投資(とくに株式投資)はギャンブルだといわれることがあります。本当でしょうか。
確かに同じ点もありますが、明らかに違う点もあります。
ギャンブルとの違いと、株式投資の特性を知って今後の投資に役立てていきましょう。
投資とギャンブルの違いの前に同じところを確認
そもそもギャンブルとは、金品を将来の結果が不確かな動作に投じて一定のリターンを得ようとする行為と定義できます。
プレイヤーがサイコロを投げて、その出目によってお金を受け取ったりするのが基本的なパターン。

一方、株式投資はお金を株式に投じて利益を得ようとする行為だといえます。

この2つの定義を見ると、ギャンブルと株式投資はともに元本保証がなく不確かな挙動(=将来どうなるかわからない動き)にお金を投じて増やそうとする点で似ているといえます。

胴元の有無
しかし、ギャンブルには胴元がおり、彼らは自分の利益を確保します。
それゆえ、自分が勝つには他のプレイヤーを押しのけるという発想に陥りがちです。
あるギャンブルの還元率が80%だとしても、プレイヤー全員が同じ割合で損をしているわけではなく中には勝ち組もいるので、負け組の損失は胴元や勝ち組の利益にまわっているようなものです。
参考:日本で公的に認められているギャンブルの還元率
還元率 | |
---|---|
宝くじ | 約46% |
公営競技(競馬や競輪など) | 約75% |
パチンコ・パチスロ | 80%~90%程度 |
還元率の出典:総務省(宝くじ・公営競技・サッカーくじの実効還元率 資料3)
※パチンコ・パチスロの還元率については大まかな推測値。

証券会社や証券取引所は胴元ではない
この点、株式投資には証券会社がいますが、彼らは投資家の売買を仲介し、そこから得られる手数料や金利をおもな収益にするのでギャンブルの胴元とは異なります。
証券取引所にしても取引の場を提供し、それを利用する証券会社や上場企業から対価を得ている法人にすぎません。
また、投資の含み損状態は証券会社や他の投資家に資金を奪われたわけではなく、市場における売り優勢によって当初よりも価値が減った状態にすぎません。
これはオークションで100万円の商品を買って時間が経つと、その価額が変動しているようなものです。

ギャンブルはハズレか当たりだが、株価は増減
次に重要な違いは、ギャンブルは当たりかハズレ(0円)の世界ですが、投資はそうはなりにくいということ。
たとえば、宝くじ、競馬、競輪、ボートレースなどで券を買うと、のちに一枚一枚は当たりかハズレ(0円)と判定されます。
それからパチンコの一球一球も必ず当たりかハズレと判定されます。カジノの各種ゲームも当たりかハズレです。
一方、株式投資は「昨日の価額変動はマイナス2%だったが、今日はプラス3%だった」というように価額が小刻みに増減します。
要するに「ギャンブルは当たりかハズレ」「株式投資は増えるか減るか」が焦点となるのです。
株式投資においては投資先が倒産しない限り、自分がもっている株式の価値は0円にはなりません。
というか、もし投資先が倒産した場合、会社に資産が残っていれば、それは金融機関や投資家が分け合うことになります。
ただし、信用取引といって金融機関からお金や株式を借りて投資すると、0円や借金状態もありうる話です。

たとえば、日本の宝くじは1枚300円のくじを買っただけで10億円もの金額が当たる可能性があります。この当たりくじ1枚だけで見るとなんと約333万倍もの大当たりです。
しかし、株式投資は1日で最大30%くらいの増減なので短期的には一発逆転というものがありません。
長期的に見ると100万円くらいのタネ銭から億単位の資産を築いた人はいますが。
株式投資は連続的だが、ギャンブルは単発的
ギャンブルでは勝負が始まると賭け額を変えることはできません(券を買った時点で取消不可の場合あり)。
ギャンブルは一球一球、一券一券について当たりハズレが判定され、その当たりハズレは基本的には覆りません。
そのためギャンブルでは抽選結果が明らかになったら券を換金するかハズレくじを捨てるかの2択が迫られます。
つまり、抽選後の券(宝くじ、馬券、パチンコの出玉レシート)には0円か受け取り期限つきの当選金額しか価値がなく、金融商品でいうところの配当や価額の増減がないのでいつまでも持ち続けることに意味はありません。
ギャンブルは1回(1抽選、1レース、1営業日など)ごとに強制的にリセットされるような体系になっているのです。これが単発的の意味。
一方、株式投資の場合、株価が下がって含み損状態に入っても、そこで売らなければ株価が上がってプラス圏に入ることもあります。
また株式は追加で買ったり部分的に(100株ごと)に売ることができます。場合によっては同値撤退もありですし、空売りを使えば下げ相場でも利益を出すことができます。
ギャンブルとは異なって柔軟な戦略を打てることが株式投資の強みなのです。
さらに株式投資は複利があります。
複利とは、元本に利息がつくと、その次は前回の「元本+利息」に利息がつくこと。
たとえば、元本100万円を利回り10%で運用できると、1年後は110万円、2年後には121万円、3年後には133.1万円という具合で、2年後の増加額は100万円の10%ではなく110万円の10%である11万円になるのです。
つまり、キャピタルゲインや配当によって利益を元手に上乗せできれば、資産の増え方が上がるというわけです。
うまくいくかは別にして、これが投資の魅力の一つになっていることは間違いありません。

