¥100 ←これは一般に「100円」と解釈します。なぜなら100の前に¥という通貨記号があるから。「通貨記号+数字」は金額を意味するのです。
英語の冠詞もこれに近いものがあって「a cat」と表すと「一匹の猫」と解釈します。つまりcatの前のaが「一匹の」という記号の役割を果たしているわけ。
このように冠詞(かんし)とは、名詞の前にくっついて名詞の単数・複数や不定・特定を表す言葉のこと。
今回は英語の冠詞の基本ルールについて中学生レベルでわかりやすく解説します。
冠詞は間違えたとしても他の部分が間違っていなければ通じたりもしますが、それでも基本ルールはおさえておきましょう。
冠詞とは?【不定冠詞と定冠詞の違いをわかりやすく解説】
例文1:I saw a cat. 私は猫を見た。
猫は1匹、2匹、3匹、、、、というように数えられる動物です。
猫のような数えられるモノ1つを英語で表す場合、「a 名詞の単数形」と表します。
名詞とは物事の名前です。たとえば、猫、犬、動物、愛、ペンなど。それを冠詞とともに表すと猫なら「a cat」犬なら「a dog」です。
「I saw a cat.」を厳密に訳すと「私は1匹の猫を見た。」となりますが、日本語訳では「1匹の」という部分は省略されやすいです。
日本語としては「1匹の」という言葉を出さなくても「猫」というだけで単数形を示しているから。
まあ日本語の単複はかなり曖昧であるため「猫」はわざわざ「猫たち」と表現しなくても複数形を意味していたりしますが、そこまで気にする必要はありません。
日本人が英語を和訳する際、なるべく英語と日本語を一対一で対応させようと頑張ってしまいますが、英語と日本語は言語系統がかなり違うためキレイに訳せない場合は結構あります。このあたりは少し気軽に考えましょう。

ちなみに、幸せ(happiness)や愛(love)は数えられない名詞。こういう名詞は不可算名詞と呼ばれます。逆に数えられる名詞は可算名詞といいます。
「幸せや愛は数えられるよ」と考える人がいるかもしれませんが、英語圏の習わしとしては不可算名詞と考えてください。
不可算名詞には複数形と単数形の区別がありませんし、冠詞aをつけないのが原則です。
冠詞aは単数と不定を意味する
例文1:I saw a cat. 私は猫を見た。
今度の例文もさきほどとまったく同じ。冠詞aは可算名詞の単数形と結びつくという性質以外にも重要な意味合いがあります。
例文1のように「a cat」の場合「たくさん猫がいる中での適当な1匹(可算名詞)」あるいは「話題の中で初めて出てきた1匹の猫(可算名詞)」という意味合いがあります。
要するに「a cat」は猫1匹ではあるのですが、特定の1匹ではないのです。こういうのは語学では不定といいます。
aは冠詞であり不定を意味しますから不定冠詞と呼ばれます。
そもそも冠詞とは名詞の前にくっついて名詞の単数・複数や不定・特定を表す言葉のこと。
冠とはマラソンの優勝者が頭に草葉(月桂樹)をつけるように「頭につけるモノ」という意味です。詞とは「言葉」という意味。
つまり冠詞は「頭につける言葉」なのです。「This is a pen.」という文もあるように英語の場合、冠詞は名詞の前(=頭)に付けます。
発音が母音の前ではanを使おう
例文2:This is an apple. これは(1個の)リンゴです。
冠詞のanはaと同じように不定を意味し数えられる単数名詞の前につけます。
ただし、anはappleのように直後の単語の発音がa, e, i, o, uといった母音(アイウエオ系の発音)から始まるときに使います。
たとえばuserという単語はuから始まりますが、そのuは「ju(ユ)」と発音しますから直前の冠詞はanではなくaでいいのです。
- ○
「an apple」「a user」「an hour」
- ×
「a apple」「an user」「a hour」
hour(アワー)は発音としては母音から始まるため冠詞はanが正しいです。
子音から始まる形容詞を挟む場合
冠詞は名詞の前に置きますが、間に形容詞を挟む場合があります。
たとえば大きなリンゴを不定の単数形で表現する場合は「a big apple」となります。
appleの前に子音から始まる形容詞bigがあるため、冠詞はaでいいのです。
不定冠詞は単数に特定されてしまう
不定冠詞は「不特定の1つ」を表すのが基本です。
つまり、不定冠詞は不特定でありながら単数という限定がなされてしまうのです。
たとえば、次のようにたずねられた場合、
What is your favorite animal? 好きな動物は何?
