監督が庵野秀明さんで、キャラデザインが貞本義行さんのアニメ作品といえば、そう『ふしぎの海のナディア』です。
彼らはのちの大ヒット作である『新世紀エヴァンゲリオン』も手掛けているため、同じ匂いがプンプンして面白いですよ。
まずは作品全体のよい点・面白いところと悪い点・残念なところを簡単に振り返ってみます。
ふしぎの海のナディアの感想と考察
よい点・面白いところ:
- 『新世紀エヴァンゲリオン』と似ている要素がいくつもある
- オープニングの森川美穂さんによる『ブルーウォーター』が素晴らしい
- BGMはオマージュめいたものもあるが出来は素晴らしい
- 超古代文明の設定はワクワクする
- ノアの箱舟やバベルの塔といった旧約聖書が元ネタの要素も興味深い
- グランディスタンクとノーチラス号とニューノーチラス号がかっこいい
- 全39話の中でも第35話~第39話の出来は素晴らしい
残念なところ:
- 中盤から後半にかけての島編とアフリカ編は作画がよくない
- 島編とアフリカ編は話自体も面白くないものだらけ
好き嫌いがわかれるところ:
- ナディアの性格
- フェイトさんの生々しい最期
- ガーゴイルの正体と思想
- 最終回のエンディングで意外な?カップルが判明する
ここから先は以上の箇条書きを掘り下げていきます。ネタバレもございます。
エヴァと共通した要素
まずナディアとエヴァに共通した要素とは以下のとおり。
- エレクトラとナディアが終盤で来ているボディコン風の服はエヴァでいうプラグスーツにそっくり
- ナディアのガーゴイルと、エヴァの冬月コウゾウは声が同じ(清川元夢さん)
- ネオ皇帝のコンセントとケーブルはエヴァのアンビリカルケーブルに似ている
- レッドノア内部にある巨人はエヴァンゲリオンのアダムを思わせる
- ヤシマ作戦の発射とバベルの塔発射が似ている
- 『ブルーウォーター』と『残酷な天使のテーゼ』の映像構成がなんとなく似ている
- ↑ネオアトランティスの仮面上部についている目とゼーレのロゴの目はよく似ている
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』には『ふしぎの海のナディア』のBGMがアレンジバージョンで使われている。
両作品は監督とキャラデザインが同じ人ですから似ているのは当たり前ですが、とくにナディアの終盤の雰囲気(湖の地下の旧タルテソス王国遺跡、レッドノア、ニューノーチラス号)は似ています。
それらの雰囲気は基本的にシンプルながらもどこか恐怖感が漂っています。たとえば、さきほど挙げた目のデザインはシンプルですが何か怖い(不気味な)感じがします。
オープニングの『ブルーウォーター』がかっこいい
ナディアのオープニングの歌のバックに流れる映像は「前期=第1回~第35回」「後期=第36回~第39回」とにわかれます。
後期はたった4回分のために歌の映像を変えてきましたから、制作陣の気合も違ったのでしょう。
前期の「言葉は永遠のシグナル~」のところで映るノーチラス号が、幾何学模様として光り輝く超古代文明に着陸する様子にはとくにしびれました。
超古代文明の光り輝く幾何学模様は、そのあとに拡大して映るナディアのブルーウォーターの幾何学模様と共通しているかもしれません。
後期は後期でニューノーチラス号が宇宙に向かう様子と乗組員の集合図がカッコイイですですし。
『ふしぎの海のナディア』は1990年に放映されたのですが、このあたりの演出は古さを感じさせません。
ニューノーチラス号の電子砲雷撃戦の発射音、パリ上空でのニューノーチラス号VSレッドノア・バリア、栓になってバベルの光を止めたグラタン、電気ケーブルがなくても動いたネオ皇帝はかっこいいです。
エヴァと共通したBGMとしては「バベルの光」「不撓不屈」「ニューノーチラス号」が熱い。
