アニメ『未来少年コナン』は、多くの生き物を死に追いやった大戦が起きた後、生き残った人間たちが守旧派と闘いながら新たな生活を切り開いていくというストーリーです。
監督やデザイン担当はあの宮崎駿先生。
コナンは70年代の名作アニメですが、今でも十分おもしろいです。
『天空の城ラピュタ』や『風の谷のナウシカ』が好きなら『未来少年コナン』も好きになれると思います。

『未来少年コナン』の感想と考察
本作品でまず気になるのが、本作品の監督は若いころの宮崎駿氏だけにのちのナウシカやラピュタに受け継がれている要素がいくつも見られること。
たとえば、本作の舞台である世界大戦後の浄化しつつある世界(滅びた旧文明)はナウシカを思わせます。
またラナという少女の強さはナウシカやシータと重なりますし、異変を知らせる虫の大群はナウシカの展開を想起させます。
蛾のような飛行艇ファルコ、脆い巨大毒蛾ギガント、2台のフライングマシーンはナウシカに出てきたさまざまな飛行機と似ています。

現実でもコナンの世界が実現しつつある
あと先進的な科学が垣間見られるところにも注目です。
それはたとえば、
- 合成パン
- ロボノイド
- 地下の巨大防空壕
- 宇宙で発電したエネルギーを地上に取り込む技術(=太陽エネルギー)
- 三角塔のバーチャル公園
などです。
このうち合成パンは存在しませんが、ロボノイド(パワードスーツ)や巨大防空壕は現実世界にもあります。
また太陽エネルギーのように宇宙空間で発電し、それを地上に送る技術は研究段階では存在します。
バーチャル公園は360度映像の応用という形でつくりだしたモノなら既に存在します。
おそらく現実世界のパワードスーツやバーチャル公園は今後も進化すると思います。
作中の社会情勢
さて、筆者は社会科が得意なので、作中で守旧派(インダストリア)が旧ソ連のような統制経済を営んでいるところに興味があります。
具体的には
- 日用品の配給制
- 等級別市民制度
- 密告・得点制度
- 部局制(行政局、貿易局、委員会)
- 恐怖政治
などにインダストリアの統制経済ぶりが表れています。
恐怖政治というのはレプカに反抗すると監獄行きになったり、最悪の場合は砂漠で日干しの刑に処せられることです。
それとは対照的に主人公側(のこされ島とハイハーバー)は大戦の反動と反省から第一次産業と物々交換を中心としたのどかな生活を営んでいます。
とくにハイハーバーの人々は不労所得は好ましくなく、すべての島民は何らかの第一次産業か工業分野に就かなければならないと考えているようです。
村長や医師といった第三次産業の従事者でさえも繁忙期には麦刈りを手伝っている節があります。

主人公コナンの見どころ
次に各キャラについて見ていきましょう。まずは昔ののび太くんと同じ声であるコナンからです。
コナンはものすごい身体能力を誇ります。具体的には以下のとおり。
- サメ並みの泳力
- 足指の驚異的な握力
- 飛行艇から海に落ちても助かる耐久力
- 正確無比な銛のコントロール力
- 両手両足が不自由なままでも泳げる能力
- 飲食物が乏しい砂漠でラナを背負ったまま何kmも歩き続ける持久力
- 指先だけでオーロのナイフをけちょんけちょんにした筋力
- 体が固定されているのにコンクリートの壁を壊せる筋力
- 暗い地下の海で気絶したジムシィとダイスをつかんだまま泳ぎ切る視力と肺活量
- レプカが運転するフライングマシンに部品を投げつけて壊した遠投力
- 炎上するフライングマシーンからラナを抱えたまま三角塔に飛び移った跳躍力
どれをとっても超一流です。十種競技の選手も真っ青。少年の時点でこれだけの身体能力を誇るのですから大人になったら楽しみですね。
それらから精神力も超一流です。それはたとえば、
- おじいを失ってから一人で大海原に旅立つ勇気
- ジムシィの代わりに尻叩きを受ける覚悟
- 武器を使って脅してきたレプカにひるまない勇気
- 三角塔から飛び降りる度胸
- ダイスに殴られた後、ダイスは海の彼方に逃げていくのに、それでもインダストリアに残ってラナを助けようとする想い
- 一人で漂流していても鳥に餌を分け与える優しさ
などに表れています。
しかし、コナンは性格は明るいながらも意外と黙り込む場面もあります。たとえば、
- インダストリアで窓越しにラナと再会したとき
- ラナと2人で砂漠に漂着した際にすぐに声をかけずに過去を回想し一人芝居を見せたとき
- ハイハーバーでラナにビンタされたとき
- ハイハーバーで大津波の襲来が本当だということをモンスリーに訴えたとき
- ハイハーバーからインダストリアへラナを連れていくか迷ったとき
- レプカと手が離れてギガントの最期を見送ったとき
などです。
コナンは明るさだけでなく思慮深さも持ち合わせているといえます。
無言の展開で魅了するというのは上質なドラマや映画のようです。

