ドラえもんの『のび太の魔界大冒険』といえば、美夜子の活躍と、メデューサの怖さと、いったんエンディングに移行したと思いきや実は終わっていなかったという展開で印象的な映画です。
何気にドラミちゃんは映画初登場。
今回はこの大長編の感想と考察をまとめました。
魔界大冒険の感想と考察
物語は、のび太が夢世界で魔法を武器に活躍したところから始まります。
そのときの快感を現実でも実現させたいと考えたのび太くん。いつものようにドラ映画はのび太のわがままから始まります。
のび太は「昔の人(魔法話をつくった人)はうそつきだったのか」と悩みますが、この理論だと藤子・F・不二雄先生のような漫画家も「うそつき」になってしまいます。
のび太による被害妄想的な「うそつき」は『雲の王国』『創世日記』でも出てきますね。のび太はサンタクロースもいまだに信じているんでしょうか。
思うに「うそつき」というのは詐欺師のように他人を意図的にだます人であって、明らかにフィクションだとわかっている話をつくった人を「うそつき」と呼ぶのはひどい気がします。
出木杉の魔法解説は素晴らしい構成力
のび太は魔法をもとめて行動しているうちに、出木杉くんに意見をもとめます。
出木杉が小学生とは思えない知識と構成力で魔法と科学を解説しているところはかなり印象的です。
出木杉は、のび太に「どうして魔法だけすたれちゃったの?」と的確な質問を返させるとともに理解させているわけですから、出木杉の将来には期待できますね。
のび太はもしもボックスを使う前から魔法使いだった?
そして、もしもボックスで魔法世界を実現させるわけですが、魔法世界で魔法を使うには高度なスキルや道具を必要とするので、のび太はあてが外れた模様。
のび太はドラえもんの道具を使うかのごとく楽に魔法が使える世界を実現したかったわけですから、高度なスキルを要する世界に失望するのは当然といえば当然ですね。
魔法は非現実的ですが、魔法世界で高度な魔法を使うことに高いスキルや道具を要するのは現実的だといえます。
のび太は魔法が下手なので、知力、体力、精神力(欲望、集中力、打たれ強さ)といったのび太に欠けている能力値が魔法力の強弱を決めるのかもしません。あやとりや射的の才能は関係ないのでしょう。
ここで気になるのは、だれがもしもボックスを使っても、あの悪魔世界になってしまうのかということ。たぶん、それはないと思います。
つまり、のび太の能力値でもしもボックスを使ったからこそ、あんな世界になったのではないかということ。
スモールライトの効力のようにいつものドラえもんの道具なら使い手の能力に関係なく画一的に効果が表れるはずですが、もしもボックスは違っていたかもしれないのです。
実際、ドラミちゃんが助けにきたシーンでは、ドラえもんが「のび太くんがもしもボックスを使ったら悪魔まで出てきた」と話しています。
また、のび太は寝転びながら「ぼくが悪いんだ、もしもボックスでこんな変な世界を出したばっかりに」とも言っていました。
以上は使う人の能力が反映される設定を裏付けているとしか思えません(本作限定の設定?)。
メジューサ(メデューサ)のトラウマ:精神力が重要
もしもボックスは使う人の能力が反映される設定だったとすると、のび太はもしもボックスを使う前の時点ですでに魔法使いだったために悪魔まで出現する魔法世界になったのかもしれません。
つまり、以下のような流れです。あくまで管理人の考察ですが、つじつまは合っているでしょう。
- 最初の夢オチ(ジャイアンと母ちゃんが出てきた夢)では魔法が出てきたように、のび太は「魔法を使いたい」という意識がとても強かった
- 出木杉の「魔法ってのは悪魔の力を借りる神に背く学問」というセリフに感化されて、のび太は「悪魔の力を借りてでも魔法世界を実現させたい」と意識下で考えるようになった
- 魔法世界のメジューサは、タイムマシンを使って過去の現実世界に逃げたドラえもんとのび太を追いかけて石化させた