「I like a cat.」と答えると「ある一匹の猫が好き」という意味になってしまいます。
もし「猫種族が全般的に好き」と伝えたいのなら「I like cats.」と無冠詞+複数形と表すのが普通です。
定冠詞theは特定された名詞の前につける
次は定冠詞について。
定冠詞theは、猫を例にすると「特定の猫」「すでに話題に出てきた猫」「前に話題になっていなくても、その場で特定できる猫」、どれかの意味合いがあります。
例文3において「猫」ではなく「その猫」と訳すのはそういった「特定」を反映させているから。
要するに、名詞に「特定」という発想があると定冠詞のtheをつけると考えてください。
theの後の名詞は単数形でも複数形でも不可算名詞でも大丈夫。
定冠詞theもまた訳に出さないことが多くあります。
theを訳すとしたら「その」が適当かもというくらいで絶対的なルールではありません。
- 「a cat」(不定冠詞+可算名詞の単数形)
「たくさん猫がいる中での適当な1匹」「話題の中で初めて出てきた1匹の猫」
- 「the cat」(定冠詞+可算名詞の単数形)
「特定の1匹の猫」「すでに話題に出てきた1匹の猫」「前に話題になっていなくても、その場で特定できる1匹の猫」
- 「the cats」(定冠詞+可算名詞の複数形)
「特定の数匹の猫」「すでに話題に出てきた数匹の猫」「前に話題になっていなくても、その場で特定できる数匹の猫」
可算名詞の単数形 | 可算名詞の複数形 | 不可算名詞 | |
不定冠詞a/an | ○ a cat | × | × |
定冠詞the | ○ the cat | ○ the cats | ○ the love |
上の表は冠詞と名詞の関係に対応した表です。不定冠詞は可算名詞の複数形や不可算名詞に使うことができません。
形容詞sameと結びつく冠詞はthe
この例文がスポーツ用品店で話されている場合「私が私物としてもっているラケットと、店頭で売っているラケットは同じ」という解釈が普通です。
つまり、いろいろな種類のラケットが売っている中である商品は私物と同じだということ。This=mine(my racket)と特定できているのです。
この発想に基づくなら、sameの前につけるべき冠詞は「不定(不定冠詞のa)」ではなく「特定(定冠詞のthe)」が合っています。
このように冠詞と他の語の結びつきは理屈っぽいのが基本です。
固有名詞は無冠詞が原則
最後は、固有名詞と冠詞の関係を大まかに見ていきましょう。
たとえば山(mountain)は普通名詞で、富士山(Mount Fuji)は固有名詞です。世界各地に山はいくつもありますが、とくに山ならどれでもいいのであれば「山」という普通名詞を使います。
あるいは山の中でも特定の山のことを言いたいのなら富士山や大山といった固有名詞を使います。
ここで一つ3択問題を出します。
それは「Japan(日本国)という固有名詞に冠詞がつくかつかないか」です。
- a Japan
- the Japan
- Japan
下の箇条書きを参考にしながら解いてみてください。
- 「a cat」(不定冠詞+可算名詞の単数形)
「たくさん猫がいる中での適当な1匹」「話題の中で初めて出てきた1匹の猫」
- 「the cat」(定冠詞+可算名詞の単数形)
「特定の1匹の猫」「すでに話題に出てきた1匹の猫」「前に話題になっていなくても、その場で特定できる1匹の猫」
まず「a Japan」が明らかにおかしいのはすぐにわかるはず。Japanは固有名詞であり世界中で一つしかないにもかかわらず、可算名詞にしか使わない冠詞aを使っているからです(固有名詞は不可算名詞)。
数えられない名詞に冠詞aがつくことは原則としてありません。
とすると、問題はJapanにtheがつくかつかないかです。
結論から言うとJapanのような固有名詞にtheはつけないのが原則です(さきほどの正解は3番)。
そのため「固有名詞は無冠詞」と覚えてほしいのですが、これには例外も結構あります。
この例外の解説は中学生レベルを外れてしまうので、この記事では省略します。
まとめ
冠詞は初心者レベルではそんなに難しくありません。
しかし、冠詞は無冠詞も含めてこのページで紹介している用法以外にも用法があります。それは結構難しいです。
そもそも冠詞は名詞と結びつくため名詞の性質も重要です。たとえばbeautyは「美しさ」という意味では不可算名詞ですが、「美人」という意味で使う場合は可算名詞。
こんな記事を書いている私も冠詞の習熟度は完璧ではありません。
というかネイティブスピーカーでさえも冠詞の細かい用法はどちらが正しいのか迷う場合もあるそうです。
まずは基本レベルをおさえ、そのあとはじっくり積み上げていきましょう。