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日本社会の根本的な問題は長期的関係にある【メリットもあり】

教室での長期的関係 社会・政治・法
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長期的関係は時代遅れか

2019年7月、日本の芸能事務所の双頭ともいうべきジャニーズ事務所と吉本興業の内部事情に関して大きな動きがありました。

この問題の根源は下の2つの記事をご参照ください。

上の2つの記事を読むのが面倒な人のために簡潔に説明すると、日本の芸能界は有力な芸能事務所の力が強すぎるため、そこに所属する個々の芸能人は苦しんでいるという話です。

しかし、それは芸能人にとってデメリットばかりでなく、事務所は売れない時期を支えてくれたり実力のない芸能人を売り込んでくれる(事務所のゴリ押し)という利点もあります。

人気の芸能人とてスランプの時期はありますから、そういった事務所の支えはありがたいでしょうが、事務所に力と恩があるがゆえにそう簡単に他事務所に移籍できないという面もあります。

つまり、芸能人は所属芸能事務所との関係が長期におよびやすいのです。

こういう関係をこの記事では「長期的関係」と呼ぶことにします。

ここで興味深いのは、このような長期的関係は教育、相撲、会社など日本社会のいたるところで見られることです。

今回の記事はこちらについて解説してまいります。

教育の長期的関係

教育の長期的関係といえば、小学校~高等学校のクラス編成です。

そこでは1年に1回くらいはクラス替えがあるとしても、担任教師や学年のメンツは固定的です。

生徒数が少ない地域だとクラス替えの意味があまりありませんし、中学とメンツが大して変わりません。

つまり、長い人生のうち、感受性の高い9年間について同じようなメンツと長い時間をともにするわけです。

また学童保育や部活動などに入っていると、朝から放課後まで同じようなメンツとほぼ強制的にすごすことになります。

中高の部活動は掛け持ちや途中で変更できなくはないでしょうが、基本的には最初に入った部活を続けるか辞めるかの選択肢が迫られるだけです。

このように人間関係が濃いと楽しい面もありますが、陰湿ないじめにつながる面もあります。

私の経験でも小学校~高等学校の間ではクラス編成が自分好みだったときほど楽しく、そうではなかったときほどダルかった記憶があります。

もちろん、自分の苦手なタイプともうまく行動できるようになるということも教育にとって重要なのですが、それにしても学校の長期的関係は濃密です。

ときには修学旅行や合宿を通じて宿泊する仲になるのですから、とんでもない濃さです。

そういった学校教育で生徒・児童に何か問題が発生したとします。

本人が転校して問題が解決すればよいのですが、転校は家庭事情の面でも本人の心理面でも負担になるでしょう。

大体、それらの抵抗をクリアーしたとしても転校が問題解決になるとは限りません。

閉鎖的な環境から抜け出せたと思ったら、別の閉鎖的な環境に移っただけの場合もあるでしょう。

ただ、そうはいっても現代では公立学校を選択できる余地が増えたり(越境入学の増加)、中学から私立校に入る人が増えているように昔よりは風通しがよくなった気がします。

相撲の長期的関係

次に相撲界についてです。

相撲界も日本の伝統がよくも悪くも反映された長期的関係が顕著な世界です。

中学を卒業したくらいの年ごろの男の子たちが相撲部屋に入り、兄弟子や親方から厳しく鍛えられるわけですから、入門には結構な覚悟が必要だと思います。

そんな相撲界で最大の謎ルールが、一旦どこかの部屋に入ると親方の死亡や独立といった理由以外では部屋の移籍ができないことです。要するに原則として力士は部屋を移籍できないのです。

