤のメリットといえば、通勤時の新幹線は在来線の満員電車ほど混雑しないこと。
それに新幹線の座席は肘掛けのついたリクライニングシートですから、これに座って行けば体力をすり減らさずに都心に達することができます。
混むとしたら月曜の朝と金曜の夜くらいですが、それでも在来線の混雑と比べたらどうってことはありません。サラリーマンにとって座れる率は高いです。
金曜の夜であっても東京駅からなら、ちょっと並べば座ることができます。
都心へ向かうビジネスマンにとっての混雑
たとえば平日朝に小田原や新横浜から東京に新幹線で行く場合、列の最後尾付近に並んでいると3人掛け席の真ん中しか空いていないというパターンは結構あります。
品川や上野では降りる人ばかりであって、そこから上り列車に乗る人はほとんどいません。そのため上り列車にとって品川や上野は実質的には降車駅です。
つまり、三島⇒熱海⇒小田原⇒新横浜は乗る人ばかりで、品川から乗る人はほとんどいませんからラッシュ時における東海道新幹線の最混雑区間は新横浜⇒品川になるのです。
それがJR東日本系だと大宮⇒上野が最混雑区間となります。大宮で降りる人はそれなりにいますが。
新幹線通勤の客層
通勤時間帯の客層はみんな新幹線の利用に慣れている感じなので車内は落ち着いています。
学生もぼちぼちいますが、平日に新幹線通学をするような学生がうるさい集団と化している例はほとんどないでしょう。
車内での自由度が高い
また新幹線は車内での自由度が高いです。
各席にはテーブルがついていますからPC操作、飲食、晩酌が楽にできます。これによってパソコンを使った副業もやりやすくなります。
寝坊したとしても座席でまったり朝食をとりつつ出勤するなんてこともできます。
車内には電源や「Shinkansen Free Wi-Fi」もありますから、充電や作業もはかどるというものです。
トイレにも行きやすいですし、デッキなら通話もできます。
東海道新幹線なら喫煙ルームに行けばタバコを吸うこともできます(座席はすべて禁煙)。
金銭上はメリットとデメリットのどちらが大きいか
新幹線通勤は金銭面でもメリットはあります。
その筆頭は郊外や田舎の不動産価格は安いため、駅近くや広い物件を手にできること。
また、クレジットカードで新幹線定期券を買えばポイントが貯まります。
ただし、こういったメリットは高い定期代と相殺されているような気もします。
内陸や田舎のよいところ
他にも地域特有のメリットがあります。
たとえば、群馬(上越新幹線沿い)や栃木(東北新幹線沿い)のような内陸県は海沿いの地域に比べると、まだ地震の被害は小さいかもしれません。
また、郊外や田舎に住めば土休日は遠出せずに自然レジャーを楽しむことができます。
子育て環境としても自然豊かなところで育てた方が都会のコンクリートジャングルよりはいいのかもしれません。
デメリットの代表格は定期代が高いこと
次に新幹線通勤のデメリットを見ていきましょう。
まず新幹線の定期代は高いです。
会社や住む自治体によっては定期代を補助してくれるでしょうが、会社で成果を出していないと、周りや人事から目をつけられそうで怖い感じもします。
社会保険料が増える
また新幹線通勤について会社から手当てが満額支給されたとします。これは嬉しい措置に見えますが、社会保険料も増えます。
なぜなら社会保険料は4月~6月の標準報酬月額をもとに算出され、その中には通勤手当も含まれるからです。
当然、新幹線通勤のように支給額が大きいと社会保険料も大きくなります。
新幹線の終電は早い
さて、新幹線の終電時間は早いです。
具体的には、三島、長野、那須塩原、高崎に行く東京駅発の下り最終電車は22時台が目安です。
これだと残業はあまりできませんし、飲み会にも長々とは出られません。
それは残業や飲み会を断る口実になりますが、社内の人間関係にとってマイナスになる場合もあるでしょう。
新幹線の本数は少ない
さらに新幹線の本数は少ないといえます。
正確にいうと、たとえばJR東日本の大宮~東京の本数はかなり多いですが、北陸新幹線の佐久平や安中榛名に停まるような新幹線の本数は少ないです。
たとえばJR中央線は約2分おきに発車するため、いつもと乗る便が異なってもどうってことはないでしょうが、新幹線だと次の便は通勤時間帯でさえも30分後なんてことがあります。
そのため、乗る前は少しゆとりをもって駅に到着しておきたいものです。
田舎は不便
さて、もし新幹線通勤で住む街を田舎にするのなら田舎暮らしのデメリットも知っておく必要があります。
まず田舎はお店や病院は乏しいのが普通です。タクシーはあるものの、路線バスには期待できません。
そのため田舎暮らしは都会と違って自家用車を保有するのが基本となります。
駅近くに住むとしても、田舎は駅前が発展していないため買い物や通院、子どもの習い事などで車は必要になりやすいです。
普通の世帯でも自家用車を複数台もっていることはまったく珍しくありません。当然、自動車関連で費用がいろいろかかりますし、家族に運転を頼むと肉体的な負担がかかります。
田舎は住宅費用は安いとしても、新幹線の定期代と自動車費用が高い点は要注意です。
まとめ
新幹線通勤のメリット:
- 在来線ほど混まない
- 痴漢や痴漢冤罪はほぼありえない
- 上りは新横浜や大宮以外からならまあ座れる
- 車内ではPC操作、飲食、晩酌などができる
- 田舎の広い物件に住める
- 内陸地域は地震の被害が小さいかも
- 休日は田舎のレジャーを楽しめる
新幹線通勤のデメリット:
- 定期代が高い
- 社会保険料が高くなる
- 終電が早い
- 本数が少ない
- 田舎は不便
新幹線通勤は会社が理解してくれているようであればやってもいいと思います。そういう会社は新幹線通勤の人が複数いるはずなので話を聞いてみてはいかがでしょうか。
問題は会社が理解してくれそうにない場合です。
こういう場合は今のところは控えるか、そんなに長距離ではない地域からの新幹線通勤にした方がいいと思います。
たとえば長野県から都心に通勤となると遠いですが、群馬県や埼玉県からの通勤ならまだ許してくれるかも。