投資は開放的だが、ギャンブルは閉鎖的
ギャンブルのプレイを生業としている人は課税や世間体などとの関係でギャンブル活動は公にしたがりません。
また胴元がおり、還元率も決まっているギャンブルで勝つには他のプレイヤーを押しのける必要に迫られやすいため、利益情報を秘密にしておくことは合理的です。
それは攻略法が見つかった際に胴元に対策を早々と取られないようにするためでもあります。
株式投資でもよい情報が早い段階で得られたら素早く買うということがありますが、そういった情報はいずれ公表・報道されます。
というか、そもそも上場企業は投資家へ重要情報を公開することが義務付けられています。
それに投資家は自分が買った銘柄と同じ銘柄を他の投資家にも買ってもらいたい(=株価を上げてもらいたい)以上、その情報の普及を願うものです。
悪い情報にしても、安く買いたがっている人は悪い情報を普及させようとします(=ネガキャン)。
インターネットの登場とSNSの拡大以降はその傾向がより顕著になっていますし、一部の個人投資家や実業家は意見を積極的に発信しています。
つまり、上場株式への投資はギャンブルよりもオープン(開放的)なのです。

ギャンブルは楽しむためにやる人もいるが、株式投資はほぼ金儲け
ギャンブルは1回あたり100円~300円くらいでも楽しめます。その当たりハズレは、機械(スロットやパチンコ)やレーサーが演出します。
それはギャンブラーにとってコントロールできませんが、当たりハズレの過程は見ているだけでも面白かったりします。
そのため損得勘定は抜きにして運試しで楽しんでみようという人がたくさんいます。

しかし、株式投資は金儲けのためにやるものであり、元手は最低でも10万円以上は必要です(数千円でも一応可能)。
もし、保有している100万円の株式の価額が30%減ったら30万円の損失になりますから、投資をやるなら本気でやるのが普通です。

ギャンブルは社会と独立的
次に社会との関連について。
パチンコや宝くじといった機械系ギャンブルは、政府が還元率を決めることはあっても抽選は社会情勢に関係なくいつも機械的に行うだけです。
競馬やボートレースの結果も社会情勢とは直接的な関係はありません。
一方、株価が社会情勢の影響を受けているのはだれの目にも明らか。
個別銘柄の株価はその企業の業績だけでなく、有力な国会議員や投資家の発言、政府による政策、外交、社会の流行病なんかも株価に影響します。
株式投資は社会性が豊富
それから株式投資は大企業の暴走を止めることもあります。
たとえば以前、欧米のA社が途上国の工場で子どもを違法労働させていたことがありました。
これは世間から激しく非難されたため、A社の商品が売れなくなると株主はA社に訴えました。
そこでA社は違法労働をやめるとともに途上国の労働環境をよくするように働きかけたのです。
株主が営利を求めているために企業の行動倫理が歪められ、それが社会に悪影響を及ぼしているという指摘もありますが、牽制している面もあるのです。
さらに株式会社の最高議決機関である株主総会では個人株主にも議決権や提案権が認められています。
個人投資家は大株主ほどではないにしても経営に少々の影響を及ぼすことができるのです。
このように投資家が企業経営に参加する感覚、そして社会の改善に携わっているという感覚はギャンブルでは味わいにくいものです。

株式は企業経営に価値の裏付けがあるため、経営が安定している企業の株式の価値は安定しています。
さらに有力な法定通貨(ドルや円)の価値は国家の裏付けがあります。不動産や金(ゴールド)も実体があるため価値は安定しています。
一方、仮想通貨は価値の裏付けが弱いです。したがって、予想がまったくつかないほど仮想通貨の価格は乱高下したりします。その意味では投資の中で仮想通貨は不確実性が強いといえます。
世間体との関連
近年、日本の一部の証券会社は各地の公立学校に出張して金融リテラシーや投資の基礎を教えています。
こうした普及活動には利益誘導的・時期尚早という批判もありますが、一部の学校から出入りが認められていることは確かです。
しかし、ギャンブル依存症対策の授業は存在しても、ギャンブルの胴元やプレイヤーが学校に出張してギャンブルの基礎を教えるというのは聞いたことがありません。


東証マザーズで信用買いの割合が多いのは値動きがとても激しいことで有名なバイオベンチャー。
これは日本人のギャンブル好きの現れともいえます。