そんなコナンの弱点といえば社会性が身についていなかったことです。
社会性のなさはハイハーバーでオーロの豚を勝手に食べてしまったこと、そしてハイハーバーで分業体制を知らなかったことによく表れています。
コナンは小さな島におじぃと2人で暮らしてきたわけですから、それは仕方がないことです。
さらにコナンはちょっとしたギャグセンスも見せます。それはたとえば、
- 初めてジムシィと会ったときに死んだふり
- インダストリアから脱獄するときも死んだふり
- 漂着した砂漠ではラナの前で初対面時を再現
- 三角塔では「落ちる!うわぁーーー、ぁ」と落ちたふりをした
などに表れています。
本来、死んだふりというのは面白がるところではありませんが、コナンが見せた死んだふりはおかしいものでした。
コナンの死んだふりに騙された監獄の監視員は、それを教訓にしてダイスの死んだふりを警戒してレプカに見破らせた展開は面白かったです。
ラナの見どころ
次にヒロインであるラナです。
まずはテレパシー能力が注目されます。テレパシーによってラオ博士の存在・存命をつきとめたこともありましたし、離れたコナンと話を交わしたこともありました。
しかし、ラナの叔母(ラオの娘)であるメイザルはテレパシー能力を使えない模様。
もし、メイザルがテレパシーを使えたらメイザルが誘拐されていたはずだからです。
ラナは一見すると、か弱い少女に見えますが、船上で自分を縛っている綱を食いちぎってコナンを助けに行ったり、レプカに立ち向かったりと強い勇気をもっています。ラナはコナンに助けられるばかりではないのです。
それに第1話の前でラナは、バラクーダ号からのこされ島までの大海を泳いできたみたいです。コナン並みのとんでもない泳力だといえます。
またラナは精神年齢も高いといえます。ダイスよりも高いと思えるくらいです。たとえば、コナンたちがギガントから帰ってこないとき、インダストリアを脱出する際の最終判断はラナが担いました。
そんなラナに作中で最も反発したのがオーロです。
オーロはラナのことを「そのお嬢様ヅラが気に食わねぇ。博士の孫だからって、みんなちやほやしやがってよ」といっていました。
孤児だったオーロにとって、みんなからちやほやされるラナは嫉妬の対象でしかなかったのでしょう。
同じ孤児だったチートは素直に生きていたというのに。
コナンの仲間ジムシィの見どころ
次はジムシィについて。ジムシィはカエルとブタを好む三枚目キャラの野生児です。
序盤ではタバタバを奪って吸ったり、ダイスの食事を食い逃げしたり、コナンに迷惑をかけたりするなど不良ぶりが目立つ少年でした。
しかし、コナンやチートに感化されてからは頼れる「重要人物」になりました。
自身の長い髪の毛を釣り糸にしたり、豚に「ウマソウ」と名付けたり、ダイスに面白く反抗しますが意外と鋭い面もあります。
それは初対面でオーロの本質をすぐに見抜いたことです。
具体的にはハイハーバーで馬に乗ったオーロから見下ろされた際に、ジムシィの顔は一瞬で警戒心の高い表情に変化しました。これも野生児のなせる業でしょうか。
序盤はコナンと同じくらいの運動能力を見せるのですが、地下街からの脱出シーンを見ると泳力や肺活量にかけてはコナンの方が上です。
しかし、ハイハーバーで黒豚を岩山地帯から森林に一人で運んで丸焼きにする筋力は人間離れしています。
新大陸としてののこされ島での活躍も大いに期待できるでしょう。
モンスリー女史の見どころ
次はモンスリー女史について。最終回ではあのダイスと結婚した人です。
まずモンスリーの見た目や性格はナウシカのクシャナに近いと見えます。
容姿はダイスにはもったいないほど整っており、性格は大戦の反動のせいでかなり勝気です。
それに若くして出世していたり、メカに詳しかったりと仕事がデキる女性です。
作中の年齢設定は28歳ですが、ジムシィから「おばさん」と呼ばれて不機嫌になっていました。
あの年ごろの少年は20歳以上くらいの人を抵抗なく「おばさん・おじさん」と呼ぶとはいえ、モンスリーが動揺した姿はちょっと面白かったです。
モンスリーは作中ではラオ博士とシャン(メイザルの夫)と並ぶインテリキャラです。

