株価を大きく左右するイベント、それが上場企業に四半期(3か月)ごとに開示が義務付けられている決算です。
普段はおとなしい銘柄でも決算直後は株価が大きく上下することは珍しくありません。
大雑把にいうと「よい」決算が出れば株価は上向くのですが、この「よい」という意味がやっかいです。
決算は、これから述べる大まかな傾向を知っておくのとそうでないのとでは大きく異なりますのでご注意ください。
決算の見方【投資家視点】
まずは決算の発表日時がいつなのかという点について。
これは上場企業の公式サイトの上部にあるIR情報(投資家情報)をクリックし、そのあとIRカレンダーをクリックすれば決算の発表日がわかります。
ソニーのように消費財を売っているメーカーの場合、消費者向けのサイトと企業情報・採用・投資家情報を売っているサイトは別サイトだったりします。
この場合「企業名+投資家情報」でネット検索すれば大丈夫です。
上場企業はかならずIR情報というページをもっていますが、それをカレンダーとしてわかりやすく示しているかは対応がわかれています。
発表時間は企業によって違う
次に発表日の何時に公開するかは、企業によって異なります。
発表の時間帯として多いのは15時~16時ですが、中にはザラバに発表する企業もあります。
これは前回の決算と同じ時間帯である場合が多いので、前の決算は何時に公開されたか調べてみましょう。

決算は日経の適時開示で見よう
次は決算の公開・閲覧場所について。
決算を個別の企業サイトにアクセスして閲覧したがる人もいますが、それよりも日本経済新聞社の適時開示検索というところを見た方が早いです(内容は同じ)。
日経の適時開示においては企業統治や新株発行といったニュースも一括して検索できるので便利ですよ。
連結決算に注目しよう
ここからは決算の中身を具体的に見ていきます。
原則として決算においては単独・単体決算よりも連結決算に注目します。連結決算とは、その企業の子会社や関連会社も含めた決算のことです。
単独決算しか見当たらない場合は単独決算を見れば基本的には大丈夫です。
かつての日本では親会社の単独決算が重視されていたため、親会社と子会社の間のやり取りによって利益が操作されていました。
しかし、その後、欧米市場の影響を受けて連結決算が主流となりました。連結決算ではグループ会社間の取引や利益は消去されます。
売上と営業利益の伸びを見よう
決算においては決算短信の序盤数ページに記されている売上と営業利益の増減率がとても大事です。
早い話、売上および営業利益が前期比あるいは前年比で増えているほどよい決算だといえます。
赤字企業において赤字が縮小してもよい決算です。
逆に売上および営業利益が前期比あるいは前年比で減っているほど悪い決算だと考えてください。
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期待を超える決算か否かが重要
ただし、株式投資家は決算の評価を数字の大きい小さいではなく「期待以上のものか否か」で判断する傾向にあります。
スポーツの世界でも大して期待されていない選手が少し活躍すると褒められますが、もともと大きく期待されている選手がそれと同じ活躍をしても酷評されることがあるでしょう。
会社の決算もそれと似たようなもので、投資家にとって事前にどの程度期待されているかが重要なのです。
したがって、事前の期待が大きかった企業はその期待を超える決算を出さなければ株価は厳しいことになります。
事前に赤字決算が出ると予想されていた企業で予想どおりの額の赤字決算が出たとしても「やっぱりね」という感じで株価は大して動きません。
逆に大して期待されていなかった企業が標準レベルの決算を出した場合はむしろ株価が上がることもあるのです。
具体的には決算直前まで株価やコンセンサス予想(=複数のアナリストによる決算予想)が上がっていれば期待のハードルは高いといえるでしょう。

決算においては「評価不足」というパターンもあります。好決算が出たことで株価は大きく上がるべきはずなのに、意外と株価は伸びないというパターンです。
「評価不足」が勘違いでなければ、徐々に本来あるべき水準へと上がると思います。決算に対する評価は発表直後に瞬間的に固まるわけではないのです。
決算は事前に予想できる部分もある
また決算は事前の出来事から予想できる部分もあります。
たとえば鉄道業や観光業などでは天気がよいほど多くの集客と売上が見込めますので、天気がよくないと決算に悪影響が出やすい点に注意しましょう。
一方、室内レジャーの運営会社だと逆に悪天候が続いた方が大きな利益が出やすかったりします。
このように自然現象や企業特有の性質も考慮しながら決算を予想することも株式投資の楽しみの一つだといえるでしょう。
決算前後の動きではないのですが、参考までにいうと2018年に巨大台風が上陸した直後はインバウンド関連銘柄の株価がやや大きく下がりました。
日本の自然環境は厳しい→外国人観光客が訪れなくなる→インバウンド需要が下がる→インバウンドを大きくあてにしている企業の業績は下がる、という悪い連想が将来を見越して(=四半期決算が出る前に)作用したからです。
業績予想では「将来」が重要
ここで強調すべきは業績予想では「将来」が重要だということです。
たとえば今が2021年5月だとして、ある企業から2021年3月期通期決算の営業利益が前年比70%増で確定したと同時に、2022年3月期通期決算の営業利益が2021年3月期に比べて30%減る見通しだと発表されたらどう思いますか。
2021年3月期の決算は営業利益70%増と非常に素晴らしいですが、近い将来30%も減ると予想されたら失望しませんか。
株価を左右する要素は他にもあるので絶対とはいえませんが、その決算と見通しだけを見ると翌日の株価は大幅に下落する可能性が高いです。
なぜなら株価は将来を織り込もうとするので、それまでの業績がよかったとしても将来に対する悪い予想は失望されやすいからです。
逆に当期の業績はよくないとしても将来の業績がよさそうだと見なされると株価は上がる傾向があります。
なお企業は、四半期決算において当期の通期予想は出しやすいものの、通期決算における来期の業績予想については出す場合と出さない場合がありますので、四半期ごとに過去のパターンをチェックしてみるとよいでしょう。

自己資本比率を確認してもいい
決算においては損益計算書だけでなく貸借対照表も示されます。貸借対照表とは現在の財産状態を示す表です。
貸借対照表においては自己資本比率という数値から経営の健全性が判断できます。
自己資本比率は、総資本(負債+純資産)を純資産で割ると算出できます。
一般に自己資本比率が40%以上であれば健全な経営をしているといわれています。
決算またぎはギャンブルか
決算をまたぐ形で株式を保有することが巷では「決算ギャンブル」と呼ばれるのも、決算の正確な数字は内部の人にしかわからず、またその数字がどこをもって投資家の期待以上に相当するかよくわからないからです。
したがって、決算予想に自信がないときにはポジションを持ち越さないというのも有力な手です。