ちなみに私は「故郷へ」がお気に入り。この曲は結婚式にもかなり使われる曲らしいです♪
島編・アフリカ編のつまらなさ
次に島編・アフリカ編のつまらなさについて述べます。
島編・アフリカ編がつまらない原因は、ジャンとナディアの恋愛のもつれ、キングがすねる、キングVSキング(ハンソンVSサンソン)、ナディアの初恋、キングの救助、ジャンによる恋愛ソングなど横道にそれた話題が多いからです。
こういった話はストーリーの本筋には影響しませんから、見なくても大丈夫です。ただし、ナディアが一人でレッドノアの中に入る話(第31回)はストーリー上かなり重要なところ。
第31回でナディアは裸のため、家族で見ていると気まずいかもしれませんが。NHKでこれを放送した当時はクレームもあったようです。
もしリメイクするのだったら、島編・アフリカ編は大きく改良する必要があります。
ナディアの性格
それからナディアの性格もなかなか尖っています。
ナディアは極端な偏食とワガママな性格であり、周りの人間にも自分の主義主張を押し付けるかのごとく文句をズバズバをいいます。
ナディアは幼い頃からサーカス団で育ち、そこでは厳しい仕打ちを受けました。しかし、サーカス団の動物だけはナディアに優しかったため、動物を殺して食べることも嫌うようになったのだと思います。
一方、ジャンはどこまでも優しいですし、いざというときには勇気も見せる男。
エンディング(12年後の世界)ではマリーが「ジャンとナディアは5年前にやっと結婚して」といっています。
つまり、ジャンとナディアが結婚したのは宇宙から帰ってきて7年経った後。結婚するまでにいろいろ揉めたと考察できます。
揉めたのはジャンとナディアの間ではなく、ジャンの親族とナディアの間かもしれません。実際、ジャンのおばさんはナディアを嫌っている感じでしたし。
この手のアニメのヒロインとしては珍しくナディアの肌の色は褐色です。
これは、地球の人類はアフリカが起源だということに合わせたものだと思います。
フェイトさんの最期
次にフェイトさんは実に悲しい最期でした。
一度は冷静に死を受け入れたものの、いざ目前に死が迫ると「オレにはまだやりたいこと残っているんだ…」と生々しい本音を吐き出したからです。
こういう人間の生々しい部分を幼い頃に見せつけられると、いつまでも忘れないもの。
ガーゴイルの正体と極右思想
次にガーゴイルについて。
ガーゴイルが特徴的なのは自らを「善・正義」と見なして活動していること。
その根拠は「人間(地球人)は古代アトランティス人がしもべとしてつくった未熟な存在なのだから、アトランティスの血をひいた者(造物主)が人間を管理すべきだ」というもの。
ガーゴイルは本当は人間(地球人)なのにどういうわけか自分をアトランティス人と思い込んでいるうえに、選民意識が妙に高いのです。
最期は幻・塩となって素顔を晒すとともにこの世から消えました。
意外にも?素顔は普通のおじさんでしたね。マスク姿のアニメキャラは美形というパターンが多いような気がしますが。
最終回のエンディングで判明したカップル
さて、最終回のエンディングではサンソンとマリーが結婚したことが明らかになりました。
マリーは4歳で、サンソンは27歳、そしてエンディングは宇宙から帰ってきて12年経っていますから、16歳と39歳のカップルということになります。
結構な年の差婚ですね。
『源氏物語』の光源氏は幼い少女を自分に惚れるように育てたように、サンソンもマリーを手懐けていたシーンは作中でも垣間見えます。
しかし、グランディスとハンソンはエンディングの時点では結婚していません。サンソンは周りからどんな風に祝福されたのかな。
最終回はエレクトラがネモの子どもを身ごもっていたこともわかりました。これもカップルみたいなものでしょう。
ナディアにとってその子どもは腹違いの姉弟(姉妹?)となります。