こういう閉鎖的な環境だと、「かわいがり」と称したいじめも多くあると聞きますし、弟子が親方の暴行によって死亡するなど刑事事件に発展したこともあります。

また相撲界は人間関係が濃密なので部屋の垣根を超えたところでの星のやり取り、すなわち八百長が行われたりもします。

実際、7勝7敗で千秋楽を迎えた力士の勝率は異常なまでに高かった時代もありました。

ここで勝ち越すのと負け越すのとでは天と地ほども違いますから7勝7敗のときには星のやり取りが行われたのです。

もともと、相撲は神事であってスポーツではありませんでしたから、そういう非競争的なやり取りも黙認されていたのかもしれません。

しかし、現代ではよくも悪くも「空気」を読まない外国人力士やマスコミが増えたために、かつてよりも八百長は大幅に減ったと見られます。

保守派の政治家は相撲みたいな伝統文化を擁護しやすいけど、大御所の保守だった石原慎太郎氏は相撲界の八百長ぶりを強く批判していた。

会社の長期的関係

最後に会社の長期的関係です。

日本社会は新卒主義と終身雇用の色彩が強いですから、新卒時にどこの会社に入るかがとても重要です。

会社に入ると先輩から濃密な指導がなされますし、就業時間の外でも飲み会や社員旅行といった濃い人間関係があります。

いわゆる自爆営業(営業ノルマ達成のために自社商品を買うこと)や自社割が行われている会社も数多くあるように、従業員に自社商品を長きにわたって使うことを押し付けやすいです。

日本企業の中には数百年の伝統がある会社もあるのですが、そこまで長く続いてきたのはとにかく「組織の存続」に力を入れてきたからだと思います。

天皇制も少なくとも1000年は続いていますが、ここまで王制が続くのは世界的にかなり特異です(正確な起源は不明)。

自爆営業や自社割も自社の存続という観点から見ると合理的ともいえます。

自爆営業を強いるようなブラック企業は従業員から嫌われているはずですが、従業員がそう簡単に他に転職できないとすると、従業員は仕方なく企業に奉仕してしまうのです。

また、日本企業では結婚や子育てを契機に会社を長期にわたって休んだ人に厳しい傾向があります。

すなわち、日本の会社で出世しやすい人間は一つの会社の長期的関係を途中で途絶えさせることなく勤務し続け、なおかつ社内政治に勝った人なのです。

ただし、こうした傾向もグローバル化とともに消えつつあります。

会社は終身雇用や年功序列型賃金をやめて手厚く社員を保護しない代わりに、副業や転職を積極的に認めるようになってきたのです。

まとめ

ここまで、芸能、学校、相撲界、会社の長期的関係を見てきました。

しかし、ほとんどの人(とくに若い人)はお気づきのように、インターネットや外国人の存在、そしてグローバル化が日本の長期的関係を壊しつつあります。

これをよいと見るか悪いと見るかは人それぞれですが、筆者はよい面の方が多いと考えています。

その方が日本人のクリエイティブさが発揮しやすいからです。

たとえば、日本人がつくったYouTube動画やマンガ・アニメなどを見ると、かなり多様なクリエイティブな才能をもっていることがわかります。

とくにマンガは、冒険、バトル、魔法、SF、ミステリー、恋愛、スポーツ、会社、家庭、料理、学園など空想的な題材から現実的な題材までいろいろ揃っています。

ここまで多様なジャンルのマンガを高水準で描ける国民は他にいるのでしょうか。

たとえばインドは人口が多いのに動画や映画はやたらダンスに偏っていますが、日本人は娯楽の才能が多様なのです。

日本人の娯楽の才能が本質的に多様ならば、特定の会社にのみ奉仕して個人の才能を封じ込めるのではなく、フリーランスとして働いたり転職したりして才能を解放した方がよいはずです。

YouTubeやマンガ・アニメはおもに作者個人の力によって制作されるため、特定の組織との関係にばかりこだわらない方がよいのです。

こういう個人のクリエイティブさが次の時代を変えていくような気がしてなりません。

マンガは編集者が携わる余地もあるけど、基本的には作者の意向が反映されやすい。
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