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ドラえもん『のび太と鉄人兵団』の感想と考察

2022年2月6日

映画ドラえもん『のび太と鉄人兵団』はドラ映画屈指のゲストキャラであるリルルが大活躍する作品。ドラえもんの鏡面世界も大活躍します。

ハッキリ言って原作の雰囲気や世界観がよく表現できているのは旧作版の方。

リメイク版しか見たことがない人はぜひ旧作版も見ましょう。

鉄人兵団の感想と考察

物語は、スネ夫がもっているロボットに対抗してのび太が巨大ロボットを欲しがったところから始まります。毎度おなじみ、のび太のワガママですね。

ドラえもんやスネ夫は巨大ロボットなんて簡単に手に入らないようなことを言っていましたが、ガンプラをつくって、それを材質変換機で金属に変えてビッグライトを使えば手に入ると思いますが、まあそれはなかったことにしておきます。

おそらくザンダクロスやミクロスのデザインは当時人気だったガンダムやマクロスに影響を受けてのことでしょう。

ドラえもんの原作では「Drストップ アバレちゃん」「島山あらら」という言葉が出てくるように、藤子先生はたまにパロディみたいなのを入れてきます。

藤子先生は『ドラゴンボール』でおなじみの鳥山明先生に一目置いていたんでしょうね。

ちなみにザンダクロスは原作では土木工事用という設定。あのロボットは外観も性能も戦闘用という感じがしますが…。

ミクロスというキャラは面白い

物語のカギはやはり鏡面世界とリルルでしょう。

リルルが美少女型のロボットなのは、そのほうが地球人は油断したり優しくしてくれるなどスパイとして役立つからだと考えています。

もし本当にそうだとしたらメカトピアは計算高いですね。リルルを送り込む前の時点で地球人の好みを調査していたんでしょう。

のび太は、リルル、ジャイ子、しずか、雪の精などから惚れられている。モテるんかな。

何気に脇役ミクロスも文句をつけるという形で活躍しています。

ミクロスはお世辞もうまくて面白いです。やはりミクロスが出しゃばってこそ「鉄人兵団」という映画は魅力的に成立するでしょう。

リメイク版のスタッフがミクロスというキャラを大幅に削除したのはセンスが悪いです。

海底鬼岩城のバギー、ミクロス、タイムマシンなど旧ドラ映画のロボット役は三ツ矢雄二さんが担っています。

それからロボットではありませんが宇宙小戦争のロコロコも。

三ツ矢雄二さんの声はギャグ風味が出ていていい感じのアクセントになっている。
ミクロスはロボットであり性別がないはずなのに、しずかからは男として見られているのがちょっと面白いw
アムとイムの関係、そしてドラミちゃんにもいえるけど、ロボットにおける性別って何なんだろうね。
ドラえもんの場合は猫型ロボットだけにオス猫の性質がプログラムされているのかも。

鏡面世界の果てしない魅力

さて、鏡面世界は実世界とはすべてが反転した形で配置されている無生物の世界です。それはだれにとっても夢が広がる世界。

鏡面世界のスーパーでのび太は安物っぽいインスタントラーメンを選んでいたが、スネ夫は高い肉を選んでいた。何をしても自由な世界なんだからスネ夫みたいに高いものを選べばいいのに。
のび太は普段の生活習慣が出たんだろう。というか小学生の選び方だとのび太が普通であって、スネ夫がおかしいともいえる。