それからモンスリーの重大要素といえばハイハーバーでの回想シーンです。
少女時代のモンスリーはムクという犬を飼いながら平和に暮らしていましたが、ある日突然、大戦が始まりました。
荒れ果てた大地に取り残された姿と、それを飲み込んだ大津波は忘れられません。あれはナウシカの「火の七日間」に近いインパクトがありました。
そのときの経験から「戦争を引き起こしたのはあのとき大人だったあんたたちじゃないの!」とおじぃに強く反発しました。
大戦時に子どもだったモンスリーはその後インダストリアに行って生き残るのに大変な苦労をしたようです。
あと、モンスリーは「バカね」と「インダストリアの弾もあたることがあるのね」という名セリフ(迷セリフ?)を残したことでも有名です。
とくに「バカね」の発声は最初はきつかったのに、徐々に柔和になっていきます。これはダイスに対する感情の変化によるものでしょう。

ダイス船長の見どころ
次はダイスです。ダイスの口と鼻の間には鼻毛かヒゲかよくわからない毛がまっすぐ生えています。
この男はよくも悪くも人間味にあふれています。
その名前のとおり、味方になったと思ったら裏切り、また味方になったと思ったら裏切ったりとサイコロのように態度が変わる面白い男です。
とくにインダストリアから2度目の脱出を図った際に「オレを巻き込むな」といってコナンを殴ったところは酷いものでした。
女性関係についても前半は少女のラナにこびて、後半は少し年下のモンスリーに惚れています。
でも、そういう不完全さというか人間臭さがダイスの魅力なのでしょう。
またダイスは3枚目キャラに見えながらも意外とプライドが高いです。これはたとえば、
- インダストリアで査問を受けた際には「人さらい」という言葉に強く反発
- ハイハーバーでオーロに自分をキャプテンと呼ばせた
- 大津波の後で船長として船から最後に降りることにこだわっていた
などに表れています。
そして、ダイスはコナンとともに冒険を重ねたことで次第に性格はよくなり、頼れる海の男となりました。
ダイスは、ラオ博士の水葬式や自分の結婚式・進水式、そして新大陸に錨を下すときは二枚目風に全体の指揮をとるなど決めるところは決める男です。
サルベージ船の引き揚げにしてもダイスがいなかったら成功しなかったでしょう。
全体的に人格面ではちょっと問題があるものの、海に関する知識と技術は確かなようです。
最終回ではあのモンスリー女史とゴールインしました。初期は「あの高慢ちき」とまで嫌っていたのに。
しかし、最終回でののこされ島行きの船中で行われた散髪シーンを見るとダイスはずっと尻に敷かれそうな感じがします。
インダストリア行政局局長レプカの見どころ
次はレプカについて。頭の形が四角くで性格はムスカタイプの男です。
おそらくレプカは大戦時代の生き残りでしょう。
「インダストリアの人間はコアブロック(巨大地下壕)の生き残り」とラオ博士は説明しているからです。
さらにレプカの強い野心を見ると、大戦時はおとなしく地下壕にいたのではなく軍人として活動しており、そのときの野心を引き継いでいると考えられます。
レプカは基本的には冷酷非道です。
しかし、インダストリアからフライングマシーンで脱出を図ろうとした際に歯ブラシやタオルなど生活用品一式をぶちまけたシーンは、それに似合わないものでした。
また、コナンとラナが乗った小型ボートがガンボートに撃沈されたときに、レプカは小型ボートにはコナンしか乗っていないと思い込んでいたシーンも間抜けです。
ラナの赤い服はよく目立つと思いますし(暗くてわからなかったか)、レプカは船の開放部に乗っていたのに、なぜかラナは乗っていないと思い込んでいました。
さらにギガントでコナンたちと戦っていたときには致命的な判断ミスを犯しています。
レプカはもっと早くメインエンジンを切り離すか、多少の傷がつくことを覚悟してレーザー光線でファルコを焼き払っていれば助かったでしょう。
そもそも戦艦の砲台の発射角度は自身に当たらない範囲で動かせるようにすべきであって、自身を攻撃できるような設計にした時点でミスであるとも指摘できますが。

