利権とは私的かつ公的に得続ける権益のこと。
今回は社会のあちこちにある利権についてわかりやすく解説します。
私はどこかの利権当事者ではなく、また社会科本の著者でもあるため公平に解説することができます。
利権とは?【既得権益も含めてわかりやすく解説】
利権のポイントは以下のとおり。
- 政治家や官僚が大きく絡む
- 娯楽業界は利権化しにくい
- 海外にも存在する
- 社会への影響を広く考えてみよう
- 新たな経済をつぶしてしまうこともある
- 外圧が利権を壊す場合もある
- 日本でとくにひどいのはパチンコ利権
たとえば、あなたが病院に診察してもらいに行き、そのあと近くの薬局で薬を買うとします。
このとき、その薬局で在庫している保険適用の薬はすべて厚生労働省から承認された薬であるはず。
なぜ薬は省庁の承認を経ているかというと、薬はよくない作用ももっているため私企業(この場合は製薬会社)が適当に開発・販売しまくると危ないから。
電波についても同じで、みんなが電波を適当に扱っていると電波が混信してみんな混乱してしまいますから、電波を管理する省庁(日本の場合は総務省)がいるのです。
利権化しやすいのは大きな許認可や予算が絡む分野
利権が発生しやすいのは、薬、電波、道路、軍需、ダム建設みたいな政治家の口利きや役人の許認可が絡みやすい分野です。
こういう分野は税金も大きく投入されており(=予算規模が大きい)、その浪費がたびたび指摘されています。
政治家や役人は自らの得意分野と密接な関係がある企業と癒着しており、たがいに利益が得られるよう見計らっています。
政治家や役人の行動は法的な効力と持続性があるため、それと関連する私企業にとってはかなり美味しいのです。
本来、政治家や役人は公(社会全体)のために働く必要がありますが、利権は一部の企業を優遇するなど不公平感があるため問題視されます。
※朝令暮改とは法が制定されたのにすぐに変更されて安定しないこと。
※特定の分野に詳しくてその利益を擁護するともに関連省庁に強い影響力をおよぼす議員を俗に「族議員」といいます。
議論の封殺が怖い件
たとえば私はNHKの受信料制度という利権に大きな疑問をもっています。
NHKの予算は毎年、国会の法的な承認を得る必要があるように公的な性質を帯びています。
しかしというか当然というべきか、当のNHKは「受信料制度は時代に合わずおかしいから、国民のみなさんは解決のためにNHKの番組内で議論してください」とか絶対に言いたがりません。
NHKは公共放送ですから、日本の問題を広く放送しなければならないはずであり、受信料問題を扱った番組も制作・放映する必要があります。
しかし、NHKがこうも大きく利権化してしまうと、その解決へ向けた議論さえも見せないなど自浄作用が失われてしまいます。
こういう閉鎖的なインチキメディアが行きつく先は北朝鮮や中国の独裁政権にとって都合のいい報道しかしない体制でしょう。
パッと見て正義の利権は批判しにくい
たとえば「生活に困っている独身女性を助けたい」というような支援組織には公的予算(税金)もつきやすいです。
しかし、こういう正義に見える支援組織は批判しづらいため、裏では職員が税金を私的流用しているなんてことも結構あります。
ゲーム業界が利権化しにくい理由
一方、ゲームソフトや漫画のような立法・行政が絡みにくい私的な娯楽分野では利権が発生しにくいのが普通。
仮にゲームのハードウェア(PS5やWiiなど)が入り乱れたところで公的な問題はほとんどないなど、ゲームや漫画に役人の許認可は発生しづらいからです。
大地震が発生したときでも道路や通信網の復旧には多額の公金が使われるものですが、ゲームのような娯楽分野に公金は投じられにくいです。
任天堂は世界的に有名な大企業なのに経団連に入っていませんし、日経平均株価の構成銘柄にも入っていません。
