北斗の拳といえば、1980年代の週刊少年ジャンプの大人気作品でございます。
しかしというべきか当然というべきか、北斗の拳って未だに人気なんですよね。
ということで今回は北斗の拳に人気がある理由、面白い理由を探っていきます。
なお個人的には北斗の拳はラオウ昇天(死亡)まではとても面白いのですが、それ以降の第二部はつまらないと思います。まあバットとリンが大きくなった姿は感動ものですが。
北斗の拳はなぜ人気なのか【面白さの理由】
北斗の拳が人気がある理由は以下の3つに集約されます。
- いろいろおかしいから
- 内部破壊の拳は真似したくなる
- 星と技と生き方の関係が面白い
まず「いろいろおかしいから」についていうと、おもな男キャラでまともなのはトキとシュウくらいのもの。この2人はイケメンであるうえに人格者ですが、他はおかしな人ばかり。
北斗の拳の舞台は核戦争後の荒んだ世界ですから、人間がおかしくなるだけの要素にあふれています。とくに断末魔と主要キャラの行動はおかしいです。
たとえば、自分がマンガの作者になったところを想像してみてください。
そのマンガの中で味方キャラクターが敵キャラを攻撃して倒したとき、敵キャラにはどんなセリフ(=断末魔)を入れますか。
たぶん「うわー」「ぐふっ」「ぎゃー」みたいな感じが多いでしょう。
しかし、北斗の拳の場合、「うわらば」「あべし」「ひでぶ」など断末魔のセリフがとても変わっているのです。
断末魔についてこんなインパクトのあるマンガは他に知りません。
主要キャラの奇怪な行動
それからケンシロウの行動もおかしいです。
そもそも週刊少年ジャンプの主人公はそれなりに優しいのが普通。
しかし、ケンシロウは「おいハゲヤロー」「汚ねえツラ近づけるな」「おまえのようなババアがいるか」など少年漫画の主人公とは思えないほど暴言を連発しています。
さらにケンシロウは人形とユリアを間違えたり、トキとアミバを見間違えたりしています。
他にもたとえば以下のキャラと行動はおかしいです。
- ラオウが、女性を追い回しているだけのギャングにド派手なビンタをくらわす(ラオウの前でふざけると非常に危ない)
- ジャギは弱っちいのに北斗神拳に入門できたこと(昔は強かった?)
- サウザーは信じられないほど派手なバイクに乗っている(あんなのは燃費が悪いだけw)
- アミバはマッドサイエンティスト
- ハート様の脂肪
以上のおかしさは悪いわけではなく面白い要因であり、北斗の拳に人気がある一大要素となっています。
内部破壊の拳は独特だからマネしたくなる
また北斗の拳はバトルマンガの部類に入りますが、普通、バトルマンガのキャラは相手を殴り倒したり、かめはめ波のような放出攻撃で倒すもの。つまり、身体の外部にダメージを与えるのです。
しかし、北斗の拳に登場する格闘流派の中で最強である北斗神拳は体の内部から人体を破壊することに特徴があります。
北斗神拳の使い手が相手の経絡秘孔を突くと、相手は数秒後に体の内部が破裂するかのようにして死んでしまうのです。
バトルマンガの中でこういった内部破壊を主流とする作品は少ないと思います。こういうのは子どもがマネしたくなるところ。『スラムダンク』の福田も「ほわちゃあ」とかいって田岡監督に反抗していましたし。
星と技の関係が面白い
そもそも『北斗の拳』の北斗とは、北斗神拳の北斗、北斗七星の北斗を意味します。
北斗の拳は北斗七星をはじめとして、さまざまな星とそれにまつわるキャラ・生き方(美学)が出てきます。
まず有名なのが北斗七星のすぐそばで輝く死兆星。本作では死兆星を見ると近いうちに死んでしまうとされます。
特定の星が見えると死ぬなんていうのはいかにもフィクションっぽい感じです。しかし、老眼になると特定の星が見えなくなり、老齢の人は若い人よりも死期が迫っていますから死兆星と似たような伝説は世界中にあります。
それから北斗七星の形に沿った動きをすると死角だらけになるという設定から生まれた七星点心という技のインパクトもなかなか。老齢のリュウケンが若いラオウを死の淵にまで追い込みました。
個人的に七星点心は無想転生の次に強い技だと思っています。
星と生き方の関係も興味深い
さらに南斗聖拳の6人とそれにまつわる星と生き方も魅力的。
- シン南斗孤鷲拳:殉星(愛に殉ずる)
- レイ南斗水鳥拳:義星(人のために生きる)
- ユダ南斗紅鶴拳:妖星(裏切りながら生きる)
- シュウ南斗白鷺拳:仁星(自分を犠牲にする)
- サウザー南斗鳳凰拳:将星(極星、帝王、独裁として世に君臨する)
- ユリア慈母星
星と生き方の関係はある種の運命論であり、日本人は運命論が好きだといわれています。
運命論とは「お前はそういう星の下に生まれたのだ」という感じであらかじめ人間の生き方は決まっているということ。
たとえばシンの場合、愛に殉ずるさだめのもとに生まれ、生きていくということです。
主要キャラは美学をもちながら戦う
『北斗の拳』の雑魚は己の欲望のままに戦うという感じでしょう。
しかし、主要キャラは欲望のままに戦うのではなく、あるいは単純な勧善懲悪で戦うのでもなく、確たる哲学(美学)をもち人生をかけて戦います。
そこには核戦争後の世紀末という混沌と寂しさもあります。そういう難しい状況の中で熱く戦う姿が読者(とくに男性)をひきつけるのだと思います。