東京都千代田区の東京駅から八王子市の高尾駅までを近郊区間とするJR東日本の中央線。
この中央線(とくに快速電車)は首都圏の通勤電車に乗り慣れた人なら「遅い」と思うことが多い路線です。
今回は中央線が遅い理由をあげてみます。
中央線が遅い5つの理由
結論から申し上げますと中央線が遅い理由は以下のとおり。
- 快速電車の割に停車駅数が多いから(停車駅と停車駅の間隔が短い)
- 朝の上り電車は快速に利用者が集中するから
- 乗降客数が多くて乗り降りに時間がかかるから
- 本数が多すぎるから
- 並行するライバル路線もそんなに速くなくて張り合いがないから
ここから先は上の箇条書きを掘り下げていきます。
線形はとてもいいのに停車駅数が多い
まずは上のグーグルマップをご覧ください。オレンジ色の太線は中央線の快速だけで高尾駅から東京駅に向かった場合のルートを意味します。
中央線は立川から中野までは見事なまでに真っすぐだということがすぐにわかるかと思います。
いうまでもなく、鉄道は真っすぐな区間が長いほどスピードを出すことができます。また中央線は高架化が進んだため、運行トラブルの種になりやすい踏切も大幅に減りました。
本来、立川~中野はスピードが出せる区間のはずなのです。
しかしですよ、上の中央線の路線図、とくに中野~立川における快速の停車駅を見てください。
快速とはいうけれど「立川~中野の停車駅は各停(=実質的には黄色い総武線)と変わらん!」と思うでしょう。
高尾~立川も通勤特快以外はすべて停まりますが、このあたりはちょっとした田舎で駅と駅の間隔が広いため、すべて停まったとしてもあまり遅く感じません。
しかし、三鷹~中野はそれなりの都会で駅と駅の間隔が短いです。にもかかわらず、この区間の平日の快速は実質的に各停になってしまうため遅くなるというわけです。
中央線の快速は杉並3駅(高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪)を通過させた方が速くなりますし、各停とのバランスがとれます。
JR東日本もこれを認識しているようですが、すでに地元民の既得権として成立した停車駅を覆すのは難しいです。
利用客は快速に集中し乗り降りに時間がかかる
次に問題なのは利用者の快速電車への集中。
利用者が快速電車ばかりに集中すると、それだけ乗り降りに時間がかかってしまうからです。
そもそも中央線のダイヤは高尾~武蔵境は快速だらけで各停がほとんどないため、高尾~武蔵境の利用者は快速に乗るしかありません。
この点、三鷹から上りは中央線各停(実質的には総武線)があるため「三鷹~中野の利用者は混んでいる快速ではなく、それよりすいている各停に乗ってもいいのでは?」と思ったりもします。
しかし、都会人というのは田舎民よりもせっかちな傾向をもっているため「少しでも早く都心の勤務先の最寄り駅に着きたい」と思っています。
各停との所要時間の差は数分~10分くらいしか変わらないとしても、都会人は速い方を選んでしまうのです。
平日朝、杉並3駅から上り電車に乗る場合、快速と各停への乗車比率は1:1くらい(快速の方がちょっと多いかも)。
しかし、各停は三鷹始発ですが、快速の多くは高尾や青梅が始発ですから快速の方が杉並3駅の時点では混んでいます(降りる人は少ない)。
そして平日朝のピーク時に西荻窪から御茶ノ水に行く場合、各停だと35分、快速だと26分かかります。
別の区間を乗るにしても都会人にとって数分の差は大きいため、杉並3駅からでも快速に乗る人は多いのでしょう。各停は快速よりはすいているといっても、それでも杉並3駅から座るのは難しいでしょうし。
そのうえ中央線各停(総武線)は一大ターミナルである東京駅に行かず、御茶ノ水から先は秋葉原方面へ行ってしまいます。
したがって、三鷹~中野の利用者の中でも東京駅に向かう人は各停よりも快速を選びやすいというわけです。
本数が多すぎる
中央線は乗降客数がとても多いですし、それは快速電車に集中します。
そこでJRとしては中央線の本数を限界までに増やしています。もし本数が少ないとホームに乗客があふれて危険だからです。
しかし、電車はある程度のスピードを出しながらも前を行く電車との衝突を絶対的に避けなければなりません。そこで電車は前と一定間隔をあけて運転します。
本数が少なければスピードを出せますが、中央線は本数が多いですから安全確保のためにスピードをおさえなければなりません。
中央線上りの通勤特快や特急のスピードが遅いのも、国分寺や三鷹などで快速を追い越したとしても、その先にも前の列車が詰まっているからです。
JR東日本は中央線のスピードアップについて努力しています。典型的なのが、最も乗降客数が多い新宿駅での相互発着。
たとえば、ホームが中央線だけで1~4まであったとして上り列車が3と4を使うとします。このとき3に上り列車が入ってきて3について乗客が乗り降りしていると、その乗り降りの間に次の上り列車が4に入ってくるという形。
次は3が発車して4が乗り降り中になると、3に次の上り列車がやってきます。この方式は上り電車だけでホームを2線分も必要としますが、効率的に乗客をさばけるのです。
新宿駅でこの方法で使っているのは中央線だけ。新宿駅の中央線は快速と特急と各停でホームが分離されているように別格の扱いです。
並行する路線も遅いという話
さて、中央線の遅さにはライバル路線の遅さも影響している可能性があります。
たとえば首都圏で最速クラスのスピードを誇る通勤電車といえば、つくば~秋葉原をつなぐ、つくばエクスプレスです。
で、JR東日本はつくばエクスプレスに対抗して近くを走る常磐線のスピードアップを図りました。
要するに並行する路線が速いとライバル路線は対抗して速くするのが普通なのです。
しかし、中央線に並行する京王線と西武新宿線は速度が遅いため、ライバルの中央線にプレッシャーをかけることができていません。
もし、京王線と西武新宿線がもっと速いなら中央線も速くなるはずです。
まとめ
中央線がスピードアップする手段として物理的に手軽なのは杉並3駅の通過ですが、法制面や杉並区民との関係で通過できません。これは意外と大きな壁です。
もし、東京駅周辺に通う人でもっと早く東京駅にたどり着きたいのであれば、引っ越す方が手っ取り早いと思います。