任天堂は日本の大企業にしては珍しく政治的な干渉を受けにくいといえます。
利権は海外にもある
利権の性質を考えると海外諸国でも発生することが簡単に想像できるでしょう。
実際、海外にも利権はたくさんあります。もし利権が存在しない国があるのなら見てみたいですね。
海外で有名な利権は、アメリカの銃利権、西欧諸国の貴族利権、中国の共産党利権、中東諸国の石油利権、ロシアの天然ガス利権など。利権の規模は日本円で数十兆円はありそうです。
オリンピックは、IOCは民間組織ではあるものの、実質的には各国政府(とくに開催能力のある国)と結びついて上層部が利権化している感じです。
これらは国内のみならず国際社会への影響もかなり強いです。
※利権は政治家や官僚が関わる以上、利権が強いレベルで発生しやすい国家は日本や中国のような官僚の権限が強い国家です。
※欧米の利権は政治デモや司法、テレビでも正面から取り上げられるように表向きになりやすいですが、日本や中国の利権はマスコミが包み隠したがるように陰湿な傾向があると考えています。
※日本のマスコミは金銭的利益のために利権を隠したがることもあれば、たとえば「人権系の利権は触れると賛成派・反対派への対処が面倒だから触れたくない」みたいな感じで事なかれ主義を発動することもあります。確かに人権系の利権は面倒なことが多いんでしょうけど…。
意外と重要:野球界に見る経済構造の違い
たとえば日本のプロ野球界で球団数を増やそうとすると、既得権側の球団は減収(とくに巨人との試合数)をおそれて反対しやすいです。
日本は国土がアメリカほど大きくなく経済全体のパイが小さいため奪い合いの経済構造になりやすく、とくに既得権側は意地でも既得権を守ろうとするのです。
しかし、アメリカの野球界は「球界全体のパイを増やそうぜ」という方向へ行きやすいです。
アメリカは国土が広くて世界中から人材とお金が大きく集まるため(出入りが多い)、拡大路線の経済構造になりやすいといえます。
こういうのは野球界以外でもよくある経済構造です。
既得権益との違い
利権と既得権益の意味はよく似ています。
- 利権私的かつ公的に得続ける権益のこと。
- 既得権益ある個人や集団が以前から保持している権益のこと。
両者に違いがあるとすれば、協調性だと考えられます。
たとえば東京の主要鉄道路線として有名なJR中央線には「杉並3駅問題」があります。
杉並3駅問題とは杉並3駅の近くの住民と地権者と杉並区は中央線快速が停まることを「うれしい、既得権益」と思っている一方、JR東日本と杉並区以外の沿線自治体と中央線の他の駅近くの住民は「中央線快速は杉並3駅を通過するべき」と考えていること。
そのほうが中央線快速の所要時間は短くなりますし、その区間には総武線各停も走っているため通過したいと考えているのです。
要するに杉並3駅問題においては企業と行政と各ユーザーの足並みがまるで揃っていないのです。
現実には鉄道路線の種別(この場合は中央線快速)が停車駅を確立すると、法的には既得権益となるため快速は杉並3駅を通過できず、もし通過するとすればJRが他の種別をつくって通過させることになります。
利権はある分野の企業と政治家・官僚が協調的に保持しますが、既得権益は協調的に保持するとは限らないのです。
以上の違いは辞書に明記されているわけではありませんが、法学的な事例では個人が既得権益を主張して企業や役所とぶつかることが結構あります。
利権は全面的に批判しにくい
ここから先は利権についてもう少し深く考えてみましょう。
たとえば、さきほどの製薬における省庁の介入は薬の危険性を考えると納得した人も多いはずです。もし自分に合わない薬を飲んだ人が暴れたりしたら、社会全体に迷惑をかけてしまいます。
さらに、たとえば小売店において「この空気清浄機は〇〇○ウィルスを除去できる」という宣伝文があったとします。
