アメリカは製造業にこだわる意味があるのか
一般に一国の経済がある程度成長すると、製造業の生産拠点は海外に移す傾向があります。
経済成長とともに賃金が上がると、高度に教育された人材を必要とする研究・開発は本国(高い賃金の国)のままでよいとしても、工場の従業員の多くは高度な人材でなくても務まるため賃金の安い国に拠点を移す方が合理的だからです。
また企業は一か所にのみ生産拠点を集約した方がコストが低そうですが、あまりに集約させるとその国で政変や天災が起きたときに大ダメージを負います。
アメリカのトランプ大統領はアメリカ国内の製造業を保護したり国外流出を食い止めようとしていますが、製造業が賃金の安い国に向かうのはある程度どうしようもないことです。
しかしアメリカは、Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftという巨大IT企業が巨額の利潤を得ていますから、今さら製造業にこだわる意味があるのかとトランプ大統領に問いたいところです。
勝者総取りの利益
Googleは検索エンジン、Amazonはネット通販、FacebookはSNS、Appleはスマホ・音楽プレーヤー・アプリストア、Microsoftはソフトウェアですごい市場占有率を誇っています。
で、一般ユーザー(広告を出す人・企業以外)にとってはGoogleやFacebookは無料で利用できる幅が広いですから、それらの企業の巨額の利益についてはあまりピンと来ないと思います。
しかし、ビジネスマンならわかると思いますが、MicrosoftのOffice(Word、Excel、PowerPointなど)って機能を考えるとどう考えても割高なんですよね。


しかし、MicrosoftのOfficeは割高といっても日本は役所から企業、学校までMicrosoftのOfficeの使用率が高いです。
そのためソフト間の互換性を考えると、個人も「みんながMicrosoftのOfficeを使うなら私も使わなくなくちゃ」と考えてMicrosoftのOfficeを買ってしまいます。
つまり、Microsoftは日本のソフトウェア市場を高額の利潤で支配してしまっているわけです。
スマホ市場でもAppleのiPhoneの価格は競合メーカーよりも高く設定されがちです。
さらにApp Storeについても手数料が高いと批判されがちです。
彼らの高い市場占有率は日本以外の多くの国でも実現していますから彼らは巨額の利潤を得られているわけです。
このように特定生産者の利益水準がとても高い状態を経済学ではレント(超過利潤)といいます。
ちょっと別の言葉で言い換えると、Winner-take-all(勝者総取り)といったりします。
個人レベルのWinner-take-all
ここで重要なのはIT関連では個人レベルでもWinner-take-allが起きるということです。
たとえば、あなたが日々使っているGoogleの検索エンジンでは検索結果の1ページ目に表示された1番上付近(検索順位1位~4位あたり)をクリックするのであって、他の検索結果はそんなにクリックしないはずです。
とくにビッグワード(検索エンジンで多く検索されるワード)で上位になると大きな利益につながりますから、多くのネット企業やブロガーは血眼になって検索エンジン1位表示を目指すのです。
つまり、検索結果の上位を占めている人が利益を偏って獲得してしまうのです。





地盤を受け継いだだけの経営者は高い報酬をもらうに値するか
2世芸能人の問題は、2世芸能人は実力の割に高い報酬を手にしている可能性が強いことです。
要するに、知名度がない地点から努力して売れようとしている非世襲芸能人に比べると不公平なのです。
プロ棋士やアスリートはトーナメントやリーグで優勝したら大きな報酬を手に入れますから実力と報酬の関係がわかりやすいですが、2世芸能人の報酬は本人の実力が反映されているとは言い難いのです。
この理論でいうと、独占的な利益を得ている2世型の企業経営者の報酬もわかりにくくなります。
企業が市場で独占体制を築くまではかなりの難関ですが、ひとたび独占体制を築いてしまえば、あとはだれが経営しても大して利益額は変わらないとすれば、経営者は報酬をいくらもらうべきなのでしょうか。
独占体制を築くのに苦労した創業者は高額報酬が許されるとしても、それを受け継いだだけの経営者(2世芸能人のような人)は高額報酬をもらうに値すると思いますか。
おそらくいろいろな意見が出てくるはずです。


まとめ
企業の経営者の報酬がどこをもって適正かはケースバイケースです。
また企業というのは好景気と不景気の間で揺さぶられるため、それに応じて幹部の報酬も変わります。
しかし、ITが関連している業種では市場の勝ち組は偏る傾向があります。
技術革新や規格の変更によって今までの勝ち組IT企業が没落することもありうるとはいえ、今のところ独占的な大企業の地位は安泰のように見えます。