ラオ博士の見どころ
次はラオ博士です。
かつてラオ博士はインダストリアから逃げた際に負傷して髪型や顔の輪郭が変わりました。そこから変装してサルベージ船に来たという設定になっています。
しかし、顔はごまかせても声色や体格はごまかせないでしょう。もしかしたら、アンドロイド的な技術で声や体格をごまかしたのでしょうか。
ラオ博士はハイハーバーではかなり尊敬されている人物でもあります。
ガルおじさんいわく、大変動の直後、ラオ博士はフライングマシンであちこちの島に取り残されていた人々を救出してハイハーバーに連れてきたとのこと。
本人は大変動の主因になった太陽エネルギーの開発に携わっていたことを悔やんでいますが、周囲の人間はそれを責めず、むしろ尊敬しているようです。
ラオ博士は最期に水葬を希望したようですが、実の娘であるメイザルと対面しなくてよかったのかなとは思いました。
まあ水葬の判断は船長が行うものでもありますので、ダイスが判断した可能性もありますが。
ハイハーバーの鬼っ子オーロの見どころ
最後はハイハーバーの鬼っ子であるオーロです。
元々オーロは戦争孤児でチートたちと一緒に働いており、そのときは村側と山側(孤児たちの土地)は仲がよかったようです。
しかし、オーロは労働が嫌になって幹部制(幹部は現場では働かない)を敷いて楽をし始めたのです。
また、オーロが幹部制を敷いてからは山側と村側の物々交換に税をかけるようになりました。
これについて村長やシャン(ラナのおじさん)たちは効果的な策を打てませんでした。
しかし、そのピンハネルートはコナンにつぶされたのでオーロはダイスとつるんで焼き討ちを仕掛けたわけです。
そんなオーロもコナンにコテンパンに敗れてからは改心した模様。なんと最終回ではガルおじさんと仲良く花火を打ち上げていました。
またオーロにはテラという妹がいます。名セリフは「ジムシィのバカぁ」です。
テラは兄オーロにかなり懐いているようですが、最終回ではオーロと別れて暮らすことにした模様。

いくつか謎が残った
さて、未来少年コナンにはいくつか謎もあります。このあたりを少し考察します。
- おじいの仲間たちはなぜ亡くなったのか
⇒おじいの仲間たちはおじいより少し若いくらいの年代に見えました。おじいとコナンを残してなぜ揃いも揃って亡くなったのでしょうか。
原因としては伝染病や事故死、仲間割れなどが考えられますが、あの小さな島で伝染病が発生したら全滅だと思います。とくに抵抗力のない子どもは死ぬはずです。
男たちが漁に出て事故が起きて亡くなったというパターンもありそうですが、それなら女性たちは生き残っているでしょう。
このあたりは描写も言及もされていませんので謎に包まれています。
ちなみに、のこされ島に不時着した大人たちは計9人。
しかし、コナンが旅立つ間際に見える墓は12基あります。
大変動後にのこされ島で生まれた命はコナンのほかにもいたはずですが、亡くなったのでしょう。コナンにはそのときの記憶があるのか…。
- おじいに対する「あなた言葉を覚えているの」というモンスリーのセリフ
モンスリーは、おじいがプラスチップ島の高齢者のように言葉を話せなくなったと思っていましたが、むしろプラスチップ島の高齢者はなぜ言葉を話せなくなったのでしょうか。
そしてあの島で育ったジムシィはなぜ言葉を話せるのでしょうか。いろんな可能性が考えられます。