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お金を刷って配るのは何が問題なのか【ヘリコプターマネーの本質】

2020年9月14日

ヘリコプターマネー

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それはかなりの低確率ですが、参加は無料であり、前澤社長は信頼できるため私は参加しています。

ここで誰もが考えるのが、前澤社長のように個人資産を私的に配るのではなく「政府や日本銀行がお金(=税金ではなく刷っただけの紙幣)を刷りまくって配ったら、みんな喜ぶし、景気がよくなるんじゃない?」ということでしょう。

対価なしでお金をバラまく政策は経済学的にはヘリコプターマネーと呼ばれます。

具体的には政府や中央銀行が対価なしで国債を買い入れる手法が有名。

日本の1万円札1枚の発行コストは約20円ですから、効果は劇的にありそうです。

しかし、経済学的にも歴史的にも政府がお金を刷りまくって配るのは悪手というイメージが強いです。

どういうことかわかりやすく解説していきます。

政府がお金を刷りまくって配ることの問題【ヘリコプターマネー】

この類の政策はかなり極端な状態を想定してみれば本質がわかります。

すなわち、日本政府が国民1人につき1ヶ月に200万円を配った状態を想定してみてください。税金を原資に配るとかではなく単に紙幣を発行・配布するのです。

これによって国民のだれもが最低年収は2400万円となります。

こんなにお金がもらえたら当然「車を買い替えたい」「豪邸を建てたい」といった思いに駆られますよね。こういう状態は経済学的には「需要が上がった」といいます。

で、需要が上がると商品の価格も上がります。たとえば、自動車メーカー・販売店が自動車を売るときは需要と供給のバランスを考えて自動車の価格を決めます。

今回の想定においてすべての日本人は年収2400万円以上もありますし、自動車を買いたい意欲は大きく上がっていますから、自動車会社が自動車の価格を大きく上げるのは当然です。

もちろん、自動車だけでなく他の商品の価格も大きく上がります。

このように商品の価格が総じて持続的に上がる現象をインフレーション(略してインフレ)といいます。

好ましいインフレと好ましくないインフレ

第1次世界大戦後のドイツや21世紀のジンバブエでは紙幣を発行しすぎて激しいインフレが起きたために国の経済は大混乱しました。

インフレの中でも激しいインフレをハイパーインフレといいます。

ドイツのインフレは第1次大戦の混乱、ジンバブエのインフレは政治家の失策が重なったことが原因。

紙幣は紙切れにすぎないため、根拠なく(対価なしで)発行しまくると価値が下がってしまうのです。

たとえば、日本将棋連盟が藤井聡太二冠の封じ手をヤフオクに出したところ1500万円の値段がつきましたが、あれは希少価値が高いから。

もし、封じ手を大量に書いて供給したら価値は暴落します。

そのため、多くの国ではハイパーインフレを恐れて政府が紙幣を発行することには制限をかけているのが現状です。

大金をもらえたとしてもそれ以上にインフレになったとしたら意味がないどころか、混乱が残るだけ。

しかし、日本のかつての高度経済成長期は緩やかなインフレだったように、好景気の国では緩やかなインフレが起きる傾向があります。

「商品の需要と価格が上がる」⇒「人々の需要と価格が上がる」⇒「商品の需要と価格が上がる」…みたいな好ましいスパイラルが起きやすいからです。

実際、日本の一部の経済学者や政治家は緩やかなインフレを起こしたがっています。

しかし、かつての高度経済成長期は自然な現象として(好景気に合わせて)緩やかなインフレが続いたという感じですが、人工的に起こすとなるといろいろ懸念が生じます。

インフレを人工的に起こすとは、政府の政策によって強引にインフレ状態にもっていくこととお考えください

インフレとともに経済政策の本質を知ろう

その懸念とは以下のとおり。

  • どこをもって効果的な給付水準かわからない
  • 失敗したら元に戻すことは困難
  • 失敗したら国際的にバカにされる

さきほど私は、政府が国民1人あたり1ヶ月に200万円を配り続ける状態を想定しました。これはハッキリ言って極端に高い給付水準です。

しかし、極端と普通の境界線となる金額は一体どこにあるのでしょうか。月々何円をもって効果的な給付水準と、極端な給付水準に分かれるのでしょうか。

ほんの少し給付したくらいでは効果が少ないでしょうし、たくさん給付すると激しいインフレになります。

これに明快に答えられる経済学者は存在しないでしょう。

境目の数値は学術的には閾値(いきち)と呼ばれます。

閾値を境に数値が急激に変わるなんてことは自然科学でも社会科学でもよくあります。

「それなら一度試してみればええやん!」と考える人もいるでしょう。

しかし、経済政策の失敗はそう簡単に元に戻すことができません。経済政策の失敗が派手であるほど失敗したら後遺症に苦しみます。

実験室内での自然科学の実験は失敗してもまたやり直せばいいだけですが、国家レベルでの経済政策の派手な失敗は元の状態に戻すことがとても困難です。

インフレ(穏健なインフレとハイパーインフレ)は政府でさえもコントロールしにくいのです。

人為的にインフレを起こしたい人はインフレ率が一定レベルに高まるまで政策を持続し、一定レベルに達したらやめるなんてことをいいますが、閾値の一歩手前で都合よく踏みとどまれるかは疑問です。

化け学の実験においては○と×を2:1の比率で混ぜ合わせれば★が出来上がるというように計算がしやすいのにな。
化け学の対象は物質、経済政策の対象は人間。人間は物質とは違って自我をもっていて複雑だから計算しにくい。

さらに「政府が紙幣を配りまくって経済が大混乱した」なんていう現象が起きたら日本は国際的にバカにされます。これに合わせて国際決済通貨である円の信頼も大きく失うでしょう。

そのため国レベルの経済政策は慎重に行かざるを得ません。

昔の日本で緩やかなインフレと大型の好景気が起きたのは、西側の先進国(日米仏西ドイツ)以外の国は停滞しており日本の製造物が売れまくった、日本はモノが全体的に不足していた、などが原因です。

現代でそれと同じような好景気をつくりだすのはかなり困難だといえます。

好景気のときは緩やかなインフレである場合が多い。でも、インフレが起きたからといって好景気とは限らない。ここはかなり重要。

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