もし、それがウソだったら空気清浄機の競争は不公平ですから省庁(日本の場合は消費者庁)はウソつき業者を取り締まる必要もあります。
また薬の値段が高すぎると患者の経済的負担は大変です。あるいは薬の価格が市場競争によって安すくなりすぎると製薬会社としては利益にならず新薬開発から撤退してしまいます。
もし夢の新薬が開発されたら、今は不治の病で苦しんでいる人が救われるかもしれないのに。
人(この場合は製薬会社)は利益が得られるからこそ頑張れるという面がありますから、薬の価格は多少は利権化しても仕方ない面もあります。
要するに製薬利権は経済的な調整や夢の新薬につながる面もあるため全面的に批判しにくいのです。
日本における薬価は、保険が適用される医療用医薬品と、保険が適用されない一般用医薬品とで違います。
医療用医薬品は全国一律の公定価格として政府が決定します。一方、ドラッグストアで売られているような一般用医薬品は自由価格です。
利権化しやすい産業は古くから存在する産業に多いです。しかし、政府が古い産業ばかりを保護すると新たな産業が育たなくなったりもします。
政府と癒着した企業は多額の補助金を受けたり、役所から大きな受注をとることでそう簡単につぶれなくなります。こういうのは不公平でもあります。
日本がITについては後進国だと指摘されるのも古い産業ばかりを保護してきたツケかもしれません。
利権は新たな経済の妨げともなりうる
利権は新しい経済の芽を摘んでしまうこともあります。
たとえば、近未来においては3Dプリンターを使った住宅が世界中で流行るかもしれないと予測されています。
3Dプリンター住宅は価格がとても安いですから家を買い替えるのも気軽にできます。こういう新たな可能性は経済を好転させる可能性もあります。
しかし日本の場合、旧来の利権勢力(国交省、住宅メーカー、建設会社)が3Dプリンター住宅について規制でつぶしそうな感じもします。
これはたとえば「強度が〇〇以下の住宅を建設することは認めない」という形。
まあ日本は湿気と地震が多いため3Dプリンター住宅では強度が足りないことは十分考えられます。したがって、その規制は不合理とは言い切れません。
日本の優秀な学生は、医師、官僚、弁護士、インフラ系の大企業社員、製薬会社の研究職、大手マスコミをめざす傾向があります。要するに政府の保護が手厚い利権分野です。
しかし、本当に優秀な人は起業のような新たな雇用や製品を生む分野に進むべきともいえます。アメリカはこの傾向があります。
日本経済がイマイチ伸び悩んでいるのは優秀な学生が利権分野ばかりにすすむなど保守的になりやすいことが一因なのかもしれません。
まあ昨今の日本で最優秀レベルの学生はマッキンゼーやゴールドマンサックスのような欧米外資に流れているともいわれますが。
パチンコ利権のひどさ
利権には多少は擁護できる部分があるものですが、日本の数ある利権の中でもパチンコ利権は部外者にとってはほとんど害でしかありません。
そもそも、どこの国でもギャンブル施設はありますが、海外のギャンブル施設は特別なエリアでのみ営業を認めるのが普通です。
一方、日本のパチンコ店は駅前や幹線道路沿いなど生活に密着したエリアにまで広く存在しています。依存症患者や騒音もかなり多いようにパチンコは社会に大きなストレスを撒き散らしています。
パチンコ業界は「パチンコは遊戯」と言い張っていますが、パチンコは実質的には違法賭博にほかなりません。
パチンコ店によい面があるとしたら地域民の雇用と公衆トイレ機能くらいで、あとは害悪でしかないでしょう。
韓国でさえも廃止にできたパチンコを日本の利権関係者(パチンコ店とパチンコメーカーと保通協と警察と自民党)は保持し続けているのです。
こういうのは愚民化政策に近いものがあります。
保通協とは警察系天下り組織のこと。
パチンコ利権は三店方式と警察利権とカジノ利権が絡んだややこしいものですので、興味がある人は検索してみてください。