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映画ドラえもん『のび太と鉄人兵団』を徹底的に考察してみた

どこでもドアの向こうはロマンスカーの展望車 文化
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リルルは鉄人兵団から天使になった

大長編ドラえもん『のび太と鉄人兵団』はドラ映画屈指のゲストキャラであるリルルが大活躍する作品です。ドラえもんの鏡面世界も大活躍します。

鉄人兵団たちが地球を狙った動機は90年代の名作アニメである『熱血最強ゴウザウラー』に似ている(本作が先)。要するに、人間に幻滅した神様がロボット社会をつくろうとしたってこと。

物語は、スネ夫がもっているロボットに対抗してのび太が巨大ロボットを欲しがったところから始まります。毎度おなじみ、のび太のワガママですね。

おそらくザンダクロスやミクロスのデザインは当時人気だったガンダムやマクロスに影響を受けてのことでしょう。

ドラえもんの原作では「Drストップ アバレちゃん」「島山あらら」という言葉が出てくるように、藤子先生はたまにパロディみたいなのを入れてきます。

ちなみにザンダクロスは原作では土木工事用という設定。あのロボットは外観も性能も戦闘用という感じがしますが…。

物語のカギはやはり鏡面世界とリルルでしょう。何気に脇役ミクロスも文句をつけるという形で活躍しています。

ミクロスはお世辞もうまくて面白いです。ミクロスがいてこそ「鉄人兵団」という映画は魅力的に成立するでしょう。

海底鬼岩城のバギー、ミクロス、タイムマシンなど旧ドラ映画のロボット役は三ツ矢雄二さんが担っています。それからロボットではありませんが宇宙小戦争のロコロコも。あの声とキャラはギャグ風味が出ていていい感じのアクセントになっています。

鏡面世界の魅力

さて、鏡面世界は実世界とはすべてが反転した形で配置されている無生物の世界です。

それはだれにとっても夢が広がる世界です。

のび太は鏡面世界の買い物で安物ばかりを選んでいたようだが、鏡面世界ならすべてタダなんだからスネ夫のように高い肉・魚を選ぶべきだろう。
小学生の発想ならあんなものであってスネ夫の方が特殊ともいえる。いつものクセが出たっぽい。

そのうえ、鏡面世界はどんなに非道の限りを尽くしても問題ない世界でもあります。

現実にこんなものが存在したらゴミ問題や資源の枯渇は一気に解決ですね。映画でもその特性が存分に活かされました。

終盤ではいざとなったら鏡面世界で地球破壊爆弾をタイマー式に使うという選択肢もあったが、これだとメカトピア本国のロボットは倒せない。つまり、根本的にすべてを解決するにはミクロスとしずかによるあの方法しかなかったといえる。ドラえもんの頭脳はミクロス未満なのか。

考察:鉄人兵団は地球の歴史を反映している

今回の敵はドラ映画にしてはかなり本格的な悪役です。侵略のためにアンドロイド型のスパイを送り込んだり、僻地に前線基地をつくったり、戦略を練るために宇宙空間から全世界を眺めたりしたからです。

鉄人兵団は鏡面世界に入る前の大気圏で生命反応や乗り物の気配に気づかなかったのだろうか。
人間や人工衛星だってあんな一団が宇宙から飛来したら鏡面世界に入る前に気がつきそうなものだけど。

中盤~終盤で気になったのはメカトピアの歴史です。そもそもメカトピアは、人間に幻滅した神様がつくり出したアムとイムという男女型ロボットから始まりました。

これは聖書のアダムとイブ(エヴァ)の発想ですね。雲の王国といい、創世日記といい、F先生は聖書が好きだったんでしょう。

それはさておき、やがてメカトピアには支配階級ロボットと被支配階級ロボットが現れました。地球でいう奴隷制社会です。

しかし、ロボットの間でも「平等」が重視されやがて革命が実現しました。これは地球の歴史でいうと市民革命があてはまるでしょう。

そこで今度は下級ロボットを奴隷にするのではなく人間を奴隷(労働力)にすることにしたらしいです。

それを聞いたしずかは「まるっきり人間の歴史じゃないの。神様もガッカリなさっているでしょうね」という冷静な言葉を発しました。

しずかは小学生なのに奴隷制と市民革命を知っているのでしょうか。知っているとしたら出木杉並みですね。

アニマル惑星でも神話の神様は科学者だったように、鉄人兵団でも神様=科学者であるところも目を引きました。

そのうち現実世界でも天才科学者が現れてとてつもない人工知能をつくり、それは神のように崇拝されるのかもしれません。そう、手塚治虫先生の『火の鳥未来編』で社会を統治していた人工知能のように。

地球にやってきた鉄人兵団のボスみたいな奴は「神は我々ロボットを宇宙の支配者にした」と誇っていた。神を崇拝し人間を蔑んでいるが、神は人間の科学者だったから矛盾している。もしかして神が人間(科学者)だったことを知らないのか。あるいは神はロボットだったと考えているのか。神がロボットだとしたら、そのロボットはだれがつくったと思っているのか。
あの敵ロボットたちは地球人を生かしたままどうやって持ち帰る気だったんだろう?彼らは宇宙船ではなく集団ワープで飛来したからそのまま持ち運ぶんだろうけど、それは不可能では?

ただ、そもそも論でいうと、神様は人間に絶望したからといって完全なロボット社会(=人間なき社会)をつくることに意味はあったのでしょうか。ロボットと人間をうまく共存させることは考えなかったのでしょうか。

しずかもいうようにロボットは人間が人間のためにつくったものなので、人間もロボットも絶滅するならまだわかりますが、人間すべてが滅びてロボットだけが繁栄する社会をつくるというのはおかしい気がします。

天空の城ラピュタのシータのセリフである「国が滅びたのに王だけ生きてるなんて滑稽だわ」と通じるものがあるね。

まあそれは置いておくとして、最後にリルルとザンダクロスを始めとした鉄人兵団は消え去りました。海底鬼岩城のバギー風にいうとリルルは目からオイルを漏らしたのです。

しかしというか当然というべきか、のび太たちが悲しんだのは人間に近しい存在に見えたリルルがいなくなったことであって、ロボットでしかないザンダクロスの消失はとくに悲しんでいないでしょう。

物語の当初はザンダクロスが中心だったものの、いつのまにか人間のような容姿と心をもったロボットが主役になったわけです。

まとめ

『のび太の鉄人兵団』は大人からの評価は高いんでしょうけど、子どもにはちょっと難しいかなとも思います。

実際、私は30代ですが、幼い頃に観たときよりも評価は上がりました。映画は見たときの年齢によって変わるのが面白いところです。

本作のギャグ要素として、ミクロスの行動、南極で迷ったドラえもん、のび太によるなぞなぞ、ドラえもんが英語で鉄人兵団対策を交渉しているシーン、しずかちゃんのラッコ発言などは子どもにも楽しめる要素です。

最も印象に残ったセリフは「ときどき理屈に合わないことをするのが人間なのよ」です。

それはしずかがリルルを直しているときにしずかが発したセリフであり、ドラえもんの性質とも重なる名セリフです。

そもそもドラえもんは人間がつくったロボットである以上は理屈に沿って動くはずですが、人間味が豊かです。

たとえば、ロボットなのにネズミをひどく嫌い、どら焼きを好む姿は人間味があふれているとしかいえません。

ザンダクロスが愛さなれなかった理由はこういう矛盾がなく、コントローラーで操られるか、改造した頭脳で動いているだけだったからでしょう。

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