- 現実世界ののび太(もしもボックスを使う前ののび太)はその石像に触れたことでメジューサの魔法にかかってしまった(のび太は悪魔の力を借りてまでも魔法世界を実現したがっていたから悪魔であるメジューサと波長が一致した)
- のび太はメジューサの魔法にかかった状態で出木杉の悪魔論を思い浮かべつつもしもボックスを使ったため悪魔まで出てきた
あるいはドラえもんが石像に触れた際にメジューサの魔法がかかってドラえもんの道具全体にまで魔法が及んだからもしもボックスもおかしくなったとか。
あの石像はメジューサがのび太とドラえもんを石化させたものですので、間接的にはメジューサによる呪い・魔法だといえます。
「石像の呪い」というのはフィクションとしてありそうなパターンではあります。
のび太はメジューサの呪い・魔法がかかったまま「もしもボックス」を使ったためにあんな悪魔世界ができあがったわけです。
本作の矛盾
タイムマシンを使えば、もしもボックスを使う前の世界に行けるのがおかしいです。
それは時間軸としては前だとしても、通常の世界ともしもボックスがつくった世界はパラレルワールド(別次元)のはず。
これに関してドラえもんとのび太がもしもボックスの作動前にタイムスリップしたときに、のび太はホーキングが使えました。
つまり、通常世界なのにタイムスリップしたのび太は魔法が使えたのです。ということは、あの世界の魔法はかなり強力だといえます。
のび太は美夜子さんに惚れた?
それはさておき、魔法世界のオリジナルキャラとして出会ったのが美夜子さん。年齢は中学生くらいでしょうか。のび太は一瞬で惚れたようですが、アニメでは同時にしずかちゃんは嫉妬していたのも印象的。
満月博士はキャラが濃いように見えましたが、早い段階で連れ去られたために印象が薄かったですね。
美夜子さんに会い、ちょっとした魔法が使えるようになって満足したのび太は元の世界に戻そうとします。
しかし、もしもボックスは壊れたことが判明します。この時点でタイムふろしきを使って元に戻せば一件落着だったわけですが、そういう発想はもちろん出ませんね。出木杉くんなら出せるんでしょうけど。
後半の感想:主役はのび太?
そして物語後半からは魔界に潜入しますが、大魔王のところにたどり着くまでは内容が薄い感じがします。ここの部分が魔界大冒険の惜しいところです。
しかし、タイムマシンを使って大魔王から逃げる中でみんなのトラウマとして名高いメデューサが襲ってくると、一気に盛り上がります。
石像の伏線が回収されるとともにドラミちゃんがやってきて、物語の舞台は宇宙空間に移るからです。
この映画ではみんなが石ころ帽子をかぶったことが2回ありました(魔界の森と城からの脱出)。いずれも視点の中心はドラえもんではなく、のび太でした。
こういう描写を見ると、この物語の主人公はのび太なんだなぁと思ったりします。
本作のツッコミどころ
- 魔法を使おうとする際に「サンタルチア」と叫んだのび太くんサンタルチアってイタリアの地域名であり歌曲名なのですが、のび太はなぜ「サンタルチア」と叫んだのか
- チンカラホイという呪文『ちんから峠』という童謡が元ネタで、最後の最後でスネ夫がそれを少し歌っていた
- ドラえもんがタケコプターをつけた位置が頭ではなくお尻頭には星帽子
- テレビの中にパーマンとブービーが少しだけ出てきた今の子どもたちは『パーマン』なんて知らないんでしょうね
- テレビCMや使い魔の声が千葉繫さん声がかっこよすぎる
- 美夜子さんがドラえもんの道具に対して「すごい魔法ね」と言ったら、ドラえもんは「魔法じゃなくて科学」と返したドラえもんの道具は原理としては魔法にしか見えない
- デモン座のアルファ星(赤く脈打つ星)とやらが心臓の形そのもの悪魔ならもっとずる賢い隠し方をしてよ
- ホーキングや魔法のじゅうたんで飛んでいる人たちがたくさんいるのに、もしもボックスで魔法世界を元に戻したらその人たちは無防備で墜落するのではのび太は殺人者になってしまう
「えーい、チンカラホイ」