そのうえ、鏡面世界はどんなに非道の限りを尽くしても問題ない世界でもあります。

現実にこんなものが存在したらゴミ問題や資源の枯渇は一気に解決ですね。映画でもその特性が存分に活かされていました。

とくに終盤ではいざとなったら鏡面世界で地球破壊爆弾をタイマー式に使うという選択肢もありました。

しかし、これだとメカトピア本国のロボットは倒せませんから、さらなる来襲も起きるでしょう。

つまり、根本的にすべてを解決するにはミクロスとしずかによるあの方法しかなかったといえます。

ドラえもんの思考回路の出来はミクロス未満なのか。

鉄人兵団は競争本能によって生まれた

今回の敵はドラ映画にしてはかなり本格的な悪役です。侵略のためにアンドロイド型のスパイを送り込んだり、僻地に前線基地をつくったりしたからです。

鉄人兵団は鏡面世界に入る前の大気圏で地球人の生命反応や乗り物の気配に気づかなかったんだろうか。

中盤~終盤で気になったのはメカトピアの歴史です。そもそもメカトピアは、人間に幻滅した神様がつくり出したアムとイムという男女型ロボットから始まりました。

これは聖書のアダムとイブ(エヴァ)の発想ですね。雲の王国といい、創世日記といい、F先生は聖書が好きだったんでしょう。

それはさておき、やがてメカトピアには支配階級ロボットと被支配階級ロボットが現れました。地球の歴史でいう奴隷制社会です。

しかし、ロボットの間でも「平等」が重視されやがて革命が実現しました。これは地球の歴史でいうと市民革命があてはまるでしょう。

そこで今度は下級ロボットを奴隷にするのではなく人間を奴隷(労働力)にすることにしたらしいです。このあたりは競争本能が悪い意味で作用しています。

それを聞いたしずかは「まるっきり人間の歴史じゃないの。神様もガッカリなさっているでしょうね」という冷静な言葉を発しました。

しずかは小学生なのに欧米の奴隷制と市民革命を知っているのでしょうか。知っているとしたら出木杉並みですね。

アニマル惑星でも神話の神様は人間の科学者だったように、鉄人兵団でも神様=人間の科学者であるところも目を引きました。

そのうち現実世界でも天才科学者が現れてとてつもない人工知能をつくり、それは神のように崇拝されるのかもしれません。

そう、手塚治虫先生の『火の鳥未来編』で社会を統治していた人工知能のように。

鉄人兵団のボスは人間のことがわかっているのか

地球にやってきた鉄人兵団のボスみたいな奴は「神は我々ロボットを宇宙の支配者にした」と誇っていました。

神を崇拝し人間を蔑んでいますが、メカトピアの神は人間の科学者だったから矛盾しています。もしかして神が人間(科学者)だったことを知らないんでしょうか。

あるいは神はロボットだったと考えているんでしょうか。神がロボットだとしたら、そのロボットはだれがつくったと思っているんでしょうか。

ただ、そもそも論でいうと、神様は人間に絶望したからといって完全なロボット社会(=人間なき社会)をつくるべきだったのでしょうか。ロボットと人間をうまく共存させることは考えなかったのでしょうか。

しずかもいうようにロボットは人間が人間のためにつくったものなので、人間もロボットも絶滅するならまだわかりますが、人間すべてが滅びてロボットだけが繁栄する社会をつくるというのはおかしい気がします。

それは天空の城ラピュタのシータのセリフである「国が滅びたのに王だけ生きてるなんて滑稽だわ」と通じるものがあります。

主役はザンダクロスからリルルへ

まあそれは置いておくとして、最後にリルルとザンダクロスを始めとした鉄人兵団は消え去りました。海底鬼岩城のバギー風にいうとリルルは目からオイルを漏らしたのです。

しかしというか当然というべきか、のび太たちが悲しんだのは人間に近しい存在に見えたリルルがいなくなったことであって、ロボットでしかないザンダクロスの消失はとくに悲しんでいないでしょう。

物語の当初はザンダクロスが中心だったものの、いつのまにか人間のような容姿と心をもったロボットが主役になったわけです。

まとめ

『のび太の鉄人兵団』は大人からの評価は高いんでしょうけど、子どもにはちょっと難しいかなと思います。

実際、私は30代ですが、幼い頃に観たときよりも評価は上がりました。映画は見たときの年齢によって変わるのが面白いところです。

本作のギャグ要素として、ミクロスの妙な行動、南極で迷ったドラえもん、のび太によるなぞなぞ、ドラえもんが英語で鉄人兵団対策を交渉しているシーン、しずかちゃんのラッコ発言などは子どもにも楽しめる要素。

最も印象に残ったセリフは「ときどき理屈に合わないことをするのが人間なのよ」です。

それはしずかがリルルを直しているときにしずかが発したセリフであり、ドラえもんの性質とも重なる名セリフです。

そもそもドラえもんは人間がつくったロボットである以上は理屈に沿って動くはずですが、人間味がとても豊かです。

たとえば、ロボットなのにネズミをひどく嫌い、どら焼きを好む姿は人間味があふれているとしかいえません。

ザンダクロスが愛さなれなかった理由はこういう矛盾がなく、コントローラーで操られるか、改造した頭脳で動いているだけだったからでしょう。

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