ハイコンテクスト流のコミュニケーション
人間によるコミュニケーションには大きく分けて2つのパターンがあります。それはハイコンテクストとローコンテクストです。
ハイコンテクストとは、相手と背景や価値観を共有したうえでコミュニケーションをとる方法を意味します。
コンテクストというのは「背景」や「文脈」を意味する英単語です。この度合いが強いのがハイコンテクストです。
たとえば、Xという大学生がデパートで故郷にいる両親にプレゼントを購入しようとしていたとします。
そしてXが店員に向かって「これ、父へのプレゼントなのですけど・・」と言ったとします。
ここでハイコンテクストが染みついた店員なら「ラッピングいたしましょうか」または「どちらへ配送いたしますか」と返すはずです。
ローコンテクスト流のコミュニケーション
一方、ローコンテクストが染みついた人、すなわち背景や価値観を考慮しないで、その場の言葉のみを頼りにしてコミュニケーションをとる店員ならば、Xの言葉を受けて「それは素晴らしいですね」あるいは「ご両親はきっとお喜びになられるでしょう」といった言葉を返すはずです。
両者の違いは一目瞭然です。前者を良心的に解釈すれば「相手を慮っている」「気が利く」といえますが、悪く言えば物事を思い込みで判断しているといえます。
ハイコンテクストが染みついた店員としては、親へのプレゼントにはラッピングや配送が付きモノだと思い込んでいるわけです。
一方、後者は勝手に話を進めておらず両親へのプレゼントは好ましい事だと判断しているに過ぎません。
前者には論理の飛躍が見られる一方で、後者は理屈っぽいコミュニケーションといえます。
思い込みや空気で事足りる日本
日本は言うまでもなくハイコンテクスト文化です。
少ない民族で構成され、皆の生活習慣が似通っているため、コミュニケーションは「思い込み」で事足ります。
もし日本でハイコンテクスト流のコミュニケーションがとれなければ、「空気を読め!」と疎まれるでしょう。
日本語で頻繁に見られる主語の省略もまた、たがいに主語が自明だという前提を共有しているからではないでしょうか。
言葉による説明が逐一必要
一方、欧米圏は基本的にローコンテクスト文化です。
多民族で構成され、異なった文化や背景をもつ外国人の流出入が多いため思い込みをせず、その場の言葉を論理的に解釈して、コミュニケーションをとるのです。
そのため主語の省略は特定構文でしか発生せず、自明と思われるようなことでも逐一説明する必要があります。
実際、欧米人と話すと次々と疑問を投げかけられます。
ローコンテクスト文化では互いの背景や価値観が異なることが多いので、頻繁に疑問を投げかけては言葉によって逐一説明し、互いの理解度を高める必